小5国語「言葉を使い分けよう」京女式板書の技術
今回の教材は「言葉を使い分けよう」です。この単元では、「子供自らが、相手や目的によって言葉使いについて、課題を見付け、改善点を話し合うなかで、言葉を使い分けることの大切さに気付くこと」をめざします。そのため、「原文」と「よりよい文」を並べ、視覚化することで分かりやすく比較する板書の工夫を紹介します。「相手と目的に気をつけて言葉を選び、文を書くこと」を子供たちが自分事にした学習をお届けします。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教頭・砂崎美由紀
教材名 「言葉を使い分けよう」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全3時間)
- 「言葉を使い分けよう」を読み、学習の見通しをもつ。
相手に応じた言葉の選び方について考える。 - 相手や場面に応じた言い方について考え、よりよい伝え方に文を書きかえる。
- 相手と目的に気を付けて言葉を選び、文を書く。
板書の基本
〇授業の前までに考えること
教材「言葉を使い分けよう」は、ロボットが1年生に向けて「お楽しみ交流会」のお知らせを書いた文章から始まります。その文章は、1年生が読めない、理解できない、嫌な気分になるという要素を織り込んでいます。
教材の意図は、「相手に合わせて言葉を選ぶ」「相手や場に応じた言い方をする」ということを具体的に示したところにあります。指導内容は、「誰に向けて」「どんな場面で」を意識して言葉を使うことを含めて「言葉について考える」ことです。
教材の意図と目的をこのように捉え、子供自らが、相手や目的に合った言葉使いについての課題を見付け、改善点を話し合うなかで、言葉を使い分けることの大切さに気付くような学習の展開を考えました。
〇板書計画で考えておくこと
学習活動は、教材文を見ながら、「ここが気になる」というところを見付け、よりよい言い方に変えることにします。板書には「原文」と「よりよい文」を並べて視覚化することで、分かりやすく比較することを意識しました。「原文」と「よりよい文」を並べることで、比較が分かりやすく、文章が変わることで何がよくなったのかを考えることができます。こうして可視化した言葉を板書することで、「よりよい文」の共通点を見付け、これからの生活に生かすことをめざしたいと考えました。
板書のコツ(3/3時間目前半)
板書のコツ①
学習のめあてと、ノートづくりの具体的な指示をする。
「めあて」は「相手と目的に気をつけて言葉を選び文を書く。」です。ノートに日付とめあてを書いた後、前時までに学習した「言葉を選ぶとき大切なこと」を振り返り、発表させます。すると「相手」と「場面」が発表されました。
教科書214ページを全員で確認し、板書します。さらに、今日は「目的」も大切にすることを伝えます。「相手」「場面や目的」を大切に、2つの文を考えることを知らせます。
黒板に横線を2本書き、3段に分けます。子供のノートにも同様に線を引くことを伝えます。マス目のノートであれば、「〇マス、〇マス、〇マスになるよう3段に分けましょう」というように、具体的に指示をするようにしています。子供は、具体的な指示があることで、安心してノートづくりができます。
板書のコツ②
「設定場面」を確かめる。
1段目には「相手」と板書します。2段目には「A 宿泊学習のお宿の方」と書きました。5年生は宿泊行事があり、お世話になった宿舎の方へお礼の手紙を書くことにしました。実際のエピソードや体験がある方への手紙を設定し、「相手意識」をしっかりもたせようと考えたからです。Aは「手紙を書く」という場面を設定しました。
3段目には「B 来校者」と書きました。教科書215ページの課題➁を扱います。参観日や学校へ来られた方への案内を学習し、実際に生かすことができるようにと考えました。Bは「説明する、話す」という場面を設定しました。
板書のコツ(3/3時間目中盤)
板書のコツ①
学習の進め方を理解する。
「A」の場面を学習します。はじめに、1段目に「場面 目的」と板書します。「A」の目的について考え、隣の人と話し合わせてから、発表をさせて、みんなで共有します。
ここでは「お世話になったお礼」が目的であることを確かめ、板書しました。このように、「自分で考える」「友達と一緒に考える」「共有する」という順序で今日の学習を進めることを理解させます。
次に、1段目に「内容」と書きます。手紙に書きたい内容を考え、2段目に書くことを知らせます。「目的」と同じ手順で学習に取り組むことを伝えます。同様に、「伝えたい気持ち」「表現」と学習を進めます。
板書のコツ②
相手や目的に合った言葉を考え、可視化する。
「内容」の2段目に子供の意見を板書する際に、少し間を空けて書きます。その間には、「相手や目的に合った言葉」を書くことを伝えます。今回は、先に書きたい内容をいくつか発表させ、それらを「相手や目的に合ったよりよい言葉」に書き変えるとどうなるかを考えました。
書きたい内容と、よりよい言葉が隣に板書されることで、言葉の「原文」「よりよい文」が並び、比較を可視化することができます。この際、「よりよい文」の言葉は、黄色のチョークで板書し、言葉を際立たせました。色チョークは、より大切な言葉を際立たせるために使うように日頃から意識をして板書しています。
板書のコツ(3/3時間目後半)
板書のコツ①
子供たちで学習を進め、ICTで共有する。
「B 来校者」についても、Aと同様の手順で学習を進めます。子供たちの発表が黒板にたくさん書かれた頃に、「AやBで、共通のポイントってなんでしょうか」と問いかけます。
グループやペアでの話し合いをさせた後、発表をさせます。「相手の立場になって考えています」や「書くときも話すときも、ていねいな言葉を使います」などの意見が出てきました。「ポイント」として板書します。
この後、ポイントを見ながら、グループでA・Bどちらかの文を考えます。考えた文はタブレット端末を利用し、プロジェクターや電子黒板などで共有しました。ICTでなくても、カードなどに記入したものを掲示することもできます。
板書のコツ②
学習の振り返りでは、キーワードを示す。
学習の最後に振り返りを書きます。本単元での最終時でもあるので、「相手」「目的」「選ぶ」のキーワードを使って書くことを指示しました。
高学年の振り返りでは、単元を通して学んだことを、生活の場で生かすことに結び付けたいと考えています。そのため、どんなときに今回の学びを生かそうと思うかを書くように指導しています。
子供たちが、日常生活のなかでも「ていねいに言葉をつかう」「相手を意識して言葉を選ぶ」ことが、人と人とを結び、関わりを深めるといった人間力につながるのだ、と気付くとよいと考えています。
構成/浅原孝子