小6特別活動「中学校に向けてアップデート」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小6特別活動の指導アイデアです。1月は、<学級活動⑶ア「中学校に向けてアップデート」>を紹介します。
中学校への進学について希望とともに不安を感じている子供たちもいます。そのような子供たちの不安を取り除き、中学校進学に向けて、希望や目標をもち、小学校生活をよりよくしようとすることを目指します。
執筆/熊本県公立小学校教諭・矢野隆敏
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
尚絅大学教授・平野 修
目次
年間執筆計画
4月 学級活動⑴ 6年生スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 情報通信端末の使い方を見直そう
7・8月 学級活動⑶ ウ 家庭学習をアップデートしよう
9月 学級活動⑵ イ 友達のよい相談相手になろう
10月 学級活動⑴ 係活動発表会をしよう
11月 学級活動⑴ 学級チャレンジ会をしよう
12月 学級活動⑴ 卒業文集をつくろう
1月 学級活動⑶ ア 中学校に向けてアップデート
2月 学級活動⑴ お世話になった方々へ感謝の気持ちを表そう
本題材のねらい
3学期になり、小学校の卒業というゴールが見えてくる時期になりました。中学校への進学について不安を感じている子供たちもいます。そのような子供たちの不安を取り除き、中学校進学に向けて、希望や目標をもち、その実現に向けて残りの小学校生活をよりよくしようとする態度を養うことがねらいとなります。
事前指導
① 中学校進学に向けてのアンケート調査をする
中学校進学についてのアンケート調査を行います。事前に子供たちがアンケートに回答することで、中学校進学に向けての意識を高めることができます。また、授業の導入時にアンケート結果を活用することで、「中学校生活に向けて今から頑張ることを決める」という子供の課題意識に訴えかけることができます。
<ICT端末の活用例>
アンケートは、ICT端末を活用することで、効率的に集計することができ、さらに集計した結果をグラフで提示することができます。
【アンケート質問例】
① 中学校生活は楽しみですか?
② 中学校生活で楽しみなことはありますか? それはどんなことですか?
③ 中学校生活で不安なことはありますか? それはどんなことですか?
④ 中学校生活に向けて、今がんばっていることはありますか?
※上記のアンケートの①は4段階の選択肢形式で行います。子供たちに数値として視覚的に分かりやすくすることで、課題に気付きやすくすることができます。
中学生にインタビューし、中学校生活についての情報収集を行う
卒業生に、中学校についてのインタビューを行います。インタビューの様子を動画で撮影し、本時の「さぐる」の段階で視聴することで、インタビューした中学生の姿から「なりたい自分」をつかむことができるでしょう。中学生に話してもらう内容は、小学校生活での学びが生きていると思う場面や小学校時代に頑張っておくとよいことです。また、子供たちに取ったアンケートの中に「中学校生活で不安なことはありますか? それはどのようなことですか?」という項目を設けてあります。そこで子供たちから出た内容も中学生のインタビューの動画の中にあると、中学校進学への不安が解消されるきっかけとなります。子供たちが不安に思うことの例は「勉強」「中間テストや期末テスト」「部活動」「生徒会」「人間関係」などが考えられます。
本時の展開
① 子供たちが課題を実感できるようにする(つかむ)
授業の導入では、事前のアンケート結果を提示し、中学校進学への希望に気付くことができるようにします。具体的には、事前に取ったアンケートの中から「中学校生活は楽しみですか?」の結果を提示し、アンケートの結果を考察します。その後、中学校生活に向けて現在、努力している人の例を挙げることで、中学校に向けて取り組みたいことへの意欲を高めます。
この間みなさんに中学校についてのアンケートを取りましたよね。その結果を見せます。(中学校生活は楽しみですか?のアンケート結果を提示)この結果から気が付いたことや思ったことはありますか?
中学校生活を楽しみにしている人が多いね。
ぼくも楽しみだな。
私は部活動に入るのが楽しみだな。
※アンケート結果を予想させるなど、提示の仕方を工夫するのもよいでしょう。
中学校を楽しみにしている人が多いようですね。次に不安なことについても聞いてみました(子供たちに予想を聞いてから、提示)。
ぼくは、小学校と違って中間テストや期末テストがあることがちょっと不安なんだけど、ぼくと同じように中学校生活を不安に思っている人もいるね。
私は、○○中学校は、違う小学校からくる人数が多いから、仲良くできるか心配です。
中学校生活に向けて、何か頑張っていますか? 中学校生活で勉強を頑張るために、小学校の勉強を復習しているとアンケートに書いていた人もいたよ。
そうなんだ。私も頑張ろうかな。
※本題材は、中学校生活をスムーズにスタートするためにあるのではなく、残りの小学校生活の充実のためのものです。アンケート結果は「中学校に向けて、誰がどんなことを頑張っているか」ではなく、「これからどんなことに取り組めばよいか」を考えるきっかけとなるようにします。
中学校の先輩の話を聞き、「なりたい自分」をさぐる(さぐる)
「つかむ」で中学校生活に向けての希望を実感したところで、事前に撮った中学生の動画を視聴します。中学生の経験談を知ることで、「なりたい自分」を見付けるきっかけとします。動画を視聴した後に、中学校生活に向けて残りの小学校生活を充実したものにするために必要なことや、努力する大切さに気付くようにします。また、小学校生活で学んだことは中学校生活に生かされることにも気付くと、これまでの頑張りを継続する大切さを理解することができます。
中学生の動画を見てどう思いましたか?
中学生が小学校6年生のときに、家庭学習の計画を立てて小学校の学習の復習を行ったことが今役に立っているという言葉が心に残っています。小学校時代に学んだことがつながっているということや、計画を立てて学習することが大切だと分かりました。私も計画をしっかり立てたり、今頑張っていることを続けたりしたいと思います。
野球部の先輩が小学校のときから体力づくりをしていると言っていたので、ぼくも先輩のようにまねしたいと思いました。
委員会活動で分からないときに友達や先生に進んで尋ねるようにしていたから、生徒会活動で困ったときに先輩や先生に相談することができたことや、授業で気になったことは進んで調べたから、調べ学習が好きになったということを聞いて、私もいろいろなことに進んで取り組もうと思いました。
中学生の先輩が言っていたように、中学校生活を充実させるためには、今から努力することが大切だということに気付きました。
なりたい自分になるために今から頑張ることは何かを考える(見つける)
「さぐる」の段階で見えてきた「なりたい中学生の姿」を踏まえ、卒業までの残りの小学校生活を充実したものにするために、今からどんなことを意識し、何を努力していくのかについて話し合います。小グループでの話合いを通して、考えを広げていきます。その際、互いのよさを認め合いながら励まし合ったり、友達にアドバイスしたりすることで、前向きに考え、さらに、実践意欲の高まりにつながります。
<「キャリア・パスポート」の活用例>
本実践の「見つける」の段階で、何を頑張ればよいかが分からずに困る子供がいます。そのような子供には「キャリア・パスポート」を見返すように促します。「キャリア・パスポート」にはこれまでの学びが蓄積されています。「キャリア・パスポート」を見返すことで、これまでの自分の取組や学びを振り返ったり、頑張りに気付いたりすることができます。小学校生活での頑張りや学びが中学校生活にも生きてくると気付いた子供たちは、「キャリア・パスポート」の中から中学校生活に向けて、これからの生活や学習で頑張ることを見付けることができるでしょう。
※「グループで話し合ったことを発表し合ったり掲示したりして終わり」ではなく、それらを分類・整理して小見出しを付けてまとめたり、新たに気付いた内容を出し合ったりして、学級全体で話し合うようにしましょう。
個人目標を意思決定する(決める)
「見つける」の段階で話し合ったことを生かして、一人一人が具体的な内容や自分に合った具体的な実践方法を決め、ワークシートに記入します。記入する際には、「いつ」「何を」「どのくらい」といったように、自己評価ができるように書くことがポイントとなります。
意思決定したことを何人かに発表してもらい、自分の目標の参考にしたり、必要に応じて目標を修正したりします。
<例>
① 算数をもっと得意にするために、家庭学習で算数のドリルを使って1日に2ページずつ復習する。
② 体力を付けるために、放課後の時間を使って、家の近くの公園を毎日10分間走る。
③ 小学校最後の全校集会に向けて、集会委員として学校の全員が楽しめる集会を企画して、委員会のみんなで協力して取り組む。
④ 毎週自主学習の計画を立てて、漢字ドリルや計算ドリル以外に、授業で気になったことや自分が調べたいと思ったことをタブレット端末や本で調べて、工夫してまとめる。
事後の指導
① 決めたことを実践し振り返る
意思決定したことを一人一人が実践し、振り返ります。今回の実践では1か月間実践を行います。振り返りはワークシートを使用します。1週間ごとに帰りの会などで振り返りを行います。達成状況を踏まえ、必要に応じて新たな目標を設定したり、目標を修正したりします。
※取組状況を振り返った後に、自分の目標が達成できているならば、目標達成に向けての手立てを再度考える機会を設けることで、習慣化につながることも期待できます。
ぼくは今の目標を達成したから次の目標にするよ。
私は目標を達成するのが難しかったので、目標を変えよう。
②「キャリア・パスポート」に記録する
この授業で決めた目標を「キャリア・パスポート」に転記、修正したりすることで、「キャリア・パスポート」に自分の学びが蓄積されます。
板書例
構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝
監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106