ねらいを明確にし確かな学びへとつなげる「体験活動」の指導【主体的に生きる力を育む学級経営の極意⑪】


子供たちが多様な他者と関わりながら社会につながり、主体的に生きる力を育んでいくために、教師はどのような学級経営をしていけばよいのでしょうか。学級経営・特別活動を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に学級経営の本流を踏まえて基礎基本を解説します。第11回は、「体験活動」の設定法について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章
「体験活動」は、教育活動を効果的な学びに高めます。子供たちは、体験活動によって多様な感動体験を経験し、多くの貴重な学びを体得します。教師は、その貴重な機会を、言語活動を通して子供自身が「気付いて学ぶ」確かな学習へと導いていくことが大切です。「体験活動」の特質を踏まえ、「活動上の意義」「育てたい資質・能力」「実践上の配慮事項」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 活動上の意義
「体験活動」には、それぞれの活動に応じた意義があります。いずれの活動も、座学だけでは体得しがたい経験を積むことができるように指導計画を立案します。特に「体験あって学びなし」とならないように、教師がそれぞれの体験活動のねらいをしっかり踏まえ、集団と個に応じた適切な指導をしていきましょう。
「聞いたことは忘れる。見たことは思い出す。体験したことは理解する。気付いたことは身に付く」という言葉があります。「体験活動」の意義を踏まえ、子供自身の「気付き」に導くような指導をしていきましょう。
子供の「気付き」を重視した活動計画を立案します
「体験活動」は、座学とは異なり、五感を通して学ぶことにより、豊かな心情を育てることにも直結します。その際、特に感動体験を言葉に表現したり、文章等に表したりして確かな学びとなるようにすることが大切です。その指導の中核となる子供自身の「気付き」を重視して指導していきましょう。

CHECK② 育てたい資質・能力
教育課程に位置付けられた「体験活動」は、学校としての創意工夫を生かし、各教科等との関連を図りつつ、「往還的な学び」となるようにする必要があります。その際、次のような「資質・能力」の視点を踏まえることが求められます。
「体験活動」で育てたい六つの資質・能力を踏まえます
①「安全性」(子供が自ら安全に気を付けて活動できるようにします)
②「社会性」(多様な他者と協働的に活動する場面を意図的に取り入れます)
③「主体性」(子供が自ら活動を選択して主体的に活動する場面を取り入れます)
④「公共性」(集団のルールや約束を守る指導を根気強く行います)
⑤「感 性」(五感を通じて感性を高める活動を意図的に取り入れます)
⑥「表現力」(体験したことを自分なりの表現方法で振り返ります)
CHECK③ 実践上の配慮事項
「体験活動」が、「体験あって学びなし」とならないようにするためには、活動のねらいを明確にし、子供の実態に即した活動計画を立案することが大前提です。そして、活動後に単に「楽しかった」だけで終わらないようにすることが大切です。「誰が誰と、いつどこで、どのようなこと」に取り組んで何が楽しかったのか等について、自分なりの言葉で表現できるようにしていきましょう。
「事後の活動」で充実した振り返りとなるようにします
「体験活動」の振り返りが子供の学びを確かなものにします。「体験活動」を行う前と後の自分を比べて、変容しているところを探し、何が変容につながったのかについて自覚できるようにします。また、事前に設定した自分のめあてがどの程度達成できたかを自己評価し、自ら成果と課題を確認できるように指導し、学びの質を高めていきましょう。

イラスト/池和子(イラストメーカーズ)