GIGAスクール構想【わかる!教育ニュース #59】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第59回のテーマは「GIGAスクール構想」です。
目次
「GIGAスクールサポーター」がいない小学校は75.0%
政府がGIGAスクール構想を打ち出して、5年。新型コロナ禍を受け、1人1台端末配備が前倒しになり、学校のデジタル環境は激変しました。でも、ITは日進月歩の世界。機器の性能や必要な対応は複雑化していきます。頼りになる専門人材は、活用されているのでしょうか。
学校のICT環境整備を担う「GIGAスクールサポーター」がいない小学校は、本年度は75.0%に上ることが、全国公立学校教頭会の調査で分かりました(参照データ)。機器の準備や操作などで教員を日々サポートする「ICT支援員」は71.5%の小学校が置いていますが、常勤は0.8%。最も多いのは「月数回」の46.4%で、次に「年数回」の12.9%です。多くの学校が、複雑化するIT関連の整備で専門人材に頼れず、教員を日常的に助ける態勢でもないと分かります。
一方、GIGAスクールの校内運用を誰が担っているか尋ねると、小学校の81.1%が「ICT等担当職員」と回答。教頭会は「担当職員」が具体的にどんな人か「読み取れない」としていますが、サポーターや支援員の配置状況から、校内の割り振りで担当になった教員が大半では、と推測しています。
端末やネットワークの修理依頼、不具合の対応も「ICT等担当職員」だという小学校が51.5%に上る一方、「副校長・教頭」も26.9%あります。教頭会は、修理依頼などは教育委員会とのやりとりが多く、副校長・教頭の負担になると指摘しますが、「担当職員」の大半を占めるであろう現場教員の重荷も気がかりです。
GIGAスクールサポーターやICT支援員が活用されているとは言えない現状
GIGAスクールサポーターやICT支援員は、国が教育のデジタル化を進める中で、学校現場を専門的な立場で支える人材とされています。
ICT関連企業の人などが想定されているサポーターは、各教育委員会が国の補助金を活用して雇い、各校に配置。学校のICT環境の設計、工事や納品時の業者対応、端末使用のマニュアル作りなど、基本的な環境づくりを担います。
支援員は、2021年に学校教育法施行規則で「教員と連携協働しながら不可欠な役割を果たす支援スタッフ」と位置付けられました。教委が地方財政措置を活用して各校に置き、機器の準備や操作、維持管理、授業計画づくり、校務システムの活用、研修などの支援をします。
でも調査結果からは、活用されているとは言えない現状が浮き彫りになりました。
さらに文部科学省によると、学校の規模に見合うネットの通信速度を満たす公立小中高校は21.6%。つまり授業に支障が出かねない不十分な通信環境の学校が8割近くあるのです。
端末を1人1台行き渡らせても、授業の円滑な進行に必要な人材や環境に欠けた「デジタル化」に効果はあるのでしょうか。予算、外部人材とのやりとり、煩雑な手続きなど、背景にある問題を探って対処しなければ、形だけのデジタル化になってしまいます。
【わかる! 教育ニュース】次回は、1月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子