全国学力テスト【わかる!教育ニュース #58】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第58回のテーマは「全国学力テスト」です。
目次
全国学力テストの調査結果の見方や問題点の探り方などの解説動画を公開
貴重なデータがあっても、ため込むだけでは宝の持ち腐れ。生かしてこそ、意味があります。毎年行う全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果も、その一つ。正答率にとらわれがちですが、データの使い方次第で、正答や誤答の裏にある子供の考えの道筋を見る手だてになりそうです。
国立教育政策研究所がこのほど、全国学力テストの結果を指導や授業にもっと生かしてもらおうと、調査結果の見方や問題点の探り方などを解説した2つの動画を、ホームページで公開しました(参照データ)。同研究所は2021年に「教育データサイエンスセンター」を設け、教育に関する情報やデータの分析と研究をしています。文部科学省などが行った調査の結果や研修用動画の公開もしており、今回の動画もその一環。数字で表されたテストの結果を読み解き、指導に生かす方策を説明しています。
テスト結果の扱いについての活用法やクロス集計の活用などを解説
1つ目の動画では、テストの結果の扱いについての基本的な考え方や活用法を解説。ポイントとして、まず教員自身が実際に問題を解くことを勧めています。「問題を解く」ということは、問われている内容を理解し、考え、答えるという一連の流れです。でもそれは、正答率や各問題の正誤では分かりません。そこで、教員が問題を解きながら出題のねらいをつかんだ上で子供たちの結果を見ると、どこまで理解していて、何につまずいたかが推量でき、指導のヒントになると説いています。
次に取り上げたのは、複数の問題の正誤状況をかけ合わせて分析する、クロス集計。それぞれの子がどの問題に正答し、あるいは間違えたかを見ながら、理解やつまずきの傾向をつかむ手法です。動画では平行四辺形の面積について、異なる問い方をした2つの設問を例に、正誤やどんな間違いをしたかを分析し、図形の特性を理解した上で面積を導き出したのか、面積の求め方の式に数字を当てはめただけかなど、個々の課題が浮き彫りになると説いています。
2つ目の動画は、目的に応じたクロス集計の活用などの解説。正答数の多寡と解答類型から、理解度の傾向を探る「正答数別類型割合グラフ」を例示し、正答数が低い層、中間層、高い層それぞれの特徴や、間違いやすいところの見付け方などを説明しました。
さらに、問題を解くまでの考えの道筋を知りたいときに使う「思考発話調査」についても解説。子供に「なぜそう考えたのか」などと問いかけ、考えたことを口に出してもらいながら問題を解かせる取組で、ある学校での実践も紹介しています。
そもそも全国学力テストに限らず、テストを受ける目的は「いい成績を取る」ことではないはずです。結果を基に、その子が今、どこまで理解しているのか、何が課題になっているのかを把握し、強みを伸ばしたり、弱みを克服したりするためではないでしょうか。テストの結果は終着点ではなく、これから先に進むための出発点として生かしたいものです。
【わかる! 教育ニュース】次回は、12月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子