子どもが楽しい 理科の授業って? ~楽しくなる3つのポイントを大切にしよう~ 【理科の壺】
理科の授業を行うにあたって、先生の理科授業に対する意識はどのようなものなのでしょうか。知識を暗記させることに力を入れているのか、解決のための体験や経験に力を入れているのか。その意識の違いだけでも、先生の授業でのアプローチや発言、教材の準備が全く異なります。今回は楽しい理科授業を作るために、意識してほしいポイントをご紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/和歌山市教育委員会専門教育員・岩﨑 仁
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
子どもが楽しい 理科の授業って?
私は理科の授業を子どもたちとするのが好きです。その瞬間、とてもいい笑顔になっているそうです。子どもたちからは「先生、授業のときは顔が全然違うな!」とよく笑われていました。
そんな子どもたちに、
[授業が楽しいときって、どんなとき?」
と、ここ3年間、聞いています。
子どもたちは真剣に考えてくれ、たくさんの答えを出してくれましたが、その中に共通することが3つありました。いま私は、これら3つを意識して授業をしています。
1.自分で決められること
子どもたちが1番最初に言った楽しい授業とは、
「自分たち」で学習の内容を決めていけること
だそうです。だからこそ、私は子どもたちと学習の問いを創ることを、とても大切にしています。
どんなに魅力的な実験や観察であったしても、教師主導だったら子どもたちは自律的に学んでいくでしょうか?
もちろん、全てを子どもたちに丸投げする、ということではありません。
教師が子どもと共に学ぶ、という姿勢で、学習の過程をコーディネートしていくのです。
そのために子どもが事象にじっくりと関わる時間を充分に保証し、1人1人の考えを把握します。
例えば、4年生「ものの温度と体積」の導入部分で、フラスコを温めてシャボン玉を膨らます活動に時間をとります。すると子どもたちの中から多様な疑問が出てきます。多種多様ですので各々の意見を全体共有で整理し、段階的にまとめていきます。このように、じっくりと事象にかかわる時間を保証することでこどもたちは全体の話し合いの中で各々の意見から相違点を見出し、問題を子どもたち自身が提起していきます。
2.みんなで分かること
子どもたちは、1人で分かるより「みんな」で分かった方が楽しいそうです。私たち大人も、感動を共有する瞬間って楽しいものですよね。
これは、先生がまとめを板書して、子どもたちに写させるだけでは難しいです。
私は、いつも子どもたちが科学概念を獲得する際には、子どもたち自身の「つまり」でまとめ、最後は振り返ります。
「ものの温度と体積」空気の温まり方についてまとめる部分にて
A:つまり、フラスコの中の空気を温めると空気は増える
B:増えるというか、あとでシャボン玉はもとにもどるから。膨らむ。大きくなったんだよ。
教師:何がですか?
C:体積が大きくなった。フラスコの空気を温めると空気は大きくなる。
というように子どもたちの言葉で学習のまとめをしていくことで、子どもたちは友達の話をよく聞き、意見を繋ぎながら学習のまとめをアップデートしていきます。その後、学んだことを自分のものとするために振り返りをノートに記入します。振り返り中はグループ等で聞き合いをOKにして互いに補完をします。子どもたちが書いた振り返りには教師が必ずフィードバックをするようにしています。
3.楽しいから愉しいへ
これも子どもたちに教えてもらったことですが、「楽しい」には種類があるそうです。
一瞬の「楽しい」だけでなく、モヤモヤをみんなで解決することができた達成感やモヤモヤを解決していく過程が「愉しい」そうです。
だからこそ、私たち教師は子どもたち一人一人が、今何を考えているのかを見取り、授業を計画し、子たちに合わせて授業をデザインしていく必要があります。
もし、楽しい実験を子どもたちとするなら、それは何のためにするのか、その後子どもたちはどのように考えるか、ということに時間を割きます。一過性のものにならないように。
ここまで読んでくれた皆さんは、私がとても子どもたちに寄り添う姿勢を持っている、と思うかもしれません。しかし、私が子どもたちと目指す「みんなが楽しい」には、私自身も入っています。
互いが楽しく笑顔の授業って安心するし、ワクワクしますものね。
イラスト/難波孝
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
理科の壺は毎週水曜日更新です!
<執筆者プロフィール>
岩崎 仁●いわさき・ひとし 和歌山市教育委員会指導主事。和歌山大学附属小学校、和歌山市の公立小学校を経て現職。理科教育や対話に関する実践的な研究や、校内研修を通じて「みんなが楽しい学級・学校」を目指した取り組みを進める。さらに、和歌山市教育研究所での初任者研修の指導や、和歌山大学の非常勤講師として教員養成にも携わる。
第69回読売教育賞 優秀賞受賞
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。