【相談募集中】授業中、教室で暴れる子どもに困っています
授業中走り回ったり、大声を発する子への指導に悩む先生から「みん教相談室」に相談が寄せられました。対応する教師によって態度を変えることにも疑問を感じているそう。これに対し、愛知県公立小学校教諭・八神進祐先生は子どもへの有効な声かけ、支援児童への指導のヒントなどをアドバイスしました。その内容をこちらでシェアします。
目次
Q. 授業中、教室で暴れる子どもに困っています
現在、3年生の担任をしている、3年目の小学校教諭です。
私のクラスでは、授業中に走り回る子が1人、私語や大声を出したりするのが止められない子が1人、その他なかなか授業に集中できない子など、支援に悩む児童が複数人います。
その子自身の支援にはもちろん、そのせいで周りの児童の安全や学ぶ権利が損なわれてしまうことがある、ということにも悩んでおります。また、他の先生が声をかけたら聞くのに私の時は聞かない、など正直なめられているとも思います。(言うことを聞く時もありますが……そこの違いが分かりません。)
そこで、お聞きしたいのは以下の2点です。
①困り感のある児童に、どのような声かけが有効なのか。(現在、「落ち着かないなら廊下で紙を破ろう」など周りに迷惑をかけないような方法を促したり、「自分で我慢できることは、周りのために我慢しないといけない」と諭したりしています。危険なことやあまりにも聞かない時は、かなり強い口調で叱るときもあります。)
②他の先生なら言うことを聞く、という違いが起こるのはなぜか。私が担任であるせいで子どもが言うことを聞かず、安全が損なわれるなら、私はこの職を続けるべきではないのか。
②はかなり感情的な質問で申し訳ありませんが、こちらの気持ちの持ちようとして、どのようなスタンスで子どもと接するべきか、根本的なところをもう一度見直したいです。
ご意見、ご回答よろしくお願いします。
(シロイルカ・20代女性)
A. 模範行動をほめる声かけが、不適切行動を減らすきっかけになることも
シロイルカ先生、初めまして。八神と申します。13年間教員をしており、小学3年生の担任を3度経験しました。
シロイルカ先生は3年目の先生で、ちょうど今、担任されている3年生の子どもたちが入学された時に赴任されたとのこと。これは何かのご縁を感じますね。3年生は学校生活や行事の見通しが立つ学年でもありますが、同時に「慣れ」や「だらけ」が出やすく、「ギャングエイジ」と呼ばれる成長段階でもあり、時には反抗的な態度を見せる子も出てきます。こうした学年の担任はやりがいと同時にご苦労も多分にあるかと思いますが、シロイルカ先生がその役割を担われていることに敬意を表します。
困りを感じる児童への声かけについて
まず、子どもの行動が「できるのにやらないのか」または「支援が必要なのか」を見極めることが大切です。前者の場合、子どもが先生に注目してほしいというサインかもしれません。私の経験では、単に𠮟るだけでは逆効果になることが多く、さらにはその子が「自分はダメな人間なんだ」と、どんどん自分自身を追い詰めてしまうことがあるからです。
指導が難しい児童に対して私は、普段の何気ない会話や作文・日記のコメントで、「○○さんって優しいですね」「明るいところが好きだな」といった肯定的なメッセージを意識的に伝えるようにしています。また、教師と児童との「共通点を見付ける」ことで距離を縮めるのも効果的です。例えば、
先生も夏休み生まれなんだよ。誕生日が休みの日だとちょっと特別な感じがするよね
朝ごはんはお米派なんだね! 先生も同じで、海苔で巻いて食べるのが好きなんだ
みんなが入学した年に先生もこの学校に来たんだよ。そう思うと同じスタートを切った仲間だね
いわゆる「雑談」ではありますが、共通項を強調して会話をすることで、次第に心の距離が縮まっていきます。やがて「先生を困らせたくない。一緒に頑張りたい」という気持ちが芽生え、それが正のエネルギーになっていくことがあります。
後者である「支援が必要な児童」に対しては、様々な場面に応じた支援の工夫が必要ですが、授業に集中できていない場合、次のような声かけなどは効果を発するかもしれません。
答えがわからない場合、答えをノートに写すのも勉強です
「答えをノートに写すのも勉強です」という声かけは、子どもたちにとって大きな意味を持ちます。まず、分からない問題に直面したときの「できない」という気持ちから解放され、心が軽くなります。多くの子どもたちは「何があっても答えを見てはいけない。それはズルいことだ」と思い込みがちです。ですが、答えを正しく活用することで解法のヒントを得たり、自学自習の姿勢を育んだりすることが可能になります。
特に、分からないことに長時間悩むよりも、「まずは答えを写してみる」という行動は、学びの第一歩として非常に効果的です。例えば、漢字を例に挙げると、分からない漢字をただ考え続けても思い出せない場合があります。しかし、答えを見て、トメ、ハネを正しく書き写す学習の効果は高いと考えられます。また、覚える→忘れる→答えを見て思い出す、というプロセスを繰り返すことで記憶が定着し、学力が向上します。
このように、答えを活用することは決して「ズルいこと」ではなく、学びの糸口をつかむ重要な手段です。ただし、答えを単なる作業として写すだけでは効果が薄いため、「考えながら写すことが大切だよ」と声をかけるなど、子どもたちの学びの意識を高める工夫が必要です。
また、学年が上がるにつれ、「自分が学習内容を理解できていないことを周りに知られたくない」という心理が働きます。なので、先生がその子の机の横に付きっきりで指導することが時として有効ではない場合があります。
そこでぜひ取り入れたいのは、「ヒット&アウェイ机間指導法」と私が名付けたアプローチです。机間巡視をする中で、困っている児童に短時間で一言のヒントや途中のサポートを行い、少し離れる。その後もう一度巡回して理解度や進み具合を確認し、必要に応じて同様にサポートする。この方法では、児童に「自分で考える時間」も提供でき、なおかつ気になる周りからの目も最小限に抑えられます。
苦手なことに取り組むには多大なエネルギーを必要とするものです。そのような児童に、教師が補助的に力を貸す姿勢が大切だと感じています。
他の先生には言うことを聞く理由について
シロイルカ先生の言うことを聞かない児童がいるのは、実は「担任だからこそ甘えている」の可能性が高いのではと思いました。子どもは時に「先生の気を引きたい」という気持ちから反抗的な行動を見せるものです。こうした行動に対して、不適切行動を𠮟るのではなく、まずは他の子の模範的な行動をほめる声かけが有効です。つまり、「適切な行動を強化する」ことで、全体的にみて、反抗的な行動が減少していきます。具体的な例としては次のようなものが挙げられます。
静かにさせたいとき
×「静かにしなさい」
〇「静かにしている子、ありがとう」
漢字のトメ・ハネをしっかり書かせたいとき
×「しっかり書きなさい」
〇「トメ・ハネができていると格好いいよね!」
また、子どもが不適切な行動をした際は、「困った表情を見せない」ことも大切です。その表情をその子も、周りの子も見ています。冷静に、落ち着いて対応することで、その場に応じた適切な指導がしやすくなります。私は普段、子どもたちへの指導の中で「成長を褒め、実感させるために指導する」ことを意識しています。
具体的なケースとして、以前私が担任していたクラスの清掃活動のエピソードを挙げます。ある男の子は、掃除用具で遊んだり、ふざけたりして、なかなか掃除に取り組みませんでした。周りの子が真面目に取り組んでいる中、その行動を見過ごすことは学級全体や彼自身の成長に繋がらないと考え、毅然とした姿勢で指導しました。
その結果、彼は反省し、わずかな時間ですが、掃除に取り組む姿勢を見せてくれるようになりました。ここで私が大切にしていること、「取り組もうとした瞬間」や「集中力が途切れる前」に声をかけることです。例えば、「○○さん、ありがとう。助かるよ!」や「みんな注目~。○○さんが本棚の隅を掃いてくれたから綺麗になったよ」のような声をかけます。こうした声かけを続けるうちに、彼は掃除に積極的になり、なんと最終的には、他の子に指示を出して手伝うようなリーダーとまでなりました。
注意を受けると誰でも心が沈みがちです。しかし、行動を改めた際にはそれを褒めることで、注意や指導が子どもにとって成長の糧となります。子どもが「褒められたこと」を実感し、それを次の行動に活かせるようになると、教師は「叱るだけの存在」ではなく、「支えとなる存在」として認識されます。指導と成長はセットということです。
年度の終わりには、シロイルカ先生がより一層成長され、学級が良い方向に進むことを心より応援しています。目の前の課題を自分事と捉え、改善しようとされているシロイルカ先生は教師の鑑です。そして将来、シロイルカ先生が若い先生方を支え、悩みを解決していく場面を思い浮かべながら、このメッセージを締めたいと思います。ありがとうございました。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。