小6特別活動「卒業文集をつくろう」指導アイデア
2学期も残すところあと1か月。運動会や音楽会など学校行事も終わり、いよいよ子供たちも卒業を見据えていることでしょう。年が明けると卒業までは「あっ」という間に訪れます。そこで、卒業までにやるべきことは計画的に進めていく必要があります。ここでは、これまで1年間、最高学年として様々なことに取り組んできた学級の仲間との足跡を振り返り、いつまでも大切な仲間との思い出が色あせないような取組として「卒業文集」を作ることを議題とした実践を紹介します。クラスみんなのことを忘れない思い出をつくる活動を通して、さらにクラスの絆を深め、所属感と充実感を高める機会にしましょう。
執筆/熊本県公立小学校教諭・奥村遼生
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
尚絅大学教授・平野 修
目次
年間執筆計画
4月 学級活動⑴ 6年生スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 情報通信端末の使い方を見直そう
7・8月 学級活動⑶ ウ 家庭学習をアップデートしよう
9月 学級活動⑵ イ 友達のよい相談相手になろう
10月 学級活動⑴ 係活動発表会をしよう
11月 学級活動⑴ 学級チャレンジ会をしよう
12月 学級活動⑴ 卒業文集をつくろう
1月 学級活動⑶ ア 中学校に向けて
2月 学級活動⑴ お世話になった方々へ感謝の気持ちを表そう
本実践のねらい
本実践では、学級オリジナルの卒業文集を作成することを目的とします。個人で書くプロフィールのページとは別に学級みんなのことを書く見開き2ページをどのような内容にするのかを決める話合いを行います。卒業文集を作成することで、クラスの思い出づくりになるだけでなく、これまでのクラスの歩みを文集に綴ることで自分たちの成長を自覚し、また友達のことをさらに知る機会となり、相互理解が深まり残りの日数を今まで以上に充実して過ごすことが期待されます。また話し合って決まった内容をもとに全員で協力して準備・作成する中で、卒業に向けて主体性を高め、学級の絆をより深め、学級への所属感が高まることをねらいとしています。
※卒業アルバムを学年全体で作成する学校も多いと思います。その場合は、アルバムのクラスページや個人ページの内容について話し合うとよいでしょう。また、その際、学年で事前にクラスページは何ページにするのかなど共通理解を図っておくようにします。
事前の活動
議題の選定
先月号でも述べたように、議題の選定に当たっては、輪番制での計画委員と提案者、先生が一緒になって計画委員会を開き、いくつかの提案された議題案の中から、話し合う緊急性や時期的なことなどを視点とし、議題選定を行います。今回は、「卒業に向けて学級みんなで取り組んできた思い出や一人一人のことを文集という形でいつまでも残したい」という提案者の思いを学級全員が共有することで「学級文集をつくろう」という議題が計画委員会で選定されました。
卒業まであと約70日、みんなが卒業してもこのクラスのことを忘れないために何かできないかな。
これまで頑張ってきたことやクラスの歩みを残せるといいよね。
クラスのオリジナル卒業文集を作ってみるのはどうかな。
自分たちのプロフィール欄とかあると盛り上がりそうだし卒業しても思い出せるね。
じゃあ、明日の帰りの会でみんなにこの議題でいいかを聞いてみよう。
活動計画を立てる
学級会をする前に、計画委員会で活動計画を立て、学級会の見通しをもちます。また学級会がスムーズに進むための工夫なども話し合っておくことで、計画委員のスキル向上にもつながり、学級会当日も自信をもって臨むことができます。
①提案理由の理解を深める
<学級会活動計画例>
提案理由で特に大事にしたい部分を考えることで、学級会で子供たちが提案理由に立ち返りやすくします。
今回の議題の提案理由はこうだよね。話合いの中では特にどこを大切にするとよいかな。
みんなのよさや頑張りが見えるようにすることかな。
「思い出を振り返るものにしたい」が大切じゃないかな。卒業文集はクラスのことを思い出せるものにしたいよね。
大事なところには赤い線を引いておくと、みんなも意識して意見が言えると思うよ。
②「話し合うこと」を設定する
提案理由が決まったら、クラスで話し合うべき内容を考えます。事前に決めておかなければいけないことも確認します。ここでは、文集全体の枚数は何ページにするのか、いつを原稿の締め切りにするのかなど、文集のイメージの共有と文集完成までのスケジュール等を先生と一緒になって作っておくことが大切になります。
どんなことを話し合うといいかな。
まずは、文集の内容を決めないといけないね。
卒業文集だから1人1ページ自分のプロフィールを書くページは必要だね。
そうだね。そこには一人一人の思い出や、将来の夢、みんなへのメッセージも書けるといいね。
このページはあらかじめみんな書くということで決めておこう。
そうなると、みんなで話し合って決めるのは、学級みんなのページをどうするかということになるかな。
ページ的には見開きの4ページ程度になるね。
議題や提案理由、話し合うこと、決まっていることがはっきりしたら、帰りの会などの時間を使ってクラス全体に共有します。あらかじめ余裕をもって議題などを共有しておくことで、子供一人一人が意見をもって学級会に参加しやすくなります。
ポイント① 「くらべ合うからスタート」
「くらべ合う」段階の話合いに時間を要する場合には、「出し合う」段階を事前に行っておくことも考えられます。そのためには、あらかじめアンケートやICTなどを活用してクラス全員の意見を集め、計画委員会で集約、整理しておくことが必要となります。みんなの意見を集約した上で原案の作成を行うことが大切です。
ポイント② 「原案は事前に共有」
原案が決まったら、事前に帰りの会の時間等で説明を行い、教室内に掲示をしておくことで、内容や実践方法などを理解した上で学級会当日の話合いを始められるので、スムーズに会を進めることができます。
<学級会ノート>
<学級会活動計画>
本時の活動
話し合うこと① 見開き4ページの内容を何にするか
【出し合う】
計画委員会で検討した、原案として示す意見を黒板に貼り、確認します。
必ず原案以外に何かアイデアはないか、追加の意見を聞くようにします。
【くらべ合う】
計画委員会から出された原案をもとに、学級全体で話し合い、合意形成を図ります。今回の学級会では事前に出された意見を共有しているので、本格的に意見交流が始まるのはこの<くらべ合う>の段階からになります。
司会は、改めて提案理由や話し合うこと、決まっていることを確認し、出ている意見をくらべやすいようにします。
(司会)この中から、卒業文集のクラスのページに書く内容を決めたいと思います。賛成や反対の意見を出してください。
ぼくは「みんなへのメッセージ」を寄せ書きにしたらいいと思います。読んだときうれしいし、書いてくれた友達を思い出せそうです。
私は「思い出の写真」は卒業アルバムと重なるので、クラスの卒業文集には必要ないかなと思います。かわりに、「クラスの年表」に賛成です。「クラスの年表」を文集に入れたら、1年間みんなと過ごした学級生活や学校行事などが、思い起こせてとてもいいと思うからです。
私も「クラスの年表」は、クラスの1年間の歩みをまとめることができて、いいと思います。
ぼくは「〇〇ランキング」は、「個人ページのプロフィール」の中の項目にすればいいと思います。
私も「〇〇ランキング」は人によって違うと思うから個人ページにして、クラスとしての思い出ベスト3をつくったほうが思い出に残ると思います。
ぼくは「先生からのメッセージ」は担任の〇〇先生にもプロフィールを書いてもらって、そこにみんなへのメッセージを入れてもらうといいと思います。
【まとめる】
「くらべ合う」段階で出た意見をもとに話合いをまとめます。
(司会)話合いの結果、クラスの卒業文集のページには「クラスの係」「みんなへのメッセージ」「クラスの年表」「みんなの思い出ベスト3」を書くことに決まりました。
話し合うこと② 卒業文集を作成するときに必要な役割
【出し合う】
話し合うこと①で決まったことをもとに、どのような役割があるとよいかについて意見を出し合い、必要な役割を話し合って決めます。
私は出来上がった文集を人数分印刷する係が必要だと思います。綴るのは、全員でやったほうがいいけれど、印刷は役割を決めたほうがいいと思います。
ぼくは表紙のデザインをする人がいたらいいと思います。
ぼくは「個人のプロフィール」のレイアウトを決める人が必要だと思います。
(司会)今出た意見について、他にあったほうがよい役割は何かありますか。
では、決まった役割をもとに全員で役割分担をしましょう。
ポイント③ 事前に役割を短冊に書いておき、時短
本実践では話し合うこと②の必要な役割について、「出し合う」段階から行いました。事前に学級会ノートに書かれた役割や、これまでの文集づくりの経験から必要だと思う役割を計画委員会で検討し、短冊やホワイトボードに書いておきます。本時ではその他に必要な役割があるかどうかだけを聞くようにすると、時短になります。これはほかの集会活動でも同様です。そうして、自分がやりたい係のところに名前カードを貼っていくと、時間をかけずに役割分担をすることができます。しかし、希望に偏りが出た場合は、みんなで話し合い、人数を調整するなどして偏りのないようにしていきましょう。
<板書計画>
事後の活動
活動に向けた事前準備
【決まったこと、役割分担の掲示】
学級会で決まったことや、役割分担などを学級会コーナーに掲示します。またカレンダーを活用し、文集を完成することをゴールにいつまでに仕事を終わらせるかを記入することで、流れが可視化されて子供が見通しをもって活動に取り組むことができます。カレンダーを作ることで、先の見通しが見え、計画的に仕事を進めることができます。また、仕事の進捗状況については帰りの会などで定期的に報告し合うことで確実に仕事を進めていくことも大切です。
活動の振り返り
実践後の振り返りは、子供たちの成長を感じたり、次の活動につなげたりするための大切な時間です。事前の準備から活動までを振り返ります。自分の頑張りや友達のよさだけでなく、課題にも気付かせ、次の活動に生かせるようにします。
振り返りの視点
●提案理由に沿った振り返り
・クラスの思い出に残るものは出来上がったか。
・みんなで協力して卒業文集を作り上げることができたか
●自分の頑張りやよかったところ
●自分の役割について
●友達の活躍やよかったところ
●次の活動に向けての改善点
構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝
監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106