小1特別活動「きれいな教室~よりよい掃除を目指そう!~」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小1特別活動の指導アイデアです。12月は、学級活動(3)イ「きれいな教室~よりよい掃除を目指そう!~」の実践例を紹介します。
執筆/鳥取県公立小学校教諭・岡本孝枝
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
鳥取県公立小学校校長・太田敦弘
目次
年間執筆計画
04月 学級活動(1) 学級会を始めよう!(学級会オリエンテーション)
05月 学級活動(2)ア 元気にあいさつ
06月 学級活動(2)ウ 上手な歯の磨き方~6歳臼歯は歯の王様~
07月 学級活動(3)ウ 楽しさ発見 学校図書館
09月 学級活動(1) わくわくハッピー係活動をしよう
10月 学級活動(2)イ みんな仲よくーふわふわ言葉とちくちく言葉ー
11月 学級活動(1) 1年〇組ジャンボかるたを作ろう
12月 学級活動(3)イ きれいな教室~よりよい掃除を目指そう!~
01月 学級活動(2)エ 楽しい給⾷
02月 学級活動(3)ア もうすぐ2年生
03月 学級活動(1) 友達集会をしよう
学級活動(3)イの指導について
本時の題材である「きれいな教室~よりよい掃除を目指そう!~」は、学級活動(3)イ「社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」に関わる題材で、清掃などの当番活動における自己の役割を自覚して、協働することの意義を理解し、社会の一員として役割を果たすために必要となることについて主体的に考えて行動することを目指したものです。
掃除は「健康の維持」「物を長持ちさせる」「清潔」の観点からも、欠かすことのできないものです。雑巾の使い方、絞り方、拭き方などの技能も大切ですが、学級活動(3)イの授業では掃除をすることの意義や掃除のよさ、協働して活動することの大切さに目を向け、自分自身のこれまでの取組やがんばりなどを振り返りながら学級で話し合い、よりよい掃除を目指します。
そして、学級での話合いを生かして、なりたい自分に向けた掃除の心構えや掃除の方法について意思決定する活動を通して、友達と協力して働き、よりよい学級づくりに貢献する喜びを実感することへとつなげたいと思います。
事前の指導
事前に学級の普段の掃除の様子を動画で撮影しておき、動画を見ながらアンケート(掃除に一生懸命に取り組んでいるか、掃除でがんばっていることは何か)に答えます。客観的に自分たちの姿を見てアンケートに答えることで、自分自身を振り返ることにつながります。一人一人が題材について「自分事」として捉えられるようにすることが大切です。
また、自分たちの姿を見ておくことで、本時の「さぐる」の段階で6年生の動画を見る際にも、自分たちの姿と比較しやすくなり、子供の課題意識を高めることにも有効です。
※動画を活用する際は、うまくできていない子供やしっかり活動できていない子供を見つけたり、「あ、〇〇くん、ちゃんとやっていない」など、友達を非難したりすることがないように十分留意しましょう。
本時の学習過程
〇[つかむ]…実態や現状の把握
・自分たちの普段の掃除の様子を確認する。
・掃除への向かい方・取組状況を振り返る。
〇[さぐる]…可能性への気付き
・掃除の目的や意義を確認する。
・6年生の掃除の様子から思いや心構えを知る。
・これまでの掃除の様子を比べ合い、課題に気付く。
〇[見つける]…解決方法などの話合い
・なりたい自分に向けた掃除の心構えや方法について、小グループで話し合い、友達とアドバイスし合う。
・学級全体で話し合い、多様な方法に気付いたり、よりよい実践への気持ちを高めたりする。
〇[決める]…個人目標の意思決定
・学級全体での話合いで出された方法などを参考にして、これからの掃除で自分が実践していくことを決める。
本時のねらい
掃除をすることの意義を理解し、学級のみんなが気持ちよく過ごすことができるように力を合わせて働いたり、学級生活の向上に向けて、自分のめあてやこれから取り組むことを意思決定し、目標をもって学校生活を送れるようにします。
本時の指導
〇[つかむ]…題材を自分事として捉え、学習する意義について理解し課題をつかむ。
【アンケートの活用】
事前に、自分たちの掃除の動画を見て振り返り、アンケートをとります。
質問項目例:
①掃除に一生懸命に取り組んでいますか。
②掃除でがんばっていることは何ですか。
(アンケート結果を発表後)今日はみんなの掃除を振り返ってみましょう。
みんなががんばってぞうきんで床を拭いています。
何回も丁寧に拭いています。
ごみをたくさん集めています。
一人一人が一生懸命に掃除をしていて、先生はいつも感心しています。本当によくがんばっていてすごいね。ところで、掃除って何のためにするのかな。今日は、もっと掃除をよくするために、がんばっていくことをみんなで話し合っていきましょう。
(ここでめあてを出す)
「よりよいそうじをするために、がんばることをきめよう」
〇[さぐる]…可能性への気付き
よりよい掃除ができるようになるためには、何のために掃除をするのか、さらに掃除の意義に気付くことが大切です。そして、「なりたい自分」を追求していこうとする気持ちを高めます。もっとこうしたい、こうなりたいという気持ちを膨らませます。
①なぜ掃除をするのか確認し合う。
②教室を掃除している6年生の動画を見て、気付いたことを発表する。
③掃除についての6年生のインタビュー動画を見て、気付いたことを発表する。
どうして掃除をするのでしょうか。
きれいにするため。
使ったところを元のように戻すためもあるよ。
私は、次に使う人のことを考えなさいって、いつも家の人に言われています。
掃除をしてきれいになると、気持ちがすっきりします。
そうだね。当番だからするんじゃないんだね。
話合いを通して、「掃除当番だから掃除をする」のではなく、自分たちで使うところを自分たちできれいにすることや、学級のみんなが気持ちよく過ごせるためであるということに気付くことができるようにします。
(6年生が掃除をする動画を見て)6年生の掃除はどうでしたか。
てきぱきと掃除をしていました。
みんながしゃべらずに掃除をしていました。
机を2人で引きずらないようにして運び、椅子は1人で持って、3人組で働いていました。わたしたちより机を運ぶスピードが速かったです。
時計を見ながら掃除をしていました。
1人がゴミ箱を持ち上げて、もう1人がゴミ箱の下もほうきで掃いていました。それに、棚の奥のほうも丁寧に拭いていました。
いろいろなところに気付きましたね。すごいですね。
次は、6年生がどんな気持ちで掃除をしているのか聞いてみましょう。
【6年生のインタビュー動画】
インタビュー内容:どんなことを大切にして掃除をしていますか。
時間を見ながら隅々まで丁寧に掃除をしています。
掃除をしてきれいにすると、気持ちもすっきりします。
友達と協力してやっています。自分にできることを考えながら掃除しています。
今の場所をよりきれいにするぞと思って掃除しています。
みんなが気持ちよく過ごせるように考えて掃除をしています。
きれいになって気持ちがいいです。
自分の掃除したところを次に使う人が安全に気持ちよく使ってもらえるように、と思っています。
6年生は、掃除の仕方を工夫しているだけじゃなくて、次に使う人のことを考えたり、みんなが気持ちよく安全に過ごせるように丁寧に掃除したりしているんだね。
教師は、インタビュー動画を見て出てきた子供の意見をまとめます。一人一人がこの動画でもっとこうしたい、こうなりたいという気持ちを膨らませられるとよいでしょう。
〇[見つける]…「なりたい自分」に向けて、できることをみんなで話し合う。
よりよい掃除を目指すために、どんなことをがんばるとよいか考えよう
【グループでの話合い】
グループでの話合いは、友達の考えに共感したり、もっとよくなるためにアドバイスをしたりします。安心して自分の意見が言えるように、グループでの約束(友達の考えにはうなずいたり、必要に応じて質問したりする。司会役を設けるなど)を決めておくとよいでしょう。
ここでは、互いのよさを認め合い、称賛する雰囲気や自分にはない考えに触れることを大切にします。
グループでの話合いを受けて、よりよい掃除を目指して自分ががんばりたいこと見つけます。個人の発表を4つのグループに分けて、分かりやすく板書します。
グループでの話合いは、いろいろな思考をまとめたり、様々な視点に立ってよりよい掃除について気付いたりすることに有効です。
プラスワンとは、一通り掃除が終わったら、自分で気付いたところ(机をまっすぐに整える・小さなごみを拾う・みんなで使うロッカーの中の整頓など)を自主的に掃除します。全体を見る力や小さな気付きがみんなの役に立っているという役立ち感を育てます。また、次に使う人のことや周りのみんなのことを考えて掃除ができるようにすることも大切です。
〇[決める]…よりよく掃除するために、自分のめあてを決める。
よりよく掃除をするために、自分ががんばりたいことを焦点化して決め、がんばりカードに記入します。
【資料1】「きれいなきょうしつ」がんばりカード
めあて:具体的なめあてを1つ書きます。回数や時間などを入れると、自己評価しやすくなります。
わけ:どうしてそのめあてにしたいかということを書きます。6年生へのインタビュー内容や話し合ったことを生かすようにします。
ハート:実践に合わせて、ハートに色をぬります。自分がどれくらいできたのかが視覚的に分かります。
振り返り:1週間のがんばりや成果が実感できるような感想やもっとこうしたいという意欲が表れるものがあるとよいでしょう。
先生より:一人一人のがんばりや取組のよかったところを書きます。
※【資料1】「きれいなきょうしつ」がんばりカードは、下記ボタンをクリックするとダウンロードできます。
◆板書例
事後の指導
自分が決めためあてに沿って、1週間掃除を行い、取組状況に合わせてワークシートに色をぬって振り返ります。めあてを意識して掃除をしていることを帰りの会などで称賛し、さらなる意欲や継続につなげるようにします。互いのがんばりを称賛することで、よりよい掃除やなりたい自分に近付こうとする意欲につながります。
学級通信などで学習内容や取組の様子を知らせることで、実践意欲の向上や家庭での実践、実践の継続につながります。
イラスト/高橋正輝、イラストAC