「人材確保法」とは?【知っておきたい教育用語】

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学校の働き方改革を議論するなかで、教員の人材確保の取組が重要となっています。質の高い教員の人材確保の観点から、公立学校の教員の給与について、現状の「給特法」で残業代を払わずに、一律で4%を上乗せする給与の見直しが議論されています。

執筆/文京学院大学名誉教授・小泉博明

「人材確保法」とは

【人材確保法】
「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(昭和49年法律第2号)のこと。教員の給与を一般の公務員より優遇することを定めている。

この法律の目的は、「学校教育が次代をになう青少年の人間形成の基本をなすものであることをかんがみ、義務教育諸学校の教育職員の給与について特別の措置を定めることにより、すぐれた人材を確保し、もつて学校教育の水準の維持向上に資すること」です。

義務教育諸学校の教育職員の給与については、特別の措置により、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられることになりました。

「給特法」について

「給特法」とは「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(昭和46年法律第77号)のことです。この法律の趣旨は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、その給与その他の勤務条件についての特例を定める」とあります。

そして「教育職員(校長、副校長及び教頭を除く)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない」とあり、続いて「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」とあります。

優れた教員の人材を確保するために、一般の公務員よりも月額4%、給与を上乗せしますが、時間外勤務手当および休日勤務手当は支給されません。教育職員の働き方改革が推進されるなかで、現状の「給特法」の見直しが議論されています。

教員の働き方改革の提言

文部科学省の中教審(中央教育審議会)の特別部会は、教員の働き方改革や処遇改善を議論し、2024年5月13日に審議結果をまとめました。

今回の処遇改善について、教職がより魅力ある職となるように処遇改善を図り、教師に優れた人材を確保するため、前述したとおり、人材確保法の趣旨を踏まえ、その他の処遇改善策とあわせて、人材確保法による処遇改善後の教師の優遇分の水準を確保するため、教師の職務等の特殊性を踏まえ本給相当として支給される教職調整額の率については、現在の4%を少なくとも10%以上とすることが必要であり、その水準を目指していくべきである。

文部科学省(PDF)「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)」令和6年5月13日

また、次のようにも提言しています。

教師の処遇全体を改善していくことに加えて、学校の中でも、学級担任が担う業務や、不登校・いじめ、特別支援教育、GIGAスクール構想の推進等の複雑化・多様化する課題に学校全体として組織的に対応していくための業務等、教師によって業務の内容や負荷が様々である中、職務給の原則も踏まえ、職務や勤務の状況に応じた給与体系を構築していくことが必要である。

文部科学省(PDF)「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)」令和6年5月13日

この提言の背景には、教員採用試験の採用倍率が低下し、教員が魅力ある職業ではなくなりつつあり、質の高い教員の人材確保が難しい現状があります。給与を上げるだけでは課題の解決にはなりません。教員を取り巻く環境整備を着実に推進する「働き方改革」が重要になります。実際の勤務時間に応じた残業代を払わない「給特法」の抜本的な見直しも考えられます。教員の長時間労働と教員不足を解消し、質の高い人材確保の実現が喫緊の課題なのです。

▼参考資料
文部科学省(ウェブサイト)「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(抄)(昭和四十九年二月二十五日 法律第二号)
法令リード(ウェブサイト)「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法 昭和46年法律第77号
文部科学省(PDF)「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)」令和6年5月13日

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