管理職からのコミュニケーションで「職員室いじめ」を防げ!

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職員室の人間関係あるある:リアルな改善策を集めました!
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教員同士の職場内いじめの事件やトラブルがいくつも露見している昨今。管理職は「職員室いじめ」にどう対処すればよいでしょうか。職員室の人間関係を良好にするには「管理職から語りかけることが大事」と話す長野県小諸市立野岸小学校・丸山穣校長に、職員室内トラブルを防ぐコミュニケーションスキルについて聞きました。

コミュニケーションのイメージ
写真AC

教員とのコミュニケーションで校長が注意を払うのは?

「放課後には、私も職員室に行ってお茶を飲んだりしながら、ときには教員たちの仕事の邪魔をしたりしながら、話をします」と言う丸山校長ですが、実は教員の様子に注意を払っているのだそうです。

長野県小諸市立野岸小学校・丸山穣校長

「声をかけるのは、子どもを叱ってきた直後の教員です。やや険しい顔をして職員室に入ってくるのですぐにわかります。そのような教員を見かけたら『どうした?』と声をかけます。そうすると『今、こういうふうに言って叱ってきたんですよ』と話してくれます。叱った教員も『やりすぎてしまったかな』など、後悔の気持ちを持っているものです。そういう思いを受け止めてやるようにしています。

クラスが大変な状態の教員にも、意識して話しかけるようにしています。いろいろな話をする中で、『私は昔、こういうふうにやってみたよ』、『あの先生はこういうことをやっているよ』などの情報を、ほんの少しだけ入れるのです。『これをやりなさい』と言うと、プレッシャーになってしまうので、そういう言い方はしません。雑談のように話したことの中から選択して、自分なりに考えてやってもらえばいいと思っています。

それから、教頭も『○○先生は今、こんなことで困っているようです』などの情報をつかんでくれます。報告を受けたら、その教員に話せる機会をとらえ、『さっきの時間、子どもはどうだった?』などと話しかけることができるのです。いずれにせよ、大事なのは、管理職のほうから話しかけることです」(丸山校長)

職員間トラブル そのとき管理職は…

「生身の人間が集まっているわけですから、自分が思っていることが相手にうまく伝わっていないことはあります。職員間のトラブルはあって当然だと思います」(丸山校長)

トラブルの相談を受けたときに、丸山校長が重視しているのは、相談に来た本人に「自分が言ったことを、校長先生はちゃんと相手に言ってくれた」と感じ取ってもらえるようにすることです。

例えば、A先生が、B先生に何かを言われ、嫌な思いをした、と校長に相談に来たとします。そういうとき、校長室などに二人を呼んで話し合いをするのがよくあるパターンですが、丸山校長はそれをしないといいます。

A先生には「機会を見て言うから、見ていて」と言っておき、職員室で機会をうかがい、B先生と話をするときに「そういえば、こういうことで人を傷つけてしまうこともあるんだよ」などと話すそうです。ポイントは、A先生が見ている場面で話をすることであり、その様子を見たA先生は「お願いしたことを言ってくれたんだな」と思えるわけです。

ただし、「A先生が言った」ことはわからないように配慮します。「校長に言ったって、何もしてくれないと思われるのが一番よくない」と丸山校長は語ります。

校長講話を活用して全児童・全教員に示す

教員から子どもに関する相談を受けたときは、校長講話を使って、子どもたちにメッセージを発することもあります。

「例えば、クラスの子どもたちの意識が勉強に向いていない、などの悩みを聞いたときは、校長講話で『なんで勉強するのかな』というような話をして、子どもたちに考えさせることもあります。困っていた教員は『自分が相談したことがきっかけで、話してくれているんだな』と感じますし、全校の教員が『校長先生がこんな話をしていたよね』と、子どもたちに指導する際の材料として使えるわけです」(丸山校長)

悩みの相談を受けたときに「校長はちゃんと対応してくれる」と教員に思ってもらい、これを繰り返していくことで校長と教職員の信頼関係が強化されていくようです。

「結局、教員との普段の付き合い方が重要だと思うのです。世間ではパワハラが問題視されていますが、私は言葉よりも、普段の関わり方に気をつけています。人間関係ができていないと同じことを言ってもパワハラにとらえられたりするからです。普段から職員室で気軽に話せる関係が築けていれば、 何かあったときに相談に来てくれるし、『ちょっと愚痴を聞いてください』と教員から来てくれるのです」(丸山校長)

丸山校長は、毎回、職員会議の資料に「おまけ」をつけるそうです。教員にとって大事なことを思い出したり、考えたりしてもらえるような、詩や歌詞などを紹介することにしているということです。

職員室は教室と同じと考え、教員に接する

「スマートにいかないからこそ、協力し合うのです」と丸山校長は話します。

例えば、校庭のライン引きに手こずっている教員がいれば、みんなで手伝うそうです。若手の教員が動くと、コンビのベテラン教員も一緒に校庭に出ていき、「俺が若いときはこういうふうに引いたんだ」などの話が始まることもあるそうです。

最後に、丸山校長に、職員との関わり方で心がけていることを聞きました。

「管理職の先生方は、学級担任を経験されてきたと思うのですが、私が校長として行っていることは、かつて自分がクラスを受け持っていたときにしていたことと同じだと思っています。クラスにはいろいろな子どもがいました。引っ込み思案の子もいれば、ずっとしゃべっていて目立ちたがりの子もいました。喧嘩っ早い子もいたと思うのです。『○○ちゃんに△△をされた』と言いにくる子どももいました。それぞれの子どもに対して、プライドを傷つけないようにしつつ、大切なことは伝えなくてはなりませんでした。職員室も同じだと思えば、こういうときはこんなふうに対応したなと思い出し、教員に対して何をすればいいのかわかるはずです。私は職員室の担任のつもりで校長をしています」(丸山校長)

取材・文/林 孝美

『総合教育技術』2020年1月号より

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