教員を辞めたいと思ったときに考えることとは?「教師という仕事が10倍楽しくなるヒント」きっとおもしろい発見がある! #18

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帝京平成大学教授

吉藤玲子
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教師という仕事が10倍楽しくなるヒントの18回目のテーマは、「教員を辞めたいと思ったときに考えることとは?」です。教員が急に辞めるという相談を立て続けに受けた吉藤先生。辞めたいと思ったときにどのようなことを考えて、どうすればよいかという知恵をお届けします。「疲れた」と思ったとき、ぜひヒントにしてみてください。

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執筆/吉藤玲子(よしふじれいこ)
帝京平成大学教授。1961年、東京都生まれ。日本女子大学卒業後、小学校教員・校長としての経歴を含め、38年間、東京都の教育活動に携わる。専門は社会科教育。学級経営の傍ら、文部科学省「中央教育審議会教育課程部社会科」審議員等、様々な委員を兼務。校長になってからは、女性初の全国小学校社会科研究協議会会長、東京都小学校社会科研究会会長職を担う。2022年から現職。現在、小学校の教員を目指す学生を教えている。学校経営、社会科に関わる文献等著書多数。

教員が急に辞める!

9月に入ってすぐに、3件の電話が現場の校長から立て続けにありました。内容はいずれも同じで、担任をしていた教員が急に辞めることになり、うちの大学の卒業生などで代替できる学生を知らないかとのことでした。

9月は、子供も保護者も期待をもって新学期を迎えているはずです。「なぜ突然?」その疑問がわきました。始業式の翌日から担任がいないということは、子供にとっては、かなりショックな出来事です。特に学級が荒れていて収拾がつかないということではありません。「仕事に自信がなくなった」「生活のリズムを変えたい」「他にやりたい勉強がある」などそれぞれ理由がありました。でも、そのような相談は夏休み中にできるのではないでしょうか。新学期に辞めるのはちょっと待って! 子供たちのことを考えて留まってくれればという思いでいっぱいでした。

退職する時期を考えて、もう少しがんばってみよう

辞めたい! そう思う理由の多くは、子供とうまくいかない、学級がまとまらない、騒がしい、学級経営ができないということでしょう。またあの騒がしい教室に行くのかという思い、○○さんからの反抗的な言葉を聞くのは嫌だという思いなどいろいろな思いがあり、新学期に学校へ足が向かなくなるのは分かります。でも、そんなとき、なぜ教員になろうと思ったのか初心を思い出してみてください。そして、すぐに決断するのでなく、ぜひ管理職と相談して、学校に迷惑をかけないようにしてほしいものです。

新学期の初めだけでなく、5月のゴールデンウイーク明けにも突然辞めてしまう先生もいると聞きます。教員になったものの、思っていたような仕事ではなかった、そのような気持ちが膨らんできて、まとまった休みの後に辞めてしまうのでしょうが、この時期も学校としては大変です。

辞めたいと思ったとき、毎日目の前で見ている子供たちのことをもう少し考えてほしいと切に思います。転職の時代なので、私たちが若いときのように1つの仕事を一生続けるという時代ではないのかもしれません。

教員の仕事はおもしろいと言い続けている私ですが、自分にもっと向いている仕事を見付け前向きに転職したいという思いがあるなら、それを我慢してまで教員を続けなさいとは言いません。ただ、辞めるのにも時期があると思います。できるだけ子供や保護者に迷惑をかけないように辞めてほしいです。教員不足と言われている昨今、いきなり講師などは見付かりません。いなくなってしまった教員の分は学校で仕事分担していくしかないのです。ですから可能なら年度末までは何とか続けてほしいものです。

教員をやめたいイラスト

辞めたいと思ったときにちょっと考えて①〈短期的解決編〉 

教員の仕事を辞めたい理由に、自分の時間が見いだせなくなったということもよく聞きます。教員の仕事は確かに忙しいです。授業の準備、子供たちの成績の評価、急に入ってくる保護者対応、ふと気が付くと自分の時間がない! と思ってしまうことも日々あるでしょう。では、一般企業なら時間は自由になるのでしょうか。それなりの給料をもらおうと思えば、やはり持ち帰りの仕事や頭を悩ませ考えることも多いのではないでしょうか。

身近な人に相談

100%自信をもって仕事をしている人は少ないでしょう。自分が教員を辞めようか悩んだとき、まず、身近な人に相談してみましょう。家族、同僚、学年主任などに自分の心境を相談してみてください。自分だけで考えているとどんどん暗くなってしまいます。口から悩みを発して、前向きになるように人に相談することは大切です。

視点を変える

学級がうまくいかないというとき、誰か1人の子供に振り回されている場合があります。その子供について考えることも大切ですが、ちょっと視点を広げて、クラス全体のことや自分についてきてくれている子供のことを考えてみましょう。視点を変えてクラスを見れば、よいことも見付かるかもしれません。

教室環境を変える

学級について悩んでいるときは教室環境を変えてみることも1つの方法です。子供たちは、いつも前を向いています。教員用の棚にかかっているカーテンの模様を変えるだけで喜ぶこともあります。簡単なことなのですが、意外と効果があります。整理整頓をして、教室をすっきりさせることも必要です。校庭探検マップを貼って虫を見付けたところにシールを貼ったり、言われて嬉しい言葉を葉っぱの形のワークシートに書いて貼り「みんなの木」を作ったりしてもよいでしょう。

1日30分のリラックスタイム

そして1日30分でもよいので、学校のことを忘れてリラックスしてみましょう。銭湯に行くのもよし、素敵なカフェに行くのもよし、自分に合ったリラックス方法を見付けて、少しの時間でもリセットできる時間をもつようにしましょう。そうするとよい解決方法が出てくるかもしれません。私は、新任採用の2年間、学級経営や仕事で悩んでいたとき、学校帰りに生ジュースのおいしい古びた喫茶店でぼーっとした時間をいつも過ごしてから帰宅していました。これがリラックスになり、仕事を続けることができた気がしています。

辞めたいと思ったときにちょっと考えて②〈中期的解決編〉

なぜ自分がこの仕事を辞めたいのか、理由をまとめてみましょう。学級経営がうまくいかないならその理由をまとめて、改善に向けて考えてみましょう。子供は1日の多くの時間を学校で過ごします。子供たちのライフスタイルや集団行動はどうなっているかを見直してみましょう。

時間を守る

まずは、時間を守ること! 最近、ノーチャイムの学校も増えていますが、朝や帰りの会はもちろん、授業時間もしっかりと守ることが大切です。授業中に多少うるさくなってしまっても、授業の最初と最後はきちんとあいさつすることを徹底するようがんばってみましょう。このようなことを数週間続けてみると、効果が出てくるはずです。

自分の生活スタイルを見直す

学校での生活だけでなく自分の生活スタイルも見直してみましょう。朝方の人は、朝早く起きて夜早く寝ることができるように、夜型の人は、次の日に負担がないように教員自身の1日の時間割を見直してみることも大切です。

私は、常に教材研究をしていました。この事象は授業で使えるかなと思いながら旅行もしていますが、まったくオフにする時間もあります。自分の1日のルーティンを書き出してみて、どこで休むかを決めるのも1つの方法です。スイッチオンとオフを切り替えて1週間過ごしてみてください。何らかの解決の糸口が見付かると思います。

辞めたいと思ったときにちょっと考えて③〈長期的解決編〉

長い目で教員生活を見たときに、2つのことの改善を試みることを勧めます。

授業がうまくなる

まず、授業がうまくなることです。これはすぐにできることではありません。でも努力していれば必ず子供たちが主体的に取り組める授業をすることができるようになります。区や都の研修会に参加するなどして、ヒントをいろいろもらい、自分の授業で試してみましょう。授業研究をしっかりやっている教師とそうでない教師の差は大きいのです。

40代を過ぎてからでも授業をしっかりやりたいと気付いたら教科や領域を決めて研修に取り組んでみましょう。チャンスはいつでもあります。そして、校内研などで進んで授業を引き受けてチャレンジしてみてください。失敗を気にすることはありません。人に授業を見てもらうことは一番力が付きます。ぜひやってみましょう。

体力を付ける

もう1つは、体力を付けることです。私は、副校長に着任したときに自宅から遠くの勤務地になり、しかも激務であることを思い、スポーツジムに通い始めました。そして今でも通い続けていますが、あのときに運動を始めてよかったと思っています。ジムに行かなくても、走っているという先生も意外に多いようです。最後は基礎体力がものを言います。体が弱いと気分も滅入ってしまいます。どんな仕事も体が資本です。ぜひ長い目で体力づくりをやってみてください。ストレス解消にもなり、子供と一緒に運動したいと思うようになるかもしれません。

構成/浅原孝子 イラスト/有田リリコ

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