不登校【わかる!教育ニュース #53】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第53回のテーマは「不登校」です。
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「不登校小中学生の成績評価は、その子が欠席中に行った学習の成果を考慮できる」
ひた向きに努力していることが認められないままでは、心が折れそうになるもの。学校でみんなと同じように勉強できなくても、学校以外の場所で懸命に学んでいる子どもだって同様です。その努力は、きちんと評価されてきたのでしょうか。
「義務教育段階の不登校の子の成績評価は、その子が欠席中に行った学習の成果を考慮できる」。文部科学省は8月29日付で改正した学校教育法施行規則に、はっきりそう記しました(参照データ)。これは、自宅や教育支援センター、フリースクールなど学校以外の場所で学んだことが一定の要件を満たせば、成績を付ける時の評価対象にできる、ということです。
「一定の要件」は、学習の計画や内容が在学校のものに沿っていること、学校と保護者、教育支援センターなどが連携してその子の状況を把握していること、学校が訪問指導などで子供の状況を継続的に把握していること、です。子供を学校から切り離すのではなく、関わりを保つことがポイントです。
どういう学習が対象になるのでしょうか。文科省はいくつか例を挙げています。例えば、1人1台端末を通じ、学校の授業にオンライン参加。学校が届けたプリントや実技教科の作成キットで学ぶ。フリースクールと学校が連絡を取り合い、子供について定期的に報告書をもらい、学校の課題や定期テストに取り組んでもらう、といったことです。
2022年度の不登校小中学生は計29万9048人で、過去最多を更新
不登校の子はここ10年連続で増えています。文科省によると、2022年度は小中学生で計29万9048人に上り、過去最多を更新。一方で、スクールカウンセラーや教育支援センター、民間の支援団体など、学校内外で相談・指導を受けた不登校の子は、61.8%に当たる18万4831人います。
「児童生徒の学習意欲に応え、自立を支援する上で意義が大きい」。文科省は2019年10月に出した通知で、学校以外で学んだ成果を評価する意義をそう説き、校長の判断で指導要録上の出席扱いにもできる、と伝えました。でも、例が少ないのが実態です。
22年度に学校外で相談・指導を受けて出席扱いになった小中学生は、3万2623人。自宅でICTなどを活用した学習活動が、出席扱いになった子も1万409人にとどまります。
この状況を打破するため、文科省は今回の改正で19年の通知内容を法令に明記し、学校外の学びを評価の対象にする流れを促そうとしました。2023年3月にまとめた学びの保障の観点からの不登校対策「COCOLOプラン」で言及し、同年6月の政府の骨太の方針でも、「教室外の学習成果の成績反映を促すための法令上の措置」をすると盛り込んでいました。
学校に行けなくても、意欲を失わずに学び続ける子どもにとって、日々の努力に目を向けてもらえるのは励みであり、「自分の存在を認めてもらっている」という安心感になります。それは、個々の未来につながっていくと思います。
【わかる! 教育ニュース】次回は、9月30日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子