教育委員会経験者が伝授! 教員採用試験の面接&模擬授業で合格をゲットするには!?

近年、教員採用試験受験倍率の低下が物議を醸しています。しかしながら教員という職業は、将来日本を支えていく「人財」を育てるという、責任とやりがいがある尊い職業でもあります。今年、果敢に採用試験に挑まれる学生の皆さんに敬意を表すると同時に、情熱をもった若き先生がたくさん誕生してくれることを願ってやみません。教育基本法にもあります通り、教育の目的は「人格の完成」を目指すことです。この崇高な目的を達成すべく、採用する側はどんな人に教育者になってほしいと考えているのかを、お伝えしていきたいと思います。

1 採用は都道府県単位。時期と試験内容を必ずチェック

教員採用試験は各都道府県単位で行われています。昨今の教員のなり手不足の傾向から、現在は多種多様な選考方法が行われています。
まずは、あなたが受験する都道府県では、どのような選考方法をとっているのか、しっかり確認しておきましょう。募集時期や試験の方法、開始時期なども自治体によって異なりますから、注意が必要です。各都道府県教育委員会のホームページに掲載されていますから、熟読しておきましょう。

2 なりたい理由より、採用後の意気込みが読み取られる

堂々とした自信が声や動作に表れているか!

昨今の教員採用試験では、教職教養や一般教養などの深さよりも、その受験生の人間としての深さがより一層重視されている傾向です。つまり、知識重視よりも「採用後、この人は教員として子どもたちの前に立てるか」という視点と言えるでしょう。その一つに、自信をもっているかということです。まだ教育実習数週間程度の経験しかないのに、教員としての職業に自信があるかと問われても、それは酷ではないですか?という声が聞こえてきます。しかし、合格する受験生に共通していえることの1つとして、この自信の有無があるのです。現在の教職課程の教育実習では、語弊を恐れずに言えば教科教育に偏り、配属学級と言えど「お客さん」状態で子ども観察に徹するという、言わば教員としての本当の魅力を感じることのないまま終えてしまい、指導案作成や授業準備などに追われ、子どもたちの実態に触れ、子どもたちと信頼関係を気付くことがなかなか難しいのではないでしょうか。そのような中、自分自身で得たこと、経験を糧に、自分には負けないものは何か、自分の強みはどこだろうかを自己発見してください。最初にも述べましたが、「自分は4月から教壇に立ち、子どもたちと共に伴走できる自信があります!」という旨をはっきり宣言しましょう。

簡潔明瞭にあなたの信念を語ることができますか?

あなたは何のために教員になろうと思いましたか?と聞かれると、思わず息をのんでしまう方も多いのではないでしょうか。教員採用試験合格を掴み取るためには、先に述べた「自信」の他、「何のために」ということを自分の口で語ることができることです。しかし、「子どもたちの未来のため」とか「子どもたちの学力向上だけでなく、生きる力を伸ばしたいため」などでは抽象度が高すぎます。つまり、「~未来のため」に自分には何ができるか、何を使命と自覚しているか、「~生きる力を伸ばしたい」だからどんなことが今の子どもたちにとって必要なのか。その後に続くべき自分の信念について述べましょう。ただし、自分の主観を述べることになるわけですが、その根拠(エビデンス)はどこにあるのかについて学んでおくことが対策の1つです。
必ず、受験する都道府県の教育大綱や「〇〇県の教育」「〇〇県教委の方針と重点」には目を通して自分の信念を構築しておきましょう。 

教員になったらやりたいことを熱く語ろう!

夢や希望を膨らませて教員を目指している皆さんには、たくさんの「やりたいこと」が、はちきれんばかりに胸中にあるかと思います。とても素敵なことで、そのわくわくを応援したい気持ちでいっぱいです。教員採用試験では、志望理由の他に、採用後のイメージをしっかり持っているかどうかという視点でも面接、小論文、模擬授業などで測られます。合格者の共通項として、「やりたいことをしっかりもっていること」が挙げられるのです。ここで注意したいのは、自己実現の要素も大切ですが、「教育公務員は全体の奉仕者」とあるように、「自分の職業として」という前提の上で、まず先に論述すべきは「子どもたちのため」という気持ちを前面に出して話をすることです。自己満足のために教員になろうとする人は、まずいないでしょう。しかし、社会へ地域へそしてなにより目の前の子どもたちのために、どんなことに尽力したいかという視点で、具体的(例を出しながら)に語ることが大切なことです。

3 要練習!模擬授業では何を語るべき?

自治体によっても異なりますが、模擬授業という試験があります。例えば、「帰りの学級活動で、明日の遠足の事前指導を行ってください。」「最近、あなたの学級で他人のことを冷やかしたり、からかったりする言動が一部の子どもに観られます。学級全体に指導してください」といったものです。しかも与えられる時間は大体15分程度が多いのではないでしょうか。短いと思っても、架空のストーリーを瞬時に構想し、指導しなければなりません。この際何が面接官に観られているかというと、主に「適切な言葉」と「表情」の2つです。特に、この短時間でも目の前に実際に子どもたちがいないわけですから、時間を持て余してしまうと言った話を、受験後の志願者からよく耳にします。

笑顔で語ることができる大切さ

授業者が、日々仏頂面をした先生であり、言葉も少なく目の前にいるという状況(雰囲気)は、学級集団をつくるうえで当然マイナスに作用します。模擬授業では、以下の3点に留意することが合格のコツです。

 まず大きな声で全員に向かって話をしているという意識があるかどうか
 目で伝えるといいますが、子どもたちの方を向いて視線を動かしつつ、そして模擬授業をする教員も、うなずきながら話をしているか
 自身で全て喋ってしまう説話になっていないか、つまり子どもたちにもクエスチョンを投げかけながら、考えさせる場面を設けているか

そして何よりも、笑顔で子どもたちに向き合えるかが鍵となります。どのようなパターンが当日出題されてもいいように、「叱る・説諭」するパターン、「ほめる・称賛」するパターンといった、場面指導を想定し、オンライン・ミーティングで、第三者に観察してもらうことを、繰り返し練習しておくことです。

昨今の教育時事に対するあなたの考えをまとめておこう

教員の働き方、教員のなり手不足、不登校やいじめ認知件数過去最高更新などメディアでも報道されている事案についてもそうですが、面接等で問われた場合の最大の注意点は、肯定的に受け止め、前向きな回答をすることです。いわゆる現状批判に終始せず、問題に対して建設的回答を用意しましょう。また、「主体的・対話的で深い学び」のある授業にするための工夫は何か、個別最適な学びと協働的な学びについて、どう実践していくか、探究的な学習をどう進めていくか、ウェル・ビーイングの確立、教科担任制や複数担任制などアンテナを張って置くことが大切です。この際、私見を論じるのではなく、法令や答申などを基盤とした回答になるよう、注意が必要となります。なお、教育基本法が改訂され、教育振興基本計画が策定されるようになり、昨年第4期方針が国から出されました。これをもとに、各自治体でも基本方針を策定しているはずです。受験する自治体の教育における教育課題が反映されたものとなっているかと思います。合格への必須アイテムとなるでしょう。

4 子どもを主語にして語れるかどうかが鍵!

面接を行うと、自分のことを中心に話をする人が多いように感じます。自分本位の㏚や回答では合格は難しいでしょう。教員という仕事は、相手(子ども)があっての仕事です。「自分は~」ではなく、「子どもたちは~」「子どもたちにとって~」というように、子どもたちをどう育てたいのか、目指す子どもの姿はどのようなものか、現在の子どもたちの実態と自身の熱意を込めて語りましょう。あなたが面接官なら、つまりビジョンも熱意もない人に、4月から子どもたちの前に立ってもらいますか?子どもが好きであることはもちろんですが、子どものために自分が特に何をどう頑張ることができるのか、「子どもまんなか」を核としたあなたの教職への熱意を思う存分伝えることです。

温厚で寛容な人

教員採用試験は教員になるために試験勉強をするのではなく、採用試験を通して、自身の知見を深めたり、子ども像について考えたりする絶好の機会です。今まで自信をもつこと、信念を具体的に述べられること、子どもを主語として語れるかどうかということについて述べてきました。総じてまとめると、教員試験を突破できる人の共通点は、子どもの気持ちになれる人と言えるでしょう。子どもの気持ちになれる、わかってあげられる大人というのは、往々にして子どもに寄り添い、寛容な人徳です。ぜひ、自分を採用しないと損をしますよと言わんばかりの堂々さと謙虚な気持ちで、面接に臨んでください。受験者の皆さんからの吉報を心待ちにしています。

イラストAC


安部慎也(あべ しんや)

NPO独立総合教育政策研究所 所長
公立中学校理科教員を19年勤め、その後、教育委員会事務局指導課主査兼指導主事を4年間。
現在は学校現場へ復帰。全国の有志の先生方及び文科省、教育行政等に関わる有識者の皆様をAdvisoryアンバサダーに迎え、NPO独立総合政策研究所を設立し、運営している。
全国の教育関係者とともに週末は講座を主催し、教職を目指す学生の方のサポートを無償で行っている。所属学会等は、日本学校教育相談学会、日本生徒指導学会、日本学級経営学会、日本教育評価研究会。資格・社会貢献として、初級教育カウンセラー、あそび庁アンバサダー、デジタル庁デジタル推進委員、エネルギー・環境理科教育推進研究所 認定講師を務め、著書には、内外教育(時事通信社)、「月刊生徒指導」(学事出版)、月刊指導と評価(図書文化社)、月刊学校教育相談(ほんの森出版)など。

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