【相談募集中】ADHDで自閉症の児童の対応に疲れて、もう限界です

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臨床心理士・公認心理師

大多和二郎

ADHDで自閉症の児童の言動に振り回されているという先生から、「みん教相談室」に相談が寄せられました。周囲からは今のままの対応で十分だと言われもするけれど、その日はカッとなって、思わずノートで頭をたたくという行動をとってしまったとのこと……。もう限界だと苦しむ先生に向けて、教員向け法定研修でメンタルヘルス研修の講師をされている臨床心理士・公認心理師の大多和二郎先生からのアドバイスをシェアします。

暴れている子供
イラストAC

Q.ADHDで自閉症の児童の対応に疲れ果ててしまいました。誰にも相談できません

ADHDで自閉症スペクトラムの5年生児童の担任をしています。日頃から暴言、暴力が激しく、今日、私の貸した色鉛筆を床に全て投げ捨て、私はカッとなって漢字ノートで頭をたたいてしまいました。

その後、本人からも頭をノートでたたかれ、正当防衛だから、悪くない! と。そうだね。おあいこやね。先生も言いすぎた、たたいたのも、ごめんね。と話をして、いっとき静かになり、ふらっと出ていき、廊下にいたので、待ってるね。と、声をかけると、その後教室に戻っていきました。

校長にも相談しました。本人が校長先生への相談ボックスに「ノートでたたかれました」と、紙に書いて入れています。校長には経緯と前後の流れを全て伝えています。

けれど、もう限界です。注意をすれば、私の手の甲を鉛筆で刺し、ロッカーに入り込んで出てこない、そのまま寝る、起こすと暴れる。勝手に下校する。教室の物を壊す。

カウンセラーさんにもみてもらい、巡回相談の先生にもみてもらい、先生の指導でいいです、と言われ、周りの先生からも表情が穏やかになった、あいさつを返してくれる様になった、など言われますが、家に帰ると涙が出ます。

学習もしたりしなかったり、ゴロゴロと遊んでいるだけの日もあります。通常学級にはいけず、朝から帰るまで私と一緒にいます。私も人間です。今日は人生で1番キレました。何を言ったかも記憶にありません。ただ、振り向きざまにノートでパン! と、頭をたたいた瞬間だけ覚えています。その後、たたきかえされて、はっとして。

朝からゲームをしていて、終わる時間になってもやめず、声をかけても切り替えられず、色塗りの課題も指示に従わず、色鉛筆は引き出しにあるのに「ない」と言うし、貸したら床にたたきつける。

何かが私の中で壊れました。誰にも相談できません。

(カーブミラー先生・女性・30代)

A.最低限のルールを決めて対応することをおすすめします

特別支援学級の担任をしている先生と理解しました。ADHDで自閉症スペクトラムの5年生の児童との関係についてのご相談ですね。

自分のペースやそのときの感情での言動が多く、多動、不注意、衝動的という発達障害の「特性」を理解しているつもりでも、教師の指示に従わなかったり、自分のペースでやりたいことをやったり、言いたいことを言ったりする子供と1日中一緒にいるということが毎日続くと、体力的にも精神的にも疲弊してきますよね。そして「何かが私の中で壊れました。誰にも相談できません」ということで、限界を感じているのが今の気持ちですね。

カウンセラーさんや巡回相談の先生からは「先生の指導でいいです」といわれても、限界を感じている以上、このまま今のようなやりかたではやっていけないですよね。「ぐっと感情を堪えての日々の対応」を褒められても、うれしいことではありませんし、これ以上は難しいと思います。

「カッとする」場面は日々たくさんあっても、「ぐっと堪えつつ、丁寧に対応をする」繰り返しですから、児童は教師の心の中の感情の嵐はあまり感じていないと思います。本人としては、学校に来てマイペースに行動している自分に対して「対応してもらえる」「構ってもらっている」という体験で、「教師を振り回している」という感覚は持っていない可能性があります。そして客観的視点では、教師の心の嵐を見なければ「児童に丁寧に対応しているいい指導」に見えてしまうかもしれません。

私は、最低限のルールを決めて対応することをおすすめします。本人と話して「最低限の二人で決めたルール」とします。ルールはあまり多くないほうが良いと思います。ちょっと頑張れば守れそうなルールを決めて、児童がちょっと頑張って守ろうとしている姿を見せたら、「よく頑張ったね。とてもいいよ」というようにしっかりと褒めます。無視しようとしたら「約束したよね」と目を見て静かに力強く言います。

ただひたすら感情を堪えて対応するのではなく、「教師としてのゆるがない態度」を見せていくことで、「振り回されているという気持ち」は減っていくと思います。たとえそのときには児童が言うことを聞かなくても、教師の一貫した態度を見せ続けることは自分自身にとって大切です。自分の基本的態度を日々示すことで、教師としての自分の心を守ることになります。


みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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