NIE【わかる!教育ニュース#52】

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わかる!教育ニュース #52
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第52回のテーマは「NIE」です。

NIE活動で子供の読む力や理解力などが伸びたと感じる学校が約9割

教育現場で新聞を活用する「NIE(教育に新聞を)」という言葉を、耳にしたことがある人は多いでしょう。ただ、学習に役立ちそうだけれど、どんな効果があるのか分かりにくいとも思っていたのではないでしょうか。
NIE活動で子供の読む力や理解力などが伸びた。そう感じる学校が9割近くあることが、日本新聞協会が1~2月に行った調査で分かりました(参照データ)。まず調べたのは、子どもの「聞く力・話す力」「読む力」「書く力」「理解力・考えを深める力」「主体性」の5つが、NIEを通じて伸びたかどうかです。NIEを実践している小中高校のうち581校の回答を見ると、読む力が伸びたという学校は94%。理解力も93%と、すべての項目で9割前後ありました。最も低かった聞く力・話す力でも87%に上ります。
実践頻度も重要。NIEを週1回以上行っている学校は、「年間に数回」「2~3か月に1〜2回程度」など頻度が低い学校と比べ、どの項目も「大幅に伸びた」という割合が高い傾向でした。
具体的にどんな変化があったのでしょうか。自由記述には「語彙が増え、内容を正しく理解できるようになった」「要点を押さえる力が付いた」「長文への抵抗感が薄くなった」「要約や感想を限られた字数と時間でまとめられるようになった」「構成を工夫して書けるようになった」などとあり、言葉や文章に対する感覚が研ぎ澄まされる効果が窺えます。

NIE実践校の91%が教員の指導力も伸びたと回答

NIEは、新聞を教材として活用する他、情報を正しく読み解く「メディアリテラシー」の育成や新聞作りも含めた活動です。同協会によると、1930年代に米国で始まり、日本では85年に静岡で開いた新聞大会で提唱。以来、各地で広がり、記事を切り抜いて意見を書く、記事を題材に1分間スピーチ、社説の要約、新聞に載った人物の生き方を学ぶ…など、多様な取組が展開されています。現行の小・中・高校の学習指導要領にも、新聞の活用が随所に書き込まれています。
NIEは、教員にも効果があるようです。協会の調査では、実践校の91%が教員の指導力も伸びたと答えました。実践頻度との相関でも、子供のケースと同様、頻度が高いほど「伸びた」という割合が高い傾向です。
具体的な変化を尋ねると、「授業の構成力が付いた」「社会情勢と教科の学習を結び付けた指導を意識するようになった」など、教える上での工夫につながったと分かります。協会の担当者も「NIEが指導力向上に資することが明らかになった。社会の出来事と関連させて授業を進める重要性も確認できた」と分析しました。 新聞は、後の世に向けた時代の記録だけではありません。様々な人生、人間の喜怒哀楽、社会の空気と課題を、今生きている人々に伝える媒体です。だからこそ、子供たちが教科書で学ぶ知識と現実の社会を絡めて考える、生きた教材になればと思います。

【わかる! 教育ニュース】次回は、9月15日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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