【相談募集中】高学年の学級経営をする上でのコツが知りたい
「高学年の子どもが伸び伸びとした学級経営を行うにはどうすれば?」という相談が「みん教相談室」に寄せられました。これに対し、愛知県公立小学校教諭・八神進祐先生は3つのポイントを挙げて学級経営のヒントをアドバイスしました。その内容をこちらでシェアします。
目次
Q. 高学年の学級経営をする上でのコツを教えてください
どうしたら高学年の子どもが伸び伸びとした学級経営ができるのか悩んでいます。きちんとさせねばならないところは、きちんとさせるために規律を大切にして学級経営をしてきました。しかし、どうしても、そうなると静かになり過ぎてしまったり、先生と子どもの思いのズレから、学校に行きたくないとなってしまいました。
クラスにはやんちゃな子もいて、昨年度から、「死ね」などの言葉を教師がいないところで言うなどのいじめが散見されるような学級でした。校長先生や教頭先生など、たくさんの人に見守られながら指導してもなかなか改善せず、見えないところで陰口やいじめをするなどの行為も見られ、伸び伸びと育てたくとも、どうしたら良いのかわからぬまま1年がすぎてしまいました。
勢いはあって、そこが強みだったのですが上手く生かせず……。クラスや子どもの実態によって多種多様なのは承知の上ですが、どのような手立てをとれば良かったのか、今でも気になっています。皆さんが、高学年の子どもの学級経営をする上でのコツを教えていただけないでしょうか。よろしくお願いします。
(RK・30代男性)
A. 私が実践している学級経営3つのコツをお伝えします
RK先生 はじめまして。八神と申します。エネルギッシュな子どもたちが多い学級であり、立て直しを期待されてRK先生が抜てきされたのだと思います。
高学年の子どもたちは、思考力や活動レベルが高く、より自由な取組が可能です。しかしその分、時には不適切な言動をすることもあるでしょう。それも成長の過程と捉えながら、我々は冷静な指導が求められます。とはいえ、言うは易く行うは難しです。RK先生のおっしゃるように、規律と自由、伸び伸びとした活動の絶妙なバランスを保つのは非常に難しいと思います。
僭越ながら、私から3つの提案をさせていただきます。
①指導は、心穏やかなときに
ある児童の不適切行動の最中や直後の指導では、その子の気持ちは逆立っているため、何を話しても担任の思いは届かないことが多いです。まずは、物理的にも精神的にも、周囲の子どもたちの安全を確保しつつ、その場はいったん落ち着くよう促し続けましょう。
時間が経って、本人が先ほどの不適切行動をケロッと忘れている瞬間、その子から担任に好意的に近づいた瞬間、ここが最大のチャンスです。声のトーンも柔らかく、以下のやり取りをするのはどうでしょうか。
そういえば、あのとき、「死ね」って言ってたよね。何が嫌だったんだっけ?
あー、あれは○○が俺の言うこと聞かなかったから、むかついたんだよね
おーおー。そういうことかあ。なるほどね。でも「死ね」はよくなかったなあ。そう思わない?
まあ、たしかに……
やめられそう?
はーい。分かりました
よーし、頼んだぞ
もちろんこれらのやりとりは、担任と児童の関係性や指導スタイルにより異なります。ただ、心穏やかなときこそ、指導は届くものなので、最適なタイミングを見極めて、上記のような小さなやり取りを粘り強く続けることが肝要です。また、暴言を吐かれた子へのフォローは必ず行いましょう。
そして、「死ね」という言葉はやはり見過ごせません。言われた本人だけでなく、耳に入ってくる周囲の子どもたちの心をも大きく傷つけます。そのような場合は、死について考える場面を作ってもよいかもしれません。
例えば、
先生はね、以前、大好きなおじいちゃんを病気で亡くしました。なので「死ね」という言葉を聞くと、あのときの悲しみが思い出されてしまうのです。似たような思いの子もクラスにいる可能性はあります。なので、「死」という言葉は簡単に誰かに言い放ってほしくないのです
と伝えてみてはどうでしょうか。また、暴言を吐く児童も何かしらの困り感があるものです。例えば、勉強がわからない、認められたい、お母さんに褒められたいなど、様々な理由が考えられます。これらの原因に目を向け、サポートすることも重要です。
子どものころに、相手を傷つけるような不適切行動をしてしまったがために、その子が大人になってから、罪悪感に苛まれることもあります。難しい問題ではありますが、複数の教師と連携して、粘り強く対応し続ける必要があります。
②規律意識のアップデート
「規律」という言葉は、悪い方向に捉えれば、「束縛や押しつけ」と感じる子もいるでしょう。そこでおすすめしたいのは、「自身で考え、自身と約束させる」ことです。
- 授業の始まりには、どのような態度で臨むとよいのだろう
- 清掃活動は何が目的なのだろう
- まわりにも良い影響を与えられる人になるには、どうすればよいのだろう
一度、それぞれ考えさせ、隣の席の子同士で言葉にする活動をさせてみてください。口に出すことで、行動は少し変わるものです。「先生から言われたからやる」ではなく、「自分で決めたからやる」に意識を変えられたら大成功です。
子どもたちは失敗しながら成長していくものです。自分で決めた約束も破ってしまうことも多々あると思います。ですが、成長を信じて応援し続けていけば、よい流れが生まれるはずです。人は、応援してくれる人のことを嫌いにはなりません。
③きれいな環境で心がきれいになり、言動も変わる
きれいな環境づくりも大切です。私が心がけていることの一つに、「黒板ピカピカ」があります。授業後に黒板消しで全体を消した後、マイクロファイバーぞうきんで拭き上げます。すると、新品のようにきれいになります。毎授業後ではないにしても、この意識は常に持つようにしています。
子どもは目に入るものに影響を受けるものです。新品のノートを使うとき、「丁寧に文字を書こう!」と、やる気が出るように、ピカピカの黒板を目の前にするとやる気が上がります。
では、誰が黒板をピカピカにするのがよいでしょうか。それは、教師自身です。係の子を作り、やらせることは簡単ですが、教師自らが率先して、その姿を見せること自体に教育的効果があります。また、きれいにした後「ふぅー、きれいになって気持ちいい!」とつぶやくことも忘れずにしたいです。教師の言った「きれい」「気持ちいい」という言葉を子どもたちは聞いています。心に届いています。
環境はきれいになり、心も気持ちよくなったことを意識させる。その環境下では、「死ね」などの暴言は出にくくなります。黒板だけでなく、ほうきなどで教室をさっと清掃するのも効果があります。ゴミ箱のゴミも溜めすぎず、こまめに捨てたいものです。遠回りのようで、これが一番の予防になります。
以上、3つ提案させていただきました。子どもたちにとって無理のない規律は、心地がよく、安心が生まれると思います。また、安心できる環境だからこそ、子どもたちは個性を出して伸び伸び過ごせるものだと思います。
子どもたちにとっても、RK先生にとっても、よい一年間になるよう心から願っております。ご質問ありがとうございました。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。