【相談募集中】子供の「できない」にばかり目がいってしまう
子供の「よくない部分」ばかりが目につき、苛立ってしまう自分に自己嫌悪を感じているという先生からの相談が、「みん教相談室」へ届きました。ここでは、長年小学校教師を務めたのち、現在は研修講師として活動している川上淳子さんの回答をお届けします。
目次
Q.子供の「できない」にばかり目がいってしまいます
子供の「できない」にばかり目がいってしまいます。
今年度から5年生を担任しています。愚痴になってしまいますが、昨年度は担任の先生方がかなり自由な方々で、指導事項も無視してやっていった挙句、転職していってしまいました……。その過程を見ていたため、この子たちに良いイメージがないまま受け持ちました。そういった経緯があり、私の個人的な感情によって、子供たちをみる目が変わってしまいます。
子供たちは本当に素直でピュアで一生懸命で良い子たちです。しかしふとしたときに、授業の態度や提出物や考え方等、情けない面も見えてきてしまいます。「この子たちはそういう面もあるけど、〇〇はとても良いから」と考えようとしても、どうしても昨年度の担任団の適当な受け渡しに目がいき苛立ちが勝ってしまいます。もちろんその方々のおかげで、この素直さ等の良さがあるのかもしれません。でも、教科書の内容を踏襲していなかったり、系統的なものが一切身についていなかったりと、粗さのほうが目についてしまいます。
子供に罪はないことはわかっていながらも、どうしても苛立ってしまう自分の無力さというか精神の幼さで、一生懸命頑張る子供たちへの罪悪感がものすごいです……。何かアドバイスいただけましたら幸いです。(管理職には面談の際に伝えています)
(な先生・20代男性)
A.先生自身の自己肯定感を育み、指導に尽力できる教師に
昨年度の担任団を「教科書の内容を踏襲していない」「系統的なものが一切身についていない」と判断されています。教科内容を系統的に熟知されている相談者さまは、学級経営や学習指導に尽力できる先生だと拝察しました。そのような能力をもっている先生には、ぜひ、先生自身の自己肯定感を育んでほしいと思います。
私も初任の5年担任時に同じ経験をしました。暴力を振るう児童におびえ、学習面でも課題が山積み。学生時代から「漢字と四則計算が学習の要。それが人間関係に影響する」と考えていた私は、学習に向き合うための状況を把握した後、何に重点を置いて学習すべきかを児童に知らせました。具体的には、次のようなことです。
- 4年生までの既習漢字のうち、ランダムに選んで読み書きの習熟度をテスト➡既習漢字が定着していない児童へは5年の漢字だけでなく復習の課題を与える➡漢字テストは朝自習で頻繁に行い、定着を促す。
- 音読は国語だけでなく、算数・社会・理科でも必ず行う➡漢字が定着するとすらすらと読めるようになった。
- 九九の習熟度(一から九の段まで正確に覚えているか)の把握➡授業の初めに復唱。朝自習時抜き打ちで九九テスト➡単元テスト返却時に学級通信を出し、下部に四則計算の正確さや文章題の読み取りの様子などの項目を設け、〇△レで印をつける➡保護者へも知らせ、家庭学習での取組を促す。
- 文章題を苦手とする児童が多かったため、問題文を解くカギとなる数字に〇をつけ、問題文の状況を図式化することを繰り返して行う➡解き方がわかるようになり、正答率が上がった。
- 算数は重要項目や公式などを短冊に書き、教室側面に常に掲示。(テスト直前に外す)
- 当時印刷はボールペン原紙に書いてから印刷する方法で手間がかかったものの、学級通信を小まめに出し、学習や行事等での様子を報告。次第に保護者から学習への協力が得られるようになった。それぞれの児童のよさを児童・保護者とともに共有できた。
このような取組から成績が徐々に向上し、学級内のトラブルは激減していきました。
その後、毎年のように「ちょっと大変な学級」の担任となり、工夫を続けたところ、40代から『教育技術誌』に実践を継続して掲載していただきました。初任からのがんばりが評価された教員人生でした。私の経験から実践のヒントを見つけていただけると幸いです。
先生の現在地は「PDCAサイクル」のどこに位置するでしょうか。児童の実態を目の当たりにしながら、足踏みをしているわけにはいきません。一日も早く、指導の工夫改善のプランを立てる一歩を踏み出しましょう。児童の変容を促す働きかけは、先生にしかできません。児童にマイナスの状況があればあるほど、担任の指導の成果は如実に表れてきます。
前担任の至らなさばかり気になってしまうという気持ちもよくわかります。ですがここは目線を変えて、「何かを工夫すれば改善できる」という姿勢に切り替えてみませんか。来年の担任団に胸を張って児童を送り出すために、今できることを考えるのです。
すべての学習指導、生活指導についてどう指示し、どう展開させていくのか。腕の見せ所です! また、先輩や年齢の近い先生方に相談してみるのもお勧めします。これまで得た教職の知識をさらに広げ、実践されることを期待しています。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。