【相談募集中】平仮名の読み書きができない子、何でも口に入れてしまう子……支援員ができることはありますか?

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支援を要する子への適切な対応ポイント記事まとめ

兵庫県公立小学校校長

関田聖和

小学校で特別支援教育の支援員をしている方から「みん教相談室」に相談が寄せられました。担当するクラスには、平仮名の読み書きができない子や何でも口に入れてしまう子などがいて、支援員としての関わり方に悩んでいるそうです。これに回答したのは兵庫県公立小学校校長で公認心理師 特別支援教育士スーパーバイザーの関田聖和先生。大切な3つの支援ポイントを挙げてアドバイスをしたその内容をシェアします。

イラストAC

Q.特別支援学校相当の子どもたちに、支援員としてどう支援すれば?

小学校で特別支援教育支援員をしています。自閉症や情緒障害クラスで6年生が3人(内1人は去年から不登校)と3年生が1人です。6年生の1人(Aさん)は、平仮名も全ては覚えていないですし、言葉も少なく不明瞭な話し方が多く、偏食もすごいです。本来なら特別支援学校相当です。学校でも、ほとんど勉強にはならず遊ぶか、自分の好きなことをしているだけです。外国語や音楽などで通常学級に行っても、寝ています。支援しようにも、平仮名も全てわからないのですから、やらせる事がないですし、また本人も、やりたがりません。

もう1人の6年生(Bさん)も、算数などは先生がドリルを1ページだけさせたら遊んでいます。ですので5分くらいしか勉強しません。3年の子(Cさん)は、何でも口に入れて噛んだり、机も舐めたり水道の水を出し指で、蓋をするようにして飛ばすなどして、水浸しにします。「人にかかると濡れて風邪を引くから、ダメだよ」と言っても「何で? いいやん、乾くし」などと言って毎日かならずします。運動場の砂も触ってペロっと舐めるのも、必ずします。 どう話せばよいでしょうか? また平仮名なども難しい子には、どう支援すればよいでしょうか?

(おれんじ大好き先生・40代女性)

A.担任と3つの情報共有をし、3つの支援ポイントを念頭に置いてください

特別支援教育支援員のおれんじ大好きさん、相談をいただきありがとうございます。
支援員の方で「どう支援すればいいのか」と考えてくださる姿勢に感謝します。本当にありがとうございます。
3名のお子さんを直接観察しているわけではないので、的を射ているかどうかわかりませんが子どもを想像しながら感じたことを綴ってみます。

3人に共通すること

自閉症や情緒障害クラスということですので、教科学習だけではなく自立活動の学習などで何かしらの学びの機会があるのかなと考えます。3人に共通する3つの支援のポイントは

  1. 言動にはできるだけ一喜一憂しないこと
  2. 本人と保護者の願いを大切にする
  3. 学習の内容と支援の具体を知る

これらは「みん教相談室」で私が回答した下記の記事内で詳しく説明しています。あわせてアクセスしてみてください。

交流学級での学習時間、支援員としてどのように支援をすれば?
不適切な言動を繰り返す生徒に、支援員として何ができますか

6年生のAさんですが「平仮名も全ては覚えていない」ということは、覚えて読んだり書いたりすることができる文字はあるということでしょうか。文字を思い出しにくかったり、促音が抜けたりなどのひらがなを書く上でつまずいている点はどこかなと考えてみます。

ひらがなが書けないからただちに繰り返し練習をするのではなく、どんなところでつまずいているかのアセスメントが必要です。そうでないと、どれだけトレーニングをしても効果を発揮しないことがあります。

読み書きが苦手な子どもへの<つまずき>支援ワーク」(竹田契一 監修/村井敏宏 著 明治図書出版)には「ひらがな単語聴写テスト」が掲載されていて、つまずきの傾向を見ることができます。使ってみてください。

また、文字を書くつまずき要因として以下のようなことが知られています。おおむね、次の4タイプに分けることができます。

1 文字と音が一致していないタイプ(音韻認識の弱さ)

  • 文字を思い出しにくい
  • 似ている音に書き間違える(だ・ら、で・れ、ど・ろ)
  • 拗音が正しく書けない
  • 促音が抜けることが多い
  • 拗促音が正しく書けない

2 見る力や手先を動かす力が弱いタイプ(空間認知・視機能の弱さ・不器用)

  • 文字の形がうまくとれない
  • ななめ線の方向が分かりにくい
  • 鏡文字を書いてしまう
  • 線の交わりが分かりにくい
  • 文字の大きさ・バランスがうまくとれない
  • 形の似ている字を書き間違えやすい
  • 促音・長音が抜けることが多い

3 多動性・衝動性からつまずくタイプ

  • 文字をゆっくり丁寧に書けない
  • 文字の形、文字の大きさ、文字のバランスが整わない
  • 枠からのはみ出しが多い
  • 一画足りない、多いなどの不注意な誤りがある
  • そもそも苦手なことに対して取り組みにくい

4 集中の弱さや不注意からつまずくタイプ

  • 濁点の付け忘れ
  • 促音の付け忘れ
  • 一画足りない、多いなどの不注意な文字の書き間違い

練習のワークでは下記のシリーズを使っていました。

・「読み書きが苦手な子どもへの<基礎>トレーニングワーク」(竹田契一 監修/村井敏宏・中尾和人 著 明治図書出版)
・「改訂 漢字が苦手な子どもへの個別支援プリント ステップ1」 関田聖和 監修/深澤英雄・岸本ひとみ・岡篤・濱﨑仁詩 著 清風堂書店)

わが子はこれで遊びながら学びました。

・【iPadアプリ】読み書きが苦手な子どもへ ~ 音韻認識力をはぐくむ!ひらがなトレーニング

言葉も少なく不明瞭な話し方が多いという現状は、言葉を覚えていなくて言葉を探しながら話すからなのか子どもを見ていないので、詳しくはわかりませんが、下記の参考サイトに掲載されているような構音指導が必要な状態かもしれません。一度下記をご覧ください。

ネットで学ぶ発音教室(独立行政法人「国立特別支援教育総合研究所」)

偏食については、保護者と相談しながら食べられるものを確認して楽しく喫食することが大切だと考えています。特性のため、好き嫌いなどもあることでしょう。偏食だからいけないということでもありません。給食に関しては下記を参考にしてもらえると幸いです。

給食で苦手な食材がある子への対応|6月【特別支援学級の学級経営】

ほとんど勉強にはならずに……とのことですが、「本人と保護者の願いを大切に」しながら、「学習の内容と支援の具体を知る」ことが大切だと考えています。そのためにも、担任の先生と以下の3つの情報共有は必要ではないでしょうか。

  1. 学習内容
  2. 学習内容に対してのつまずき予想
  3. 支援の具体、支援の仕方

そして個別の指導計画や個別の教育支援計画を確認することです。寝てしまうことに対しては、本当に疲れているのか、その場に来るとなぜか眠くなってしまうなど、さまざまな要因が考えられます。外国語や音楽などの学習では、専科の先生と上記の3つを共有し、この時間で「何を学ぶのか」「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」を考えることが必要になります。少しでも本人が興味をもって学習が成立するような調整が必要になるということです。

また学習は、文字を書くだけではないですよね。もう1人の6年生Bさんにも同じようなことが言えそうですが、タブレットや支援カードなども使いながら、できることをいっしょに取り組むところから始められると良いのではないでしょうか。こちらもそれぞれの先生方と情報共有をしながら支援をすることになります。

3年生のCさんもまだ口で何か確認したかったり、水を触って得られる感覚遊びが必要だったりするのかもしれません。状態を保護者へ担任の先生からお伝えしてもらい、感覚遊びを取り入れた自立活動を取り入れると良いかもしれません。こちらは、「感覚統合」という言葉を手掛かりに調べると、たくさんの情報を得られることでしょう。その中で、このお子さんに合った手立てに取り組むことができるといいですね。

でもここまで綴った支援の準備は、担任の先生の仕事の範疇になると考えています。ですので、支援員としては、担任と上手にコミュニケーションを取りながら冒頭に綴った3つの支援ポイントと3つの情報共有をして取り組んでもらうことになります。

おれんじ大好き先生の奮闘に期待しています。

みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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