子供たちといっしょに読みたい 今月の本#4 平和について考える本

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子供たちといっしょに読みたい 今月の本 
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東京学芸大学附属小金井小学校司書

松岡みどり
子供たちといっしょに読みたい 今月の本  バナー

連載4回目のテーマは、「平和について考える本」です。世界の様々な地域で紛争が起こっているというニュースが日々流れてきます。8月は終戦の月でもあり、夏休み前や夏休みに平和について考えるきっかけにしてはいかがでしょう。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。

監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり

今月の本#4 教室のイメージ写真

目次

絵本

低学年の子供にも見やすく、分かりやすいのが絵本です。低学年から高学年まで、戦争と平和を考えるきっかけにしてみてください。

 

へいわとせんそう

『へいわとせんそう』

文/たにかわしゅんたろう 絵/Noritake 
ブロンズ新社刊

「へいわのボク」と「せんそうのボク」では、何が変わるのでしょう。同じ人やもの、場所を見開きごとに比べると違いが見えてきます。

松岡司書のおすすめポイント
平和と戦争を見開きで対比しています。シンプルな挿し絵はインパクトが強く、読んだ後も心に強く残ります。後半、「味方」と「敵」に描き分けられますが、味方の赤ちゃんと敵の赤ちゃんは同じ絵のように見えます。「味方」「敵」ってなんだろう。一度は手に取ってほしい、平和について考える絵本です。

 

戦争をやめた人たち−1914年のクリスマス休戦−

『戦争をやめた人たち−1914年のクリスマス休戦−』

文・絵/鈴木まもる 
あすなろ書房刊

1914年、第一次世界大戦中の最前線で戦う、ドイツの兵士たちとイギリスの兵士たちの本当にあった話。戦火のクリスマスイブの夜、戦場に銃声の代わりに歌声が流れるという「奇跡」が起こりました。

松岡司書のおすすめポイント
生きるか死ぬかという戦争中に、戦いを止める瞬間があるのだということに心が揺れました。今も世界のどこかで戦争が現実に起こっています。言語や考え方が違っていても歌が1つのヒントになるかもしれません。世界共通の歌や芸術などで平和が願えたらと思います。

 

ようこそ こどものけんりのほん

『ようこそ こどものけんりのほん』

絵/えがしらみちこ 文/子どもの権利・きもちプロジェクト 
白泉社刊

権利というと、一見難しいイメージがありますが、子供たちと子供に関わる大人を守る大切なもの。子供の権利のはじめの一歩を子供も大人も分かりやすく学べる絵本です。カバー裏には子供の権利条約ポスターを掲載。

松岡司書のおすすめポイント
生活に寄り添ったかたちで、子供の権利について分かりやすく紹介されています。読み聞かせにもおすすめです。「戦争に巻き込まれている子供はどうなのだろう」といった疑問なども生まれ、自分たちのことを子供たち自身で考えるきっかけになると思います。

小説

小説やノンフィクションは、高学年向けになります。ちょっと難しいかもしれませんが、戦争と平和をテーマにした学習とともに紹介してはいかがでしょう。

 

瓶に入れた手紙

『瓶に入れた手紙』

作/ヴァレリー・ゼナッティ 訳/伏見 操 
文研出版刊

イスラエルに暮らす少女タルの家の近くで、パレスチナ人による自爆テロが起こります。このテロをきっかけに、タルは、「憎しみ」ではなく「希望」を見いだすために、パレスチナ人に手紙を送ろうと考えました。手紙を瓶に入れ、ガザの海に流してほしいと兄に頼みますが、瓶に入ったその手紙を受け取ったのは……。

松岡司書のおすすめポイント
この小説が書かれたのは4〜5年前になりますが、今ニュースなどでよく耳にする地域が舞台になって描かれています。紛争が起きている地域を知るきっかけになるとよいと思います。「イスラエル人」「パレスチナ人」という見方から、お互いを1人の人間として見つめ合うタルとナイームの心の変化に注目しながら読むのもおすすめです。

 

平和のバトン 広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶

『平和のバトン 広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』

著/弓狩匡純 
くもん出版刊

原子爆弾が投下されてから80年近くになろうとしています。「このままでは、原爆のことが忘れられてしまう」と、勇気を振り絞って話しはじめた被爆者の声やその人たちが見た光景を、美術を学ぶ高校生が絵にして記録します。そのプロジェクト「次世代と描く原爆の絵」が2007年にスタート。証言者と高校生が何度も会って、1年をかけて1枚の絵にしていきました。

松岡司書のおすすめポイント
高校生が被爆をした人たちの話を聞くのはとてつもないエネルギーが必要で、逆に被爆した人たちが当時のつらい記憶を呼び起こすのも大変なエネルギーが必要になります。お互いのやり取りがていねいに描かれていて、原子爆弾のことは決して忘れないという姿勢が伝わり、胸に迫ります。テーマは重いですが、読みやすい本です。

● ● ●

 

松岡みどり

松岡みどり司書からのメッセージ
国語や社会の「平和」を扱った単元を学習した際に、それで終わりではなく、戦争や平和をテーマにした本を手に取るきっかけになるとよいと思います。現実には、世界のどこかで戦争が起こっていて、平和に向かっているとは思えません。しかし、平和を願う作品が多いので、子供たちに手渡していただきたい本ばかりです。子供たちに自分は関係ないと思わないで、知ることや考えること、自分にできることの支えになる本がいろいろあると感じてもらえるとよいと思います。

 

読書や本の情報が満載

ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/

取材・文・構成・撮影/浅原孝子

 

授業で使える312冊の絵本を紹介
『絵本で広がる小学校の授業づくり』書籍表紙

『豊かな心と思考力を育む
絵本で広がる小学校の授業づくり』

著/齊藤和貴(京都女子大学教授)

司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。

B5判/112頁
ISBN9784098402212

〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)

京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。

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