生成AI【わかる!教育ニュース#50】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第50回のテーマは「生成AI」です。
目次
授業での生成AI活用に、小中学生の保護者の37%が「賛成」
「チャットGPT」などの生成人工知能(AI)は今や、「使うか、使わないか」ではなく、「どう使うか」の段階になってきました。膨大なデータを処理し、文章や画像、音楽をつくり、長文の要約や企画のアイデア出しにも使えるため、仕事で活用されるようになっています。業務の効率化を見込んで導入する自治体も広がっていますが、教育分野での利用はどう考えられているのでしょうか。
学校の授業で生成AIを活用することに、小中学生の保護者の37%が「賛成」と考えていて、反対の21%を上回ることが、NTTドコモのモバイル社会研究所の調査で分かりました(参照データ)。
関東1都6県の小中学生とその保護者約600組に尋ねた結果ですが、実は最も多い回答は「分からない」の42.5%。保護者の年齢を基に、「50歳以上」から「34歳未満」まで5歳幅で5つに区切って回答を分析すると、「賛成」が最も多いのは50歳以上。一番少ないのは、34歳未満です。また年齢層が上がるにつれて、「分からない」が減るのも特徴。同研究所の詳細分析では、「分からない」という回答は、ICTスキルや学歴、収入が低いほど多い傾向もありました。
とはいえ、生成AIの利用率は授業以外を含めても、1割にも届いていません。小学生だと低学年で1.6%、高学年も2.5%。中学生でようやく8.2%に伸び、保護者全体の3.9%を上回りました。
「有効な場面を検証しつつ、限定的な利用から始めるのが適切」
うまく使えば教育効果を上げ、教員の負担軽減にもつながる反面、作文やレポートに安易に使われれば、子供の思考力や創造性に影響する。2023年5月、AIに関する政策の方向性を議論する政府のAI戦略会議は、教育分野での活用にそのような懸念を示しました。
文科省が同年7月、教育現場での活用についてまとめた暫定的な指針でも、積極的な活用には慎重です。「有効な場面を検証しつつ、限定的な利用から始めるのが適切」として、AIにまつわる懸念やリスクに対応できる一部の学校で試験的に取り組み、検証する必要があるとしました。ただ社会での広がりを見越し、情報の真偽を確認する「ファクトチェック」の習慣付けは、どの学校でも行うよう促しています。
何でも答えるように見える生成AIですが、実際は膨大な情報を土台に答えていて、ゼロから考えているわけではありません。問いがあいまいだと、誤りや偏りのある回答をします。だからこそ、ファクトチェックはもとより、人間だからこそできる問いを立てて、生成AIに的確な指示を出す力が欠かせません。 教育工学の専門家は「生成AIは副操縦士。操縦士は自分だと認識して使うこと」と説いています。授業で生成AIを活用するなら、学習そのもので利用するよりも、使ってみた上で、注意するべきことや人間でしかできないことを考えさせ、「正しく使う力」を培ってはどうでしょうか。
【わかる! 教育ニュース】次回は、7月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子