図工の時間、児童が納得して授業に臨む導入の声掛けとは?
図工の時間の最初に皆さんは何を伝えますか? 児童が授業をより楽しく、積極的に受けられるようにするために、教師側で意識づけすることができたらいいですよね。児童に声掛けをするとき、こんな考え方を下敷きにしておくとよいのでは…という、私の実践をご紹介します。
題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一
連載【いちばん楽しいアート】#02
目次
教師側の心構えとして
図工の授業においては、「技法を教える」と「表現したいという気持ちを伸ばす」という2つを意識することが大切です。 本来図工の表現活動は、時間も題材も材料も方法も自由であるべきものです。しかし、学校においてそれをしてしまうと、本当に自分で何かを表現しようと思ったときの引き出しが少ないまま義務教育を終えてしまいます。ある程度、技法や鑑賞する視点を伝えるために、単元(題材)を通して教える必要があります。それと同時に作る楽しさ、喜び、充実感、達成感を味わわせることも必要です。
児童が「納得」して授業に臨むために、最初に伝えておくべきこと
低学年と高学年で授業の始めに伝える事項は変わってきます。私は以下の順番で、図工の最初の授業で児童に伝えます。
低学年の場合
①「これ作ったらとっても楽しかったんだ!」「教室にお友達を呼んでみました」「この教室のここに飾りたくて」と、教師の「とても楽しかった気持ち」を児童に伝える。(役者になりきって演じる)
② 自分が「いいな!」と思えるものを作ること。必ずしも独自のアイデアである必要はなく、友達の作品をまねしてもいいこと。まねするということは「友達の作品が素敵だなと思えた」ということであり「自分の作り方と合わさってもっと素敵になるかもしれない」ということ。まねされるということは「まねしたくなるくらい素敵だな」と思われたということ。まねする前に一声かけて、皆で図工の時間を楽しむこと。
③ ただ、あくまでも授業の時間なので、声掛けや立ち歩き以前に、先生の話を聞き、決まりを守って作ること。
高学年の場合
① 本来図工は「自由に作る楽しさ」を味わう時間であること。
② 自由に作ることも良いが、表現の幅を広げるために技法を知ることも大切である。また、友達の作品を見るための視点も知っておく必要があること。
③ 学校の授業という特性上、「評価をするための観点」と「授業時数」という決まりがある。そのため教師側には「このような作品は良い作品」という基準があること。 また、「この単元は6時間で終わり」というような時間制限があること。
④ しかし、そうした制約の中でも十分に表現活動は楽しむことができる。一緒にいろいろな表現を見付けたり考えたりして、楽しんでいきたいということ。
何を行うにもそうですが、「自分が納得しているか」が積極的に活動するための活力となります。その後の表現活動を充実させる上で非常に大切です。 そして、「図工の授業で行わなければならない」という状況や気持ちを児童に悟られないくらい、「図工の時間が楽しくて、作品を作りたくてたまらない」という気持ちを前面に出して授業を行っていきましょう。
【著者プロフィール】
坂齊諒一●さかさいりょういち
1991年埼玉県生まれ。文京学院大学人間学部児童発達学科卒業。埼玉県公立小学校教諭として7年間勤務した後、2022年に一旦退職。翌年度から小学校、中学校教諭として勤務しながら、フリーランスイラストレーターとして活動を始める。企業や教育委員会からの依頼で絵を描きつつ、教員の働き方や図工の授業について研究をしている。