小5国語科「どちらを選びますか」全時間の板書&指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「どちらを選びますか」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:どちらを選びますか(光村図書・国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都葛飾区立渋江小学校・竹株陽香

1. 単元で身に付けたい資質・能力

日常生活で適切なコミュニケーションを行うための基本的な資質・能力として、話合いの力は欠かせません。
この単元では、互いの立場や意図を理解したうえでの話し合い方を身に付けることをねらいとします。児童は数名のチームに分かれ、立場を明確にし、ディベート形式で話し合う時間を設定します。互いに自分の立場と、その根拠を明確にしながら話し合うことによってそれぞれの考えのよさや違いを分析して、多面的な視点で話し合う力を育みます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

この単元では、話合いの力を身に付けるため、根拠を明確にした説得力のある議論を行い、相手の意見や考えに耳を傾け、議論の経過を評価するといった一連の活動を行っていきます。
立場の違う相手の問題点だけを挙げつらったり、感情を昂ぶらせたりすることなく寛容な精神で相手からの批判を受け止める姿勢を養うことも重要です。
そこで、「語感や言葉の使い方に対する感覚」を意識し、互いに感情を害することなく冷静に議論することのできる言葉の力を身に付けていくことを目指します。
本単元では、「長期休みに旅行に行くなら……」という話題を取り上げ、討論会を行っていきます。
また、教科書では、話題として家族旅行の行き先を取り上げていますが、児童の家庭環境や発達の段階に応じて二つの意見に分かれやすい題材、情報収集に時間をかけずに済む題材、どのような構成で主張していくのかを検討しやすい題材にするとよいです。
例えば、社会科の国土の学習と関連付けて「低い土地の暮らしがよいか、高い土地の暮らしがよいか」、また、身近な暮らしと関連付けて「小学生にスマートフォンは必要かどうか」なども考えやすいでしょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 自分の立場やその根拠を明確にする。

導入部分では、「長期休みに旅行に行くならどこに行きたいですか。」と投げかけます。ここでは自由に発言させ、児童の関心を高めていきます。
その後、本単元では「校長先生に冬休み中の旅行を薦めるなら北海道と沖縄県のどちらがよいか」という話題を提示します。最初の自由発言の段階では、児童の個人的な好みや主観で述べていますが、相手がいることによって薦めたい理由が明確になりやすいと考えます。
「冬は寒いから、沖縄県の海なら暖かい気候が特徴だし、観光するにはとても過ごしやすいと思う。」「北海道なら、雄大な自然を感じながら、おいしい食事も楽しめる。」など、話題に対する自分の考えをはっきりさせることで、自分の立場を意識できるようにし、その理由を考えていきます。

〈対話的な学び〉 説得力のあるチームを判定する。

討論会は、役割分担をして進めていきます。
学級の実態によりますが、司会役2名、判定役2名、討論グループ(各班4名程度)で構成していくとよいでしょう。全員が全ての役割を体験する場合は題材を変更して行う方法もあります。討論グループは意見を述べ、互いに質疑応答を繰り返し行います。
質疑応答をして最後の意見を伝えた後に、判定役の児童がどちらのグループの主張がより説得力があったのかを判定していきます。判定役の児童は、自分の好みや主観で決めるのではなく、「校長先生に薦める」「季節は冬」といった観点をもとに説得力のあったグループを判定していきます。
その際、必ず判定した理由を述べさせるとよいでしょう。
例えば、「私は、北海道のグループにしました。その理由は、冬の季節にしか味わえない観光スポットや冬のスポーツという考えに説得力を感じたからです。」など判定基準を伝えることにより、話合いが焦点化され、より活発になると考えます。

〈深い学び〉 話合いのスキルを多面的に広げていく。

自分の意見を伝えるために「私は、~がいいと思います。理由は三つあります。一つ目は――」などの考え方を表す言葉を学びます。
また、質疑応答では「〇〇チームに質問です。――と言っていましたが~。」など相手の弱点を突くような質問ではなく、相手の主張をまとめ、それに対して質問をする言葉を学びます。
このような討論の形式を学びながら、討論する価値について押さえていきます。そうすることによって感情的になったり、個人の好みに偏ったりすることがなくなります。多面的な見方や考え方が養われていくことにより、他教科や特別活動などにも生かすことのできる力が身に付くと考えます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)グループに分かれて、意見とその理由を整理する。
第1時で、意見とその理由を明確にしていくことになります。
また、どの順序で話すとよいかを決める必要もあります。Jamboard(Google Jamboardは2024年12月31日にサービスを終了します。その他のアプリで代替することができます。)の付箋機能を活用して、児童が理由を整理していくと円滑に話合いが進められると思います。
Jamboardは、同じページの中でシートを分けることによって班ごとの活動が可能になるため、教師も指導しやすくなります。
また、よい話合いができているグループを後ほど振り返るときにも児童に提示しやすくなります。

(2)実際の話合い活動を録画し、振り返りに活用する。
第2時では、実際に話合い活動を行うことになります。
司会グループ、判定グループ、討論グループの3グループが一度に活動を行うため、それぞれのよさや改善点などを記憶しておくことは難しいでしょう。話合いの様子を録画しておき、後で見直すことによって、司会グループは、「時間配分が上手くいった。/論点がズレてしまったときに話を戻す声かけが必要だった。」、判定グループは、「北海道グループの~という意見がとても説得力があった。/聞き取れないところがあったから次回からはメモを取るようにしたい。」、討論グループは「相手のグループと自分たちの意見の違いをはっきりと見つけることができた。/もう少し具体的に例を出すと説得力が増したと思う。」などと、具体的な振り返りにつながり次の学習に生かしていくことができます。
また、教師の評価にも活用することが可能です。

(3)討論グループは、資料を活用する。
討論グループはいかに説得力のある意見を述べるかが重要になってきます。
意見とその理由を明確にして話すことが最重要ではありますが、視覚的に資料を提示することも必要な要素となります。GoogleスライドやPowerPointなどのプレゼンテーションソフトを用いて簡単な資料作りをするのもよいでしょう。
例えば、写真を用いた場合、その写真との事実関係や詳しく述べたい部分をしっかりと構成するように指導する必要があります。
また、児童が資料作りに夢中になってしまうことが考えられます。授業時間の多くを資料作りとして設けるのではなく、朝学習や昼学習などに設定するのもよいと考えます。

(4)よい話合いの動画を作ってみることもできます。
第1時では教科書p104にある「先生が、家族旅行の行き先について海と山のどちらがよいか考えている」という題材を例として、よい話合い活動を確かめます。今回の学習で身に付けてほしい話し方を実演してもよいですし、文字に起こして確かめてもよいでしょう。実演できるように準備することで、児童の実態に合わせた身に付けてほしい話し方を明確にすることができます。
夏季休業中などに準備ができるようであれば、動画として作成しておくのが効果的です。
同じ学年の教師と協力して司会役、判定役、討論役(海チーム・山チーム)に分かれて行うと、児童にとって実際の話合い活動が想像しやすくなるとともに、意見を述べる話し方を考えやすくなります。
例えば、「私たちは海がいいと思います。理由は、三つです。一つ目は海ならではのアクティビティを楽しむことができ、旅行の思い出になるからです。二つ目は、~。」などと、実際の話し方をもとに意見と理由を整理し、順序だてて話していることに気付くことができます。
このような動画をGoogle Classroomに添付したりGoogleドライブに保存したりしておくことによって、児童は繰り返し確認し、本番に備えることも可能になります。

6. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: どちらを選びますか

【主な学習活動】
第1時
① 学習の見通しをもち、めあてを確認する。
② 手本動画を確認し、話合いの仕方を学ぶ。〈 端末活用(1)〉
③ グループに分かれて意見と理由を考える。〈 端末活用(2)〉
④ 自分たちのグループが考えた理由を見直し、相手グループの理由を想定して質問を考える。
⑤ 討論に必要な資料を作成する。〈 端末活用(3)〉

第2時
① 討論会の進め方を振り返り、めあてを確認する。
② 討論会をする。〈 端末活用(4)〉
③ 討論の中で気付いたことを共有する。
④ 学習のまとめをし、振り返る。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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