ここまでできれば担任合格?一年生担任検定【学習編】学年で使えるスライドつき

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教育アドバイザー

多賀一郎

いよいよ学年末が見えてきました。子どもたちの評価とともに、自分自身、担任としてのふりかえりをしてみませんか? 
ここでは、小一担任向けの「一年生担任検定」をご紹介します。ページ最後には、学年会や研修などでも使いやすいスライドもついています。
答えは一つではないかもしれません。一つの評価の目安として、自分の位置を確認する一助にしてください。

監修・執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎

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検定で子どもを把握できているかチェック

学習面について、ほとんどの子どもたちが次のようにできているでしょうか? まずは、下の項目をチェックしてみましょう。大切なのは、一人ひとりの子どもについて、これらのことを把握できているかということです。

 学習面「一年生担任検定」
「一年生担任検定(学習面)」チェックシート
※クリックすると別ウィンドウで開きます

一年生担任検定(学習面)

①授業の成立

子どもたちは着席して授業を受けている

先生の指示が通っている
 ※何か指示したら一回でほとんどの子どもたちが動き出す。
 ※大声を出さない。「静かにしなさい」と言う必要がない。

学習のルールが定着している
 ※挙手一発表など、先生が決めたルールで授業が進んでいく。
 ※ほかの子どもたちに顔を向けて話を聞いている。
 ※書くべきときに書く。

②授業の工夫

45分間、一年生が退屈しない工夫ができている

子どもたちが「楽しい」と感じる時間を一日に一回つくり、実行している

③各教科

【国語科】

教科書または教科書程度の文章がすらすらと音読できる。楽しそうである

一年生の漢字を全て読むことができる

一年生の漢字のほとんどを書くことができる

100字程度の文章を10分間で書くことができる

隣の子どもと簡単なことについて話し合いができる

自分の考えを述べることができる

宿題を自分から進んでやってくる子どもが9割以上いる


【算数科】

「9は6と何?」と聞くとすぐ「3」と返ってくるように、10までの合成分解が完全にできる

くり上がりのないたし算が完全に速くできる
 ◆「速く」というのは、間髪を入れずに答えが出てくること

くり下がりのないひき算が完全に速くできる

くり上がりのあるたし算が指を使わないでできる

くり下がりのあるひき算が指を使わないでできる

ばらばらに出された加減計算20問を5分程度でできる

【体育科】

時間前に集合できる

整列が自分たちでできる

係を中心に簡単な準備運動ができる

体育のとき、安全に気をつけている


担任検定 解説編

急激な成長なんてない

はじめに、二つのことを頭にしっかり置きましょう。

一つ目は、三学期は2か月ちょっとしかないということです。日数にして何日あるでしょうか。学校・地域で変わりますが、卒業式の練習や送別会・幼稚園児との交流会などをとると、40日くらいしかないということです。したがって、その間にできることなど、たかがしれています。しかも、計画をきちんともって臨まないと、あっという間に終わり、何もできなかったということになりかねません。

次に、9か月かけて育ててきてうまくいかなかったことが、40日ほどで急に改善されるようになるなどということは、考えられないということです。

あせらないこと

三学期は、子どもたちとの関係ができてきて、子どもへの愛情が深くなってくる時期です。かわいい一年生をここまであずかってきたのだから、愛情があって当然です。

そうすると、子どものことを考えるあまりに、欲が出てきてしまいます。「この子をこのまま二年生にあげてもいいのだろうか。不安だ。今の間にこれだけはしておいてあげないと・・・」というようなことを考えてしまいます。それが強くなってくると、子どもに対してこれまでよりも厳しく当たるということが起きてくるのです。

例えば、ようやく姿勢は悪くても一時間座っていられるようになった子どもを、これまでは、「今日もちゃんと座れていたね」と声かけしていたのに、「座っているだけでなく、いい姿勢で座らないといけないよ」などと、指導のレベルを上げてしまうのです。

子どもにしたら、大変迷惑な話です。先生が急にゴールポストを奥にずらしてしまうのですから、とまどいます。そして、ものすごいストレスがかかります。

いい姿勢で座らなくちゃ!

僕の経験では、そうやって急に子どもが成長できた例など、一つもありません。あせらないことです。レベルを上げるよりも、学校に初めてきた幼い子どもたちが学校生活に慣れて、楽しく学校にきている、ということを大切にするべきなのです。

担任検定 各項目の解説と対策

① 授業の成立

□子どもたちは着席して授業を受けている
□先生の指示が通っている

「一年生担任検定」の最初の項目にあるように、授業が成立していないと感じたら、何から始めればよいのでしょうか。

まず、検定の「先生の指示が通っている」に◎がつけられないのならば、自分は子どもたちにどんな話し方をしているのか、考えましょう。

大声を出していないと聞いてもらえないという状態ならば、とりあえず大声を出さなくてすむことを増やしましょう。例えば、楽しい絵本を毎日読み聞かせすれば、子どもたちが聴き入っているその時間だけは、大声を出さなくてすみます。子どもたちの活動を中心にすれば、その間は個別に話をすればよくなりますから、大声は要りません。「静かにしなさい」も、減りますね、確実に。

□学習のルールが定着している

「書くべきとき」っていつでしょうか。

どのようなルールでもかまいませんが、決めたことならば、できるまで徹底させなければなりません。「先生が『書きなさい』と言ったときにだけ、書きましょう。そのとき以外は、鉛筆は持ちません」と決めていたら、最後までそれができるようにしつこく言い続けることは、大切です。途中でやり方を変えたら、子どもたちは混乱するだけでしょう。

三学期に急激に改善しないとは言いましたが、ずうっと言い続けてきたことが実を結び始めることもあります。

三学期も一学期と同じようにていねいに学習ルールを確認しながら授業をすることです。何かあるたびに、子どもたちに、「こういうときは、どうやって待つのかな?」と、問いかけて、子どもたちから言わせることです。全部を先生がもう一度説明する時期ではありません。この時期は、先生ひとりががんばるのではなく、学校に慣れて独り立ちし始めた子どもたちに、「どう思いますか」とか、「どうしたらいいのでしょうか」と問いかけて、自分たちで考えるようにすることが必要です。正しいことをきちんと口にできる子どもたちは必ずいるものです。子どもを信じましょう。先生が独り相撲をとるよりも、子どもたちの力を借りたほうが、よほど効果的です。

なんと言っても、一年生です。まだまだ純粋で正しいことにやる気満々なのですから。

問いかけ

② 授業の工夫

□45分間、一年生が退屈しない工夫ができている
□子どもたちが「楽しい」と感じる時間を一日に一回つくり、実行している

一年生が退屈しているような授業は悲しいものです。子どもがつまらなさそうに見えたら、やはりもうひと工夫をしましょう。

楽しい授業というものは、学校の基本です。ここまで自分でそういう工夫ができなかったら、楽しい授業の実践をまねるしかありません。ただし、実践家の中には、一年生を経験していない方もたくさんいらっしゃるので、実際に一年生で実践されたものを取り入れていく必要があるでしょう。

③-1 各教科《国語科》

□教科書または教科書程度の文章がすらすらと音読できる。楽しそうである

一年生の他社の教科書から文章をとってきて、子どもたちに音読させたら、ゆっくりではあるけれども、初見でそこそこ音読できるのならば、十分です。

少し練習したら、すらすらと淀みなく読めるようになるでしょう。そういう練習を学習に取り入れましょう。そうしないと、何度も何度も読み込んだ文章しかすらすらと音読できないようになってしまいます。

・句読点で正しく区切っている
・読み飛ばしをしない
・正しく行替えをして読める

などというところがポイントです。音読の苦手な子どもたちは、家で音読する宿題を出しても、してこない場合が多いようです。家庭でそこをしっかりみていただけるなら、音読の苦手な子どもなんて、絶対に出てきません。音読は聞いてもらううちに、必ず上達していくものだからです。

そういう子どもたちには、先生が聞いてあげる時間をつくりましょう。それから、授業中では、「リトルティーチャー制度」を使って、子ども同士で音読を聞き合う活動を入れるとよいでしょう。

そこでたろうはかんがえました

□一年生の漢字を全て読むことができる
□一年生の漢字のほとんどを書くことができる

漢字の復習なんて、決して楽しいものではありません。一年生でも、何人かは漢字が嫌だという子どもが出てきます。そういう子どもたちには、ゲーム化して楽しく学ぶことと、100点がとれるような指導の方法を工夫します。

ゲームとしては、まず、フラッシュ型の授業です。パワーポイントで一年生の漢字の読み方を練習させます。ぱっと出てきた熟語や漢字を子どもたちがすぐに読んで答えます。それを二回、くり返します。

それと、ビンゴゲーム。ビンゴを作って、マスの中に一年生で習った漢字を書いていきます。漢字の書き取り練習になっているのです。子どもたちはゲームを楽しみながら嫌がらずに習得できます。

ビンゴで二日練習したら、その次の日に、練習した漢字をミニテストします。その次の日も同じ問題をします。さすがに、全く同じものが出るのであれば、家庭でできなくても、学校の空き時間などを使って練習する子どもが出てきます。その結果、ほとんどの子どもが100点をとれるようになります。

漢字はなんと言っても、書き取りができるようになるということが必要です。

□100字程度の文章を10分間で書くことができる

100字程度の文章というと、400字詰め原稿用紙の四分の一にあたります。子どもによって書くスピードは違いますから、あくまでも目安ですが、見たことや感じたことなら10分程度で書けるようにしたいものです。時間設定をしないと、いくらでも時間を使って書くような癖になってしまいます。長い時間をかけても書けないものは書けないものなのです。

なかなか書けない子どもが多い場合は、3文作文等を取り入れて、より書きやすい形で練習させることです。書く力が育っていないということですから、ハードルを下げて基礎練習にすればよいのです。

個人的に見て、書けない子どもが何人かだけいるのならば、一対一で話をしながら子どもが口にしたことを「今言ったことを、そのまま書いてごらん」と、書かせればよいのです。そして、それだけ書けた子どもと一緒に書けたことを喜び合いましょう。

ほかの子どもたちと同じように書けなくてもよいのです。その子なりの成長と共に歩むだけです。「この子もみんなと同じように・・・」などと思わないように。

□隣の子どもと簡単なことについて話し合いができる
□自分の考えを述べることができる

隣と話し合うときには、相手の顔を見て話を聞く(発達障害の子どもには、相手の目を見て話すことの苦手な子どもがいるので、気をつけましょう)ことをくり返して徹底させましょう。

授業中のちょっとした課題を、「このことを二人で話してごらん」と、子どもたちにふります。一年生は、ちゃんとした話し合いができなくてもかまいません。大切なのは、聞き方を教えることです。うんうんとうなずきながら聞いたり、笑顔で話し合ったりすることを教えるのです。一年生はとくに形から入ることが大切です。形をきちんと教えましょう。

一年生の間に人前で自分の考えを一言でよいから話せるようにしたいと思うのは、担任全員の思いです。しかし、さまざまな子どもたちがいて、まだそれができる段階にいない子どももいます。無理をしてはいけません。学校が楽しくなくなりますから。

無理はしないけれども、必ず均等に機会はつくってあげましょう。

□宿題を自分から進んでやってくる子どもが9割以上いる

一年生で自己学習なんて、難しいと思うかもしれませんが、そうでもないのです。僕は「セルフちゃん」というプリントをいつもたくさん印刷して、子どもが自分でいつやってもよいということで用意していました。そこには、漢字の書き取り練習や短い文章の書写、筆順クイズに画数並べ替えなど、いろいろな学習を入れていました。

子どもたちにとっては、宿題はやらなければならないものだけれども、「セルフちゃん」は自分の意志で決められるので、かえって楽しくやりがいがあったようです。宿題はしないけれど、「セルフちゃん」はする子どももいました。そうやって、自分から進んで学習しようとする心も育ててほしいと思います。

一年生の基礎を少しでも固めて、二年生に送り出しましょう。

セルフちゃん

③-2 各教科《算数科》

執筆/北海道公立小学校教諭・戸来友美

一年生の三学期、算数を大きく占める「数と計算」の領域では、どこまでの力が身についていたらよいでしょう? そこに到達するために、今後取り組めることをまとめました。

□「9は6と何?」と聞くとすぐ「3」と返ってくるように、10までの合成分解が完全にできる
□くり上がりのないたし算が完全に速くできる
□くり下がりのないひき算が完全に速くできる

10までの合成分解は、たし算・ひき算の学習を支える大切な力です。この学習はしっかりと定着させなければいけません。この時期になったら「9は6と何?」と聞くと、すぐに「3!」と答えられるようにさせたいもの。そうすることで、10までのたし算の答えがすぐに出るようになり、さらに、くり下がりのないひき算もすぐに答えを導き出せるようになります。

数の合成分解は、教科書ではさくらんぼの形を使って表すようになっています。これは、分解した数字が左右に分かれているものです。

さくらんぼ計算の例

このさくらんぼの形を使って、片方に数字が入っている問題はスラスラ解けるようにし、両方の数字が入っていない問題は、組み合わせ全てを答えられるようにします。

一つの数について、複数の合成の組み合わせを考えるときには、自分だけではなく友達の考えで組み合わせに気づくことができます。そのような、交流場面も設定したいものです。

そして、その分解が合っているかどうかは、ブロックを使って確認しましょう。そのときには、「7は3と4!」と声を出しながら、7個出したブロックを左右の手を使って、3と4に分けます。そして、7に戻します。このように確認することで、定着が不足している子どもの復習の機会となります。

声を出し、操作をして、数字に置き換える。変化をつけながらしっかりと身につけたいものです。

次に、くり上がりの学習に欠かせない10の分解合成は、ブロックを使って問題を出し確認します。ブロックの片方の側面をビニルテープで一つずつケースにとめておき、下の写真のように裏返すことができるようにすると便利。片づけも楽です。補数を視覚的にもとらえやすくなります。ブロックは一人ひとりが持っているので、復習にも生かせます。

ブロックとケースをテープで貼ることで、裏返すことができるようにすると便利
ブロックの片方の側面をビニルテープで一つずつケースにとめておくと便利。バラバラにならないので先生も子どもも楽ちんです

全体での復習は百玉そろばんなどを活用して、授業のはじめに2~3分必ず時間をとってくり返し行いましょう。

百玉そろばん
数量がどのように変化するのか視覚的に理解し、覚えることが大切。全体での復習では、百玉そろばんを活用しましょう

□くり上がりのあるたし算が指を使わないでできる
□くり下がりのあるひき算が指を使わないでできる

くり上がりのあるたし算や、くり下がりのあるひき算は、指を使わずに計算できるようにしたいもの。そのためには、数をさくらんぼの形で分解して、図を使って計算ができることが大切です。そして、その計算の仕方を説明できるということは、理解できているということなのです。

くり上がりのあるたし算や、くり下がりのあるひき算のさくらんぼ計算

計算の仕方を友達に伝えたり、自分で声に出しながら計算を進めたりして、計算の流れを身につけましょう。数え足しでは、どうしても指を使ってしまいます。

□ばらばらに出された加減計算20問を5分程度でできる

一年生にくり返しながら向上している自分を感じさせるためには、同じ問題をくり返し取り組ませることが効果的です。たし算ひき算の問題を各20問ずつ合計40問出し、終了までのタイムを計るのです(タイマーを実物投影機で画面に映してもよいし、タイマーのアプリ等を活用してもよい)。

そのタイムと、正解した問題数をカードに記入し、自分の頑張りや成長が目に見えるように残しておくとよいでしょう。また、同じプリントを月曜日から金曜日まで取り組むこともおすすめです。見慣れた問題なので、金曜日には、タイムはよくなり、解答できる数も増えます。

最初は終了時間を10分にしておき、その後、少しずつ終了時間をくり上げても取り組めるようにします。くり返し計算することで問題にも慣れ、単調になりがちな練習も、意欲的に取り組めるようになります。

これらの習熟をくり返し、たし算とひき算が混ざっている計算問題20問を5分程度で解答できるようにしていくと、二年生への学習につながっていくでしょう。

けいさんがんばりカードにタイムを記していく
タイムと正解した問題数をカードに記入すると、自分の成長が目に見え、励みになります

③-3 各教科《体育科》

執筆/岡山県公立小学校教諭・南惠介

一年生の体育で一番大切なことは「体育の授業が楽しい」と感じさせることです。そのためには、どんなことを大切にすればよいのでしょうか。

子どもが楽しいと感じる活動も「きまり」や「ルーティーン」が存在してこそ成り立ちます。例えば、集合することや並ぶことは、体育を行っていく上でかなり重要な「ルール」です。

□時間前に集合できる

一年生の体育の授業。どうしても集合に時間がかかります。大きな理由は「着替え」。そこで、次のような「ルーティーン」をつくります。

① 前の授業が終わると同時に、5分程度の音楽を流す。その間にトイレに行くことと、着替えを済ませることを伝える。
② 移動3分前に教師が廊下の整列場所の先頭位置に行く。
③ 体育館や運動場に移動する。

これが当たり前になるまでくり返します。このときの整列は「早くきた人順」がよいでしょう。早くきた子が「見える化」され、ほめることができるからです。

もちろん、着替えに時間がかかる子もいますから、ある程度列ができ始めたら先頭の子に「よろしくね」と声をかけて、担任がケアしに行けばよいのです。それをくり返し、それが「当たり前」になると自然に準備の時間は短くなっていきます。こうして一年生では「当たり前」を増やしていくことが大切です。

□整列が自分たちでできる

整列させることは大切です。ゲーム的に取り扱うことで、楽しく身につけることができます。

並びっこゲーム

① 子どもたちにばらばらな場所でいるように指示する。
② 先生だけが、移動し「ピーッ」と笛を吹きます。そして、「背の順1列!」
③ 数を数えて、子どもを待ち、速くできたらほめます。遅かったら「おしいねえ。次は何秒で集まれるかな」と言ってくり返す。

先頭の子は手を上げて後ろを見る。後ろの子は「前に習え」をして待つ。並べたら先頭の子は「座りましょう」と声をかける。これをセットにして教えるとさらに効果は高くなります。

周りが見えなくてぶつかる子もときにいるので、そのあたりは注意が必要です。

この活動は単純ですが、子どもたちはこのような活動が大好きです。「背の順」だけでなく「早くきた人順」や「運動会の色別」、「班別」などパターンを変えて指示するとより盛り上がります。また、先生の指示をよく聞いて動く子に育ちます。まっすぐ並んでいるかどうかも、点数化すると盛り上がります。点数をつけるコツは「大盤振舞をすること」です。かなり曲がっていても、「おしい90点。もうちょっとまっすぐになると100点になるよ」と伝えます。

まっすぐになったら、「すごい120点。もっと上手になったら1万点狙えるかも」などと伝えると、よくわかっていないのに、「おお、1万点狙うぞ?」なんて、子どもたちはやたら盛り上がります。

あれこれ説明しなくても、子どもたちは自分で考え、調整し「すばやく並ぶ」という技能を獲得していきます。

これも「当たり前」になることで、いつの間にか自分たちで並べるようになります。

□係を中心に簡単な準備運動ができる

準備運動は子どもたちに見通しをもたせる体育の重要な「ルーティーン」の一つです。

最初は教師のまねっこでよいでしょう。しかし、途中から子どもたちに交代し、任せることが大切です。係の子を決めて行わせるようにすると、少しずつ慣れて上手になっていきます。「うまくできたな」と思ったら、具体的にほめてみましょう。「声が大きいね」「リズムがいいね」「大きく動けているね」

ほめられることで自信をもち、自分たちで準備運動ができるようになるでしょう。

□体育のとき、安全に気をつけている

子どもたちが体育が苦手だと考える大きな理由の一つに「怖い」ということがあります。私は「怖い」という感覚はとても大切だと思います。例えば、高いところから平気で飛び降りる子。適切に「場」と自分の力を照らし合わせて判断できているでしょうか。

もし、怖かったら「怖くない」場や、ルールを設定する。そうして、「怖くない」ところからスモールステップで恐怖心を取り除きつつ、自分の力を把握させていく。とても大切な「体育の力」です。

そのような配慮を教師が行っている様子を見ることで、自分だけでなく、友達がけがをしないようにという気配りが育っていきます。もちろん、マットの耳を下に入れる。跳び箱の横にマットを置く。そういう指導は必要です。そういうときにも「けがを防ぐためにするんだよ」と一言添えるとより意識が高まります。

キーワードは「遊び」

一年生の体育で大切にしたい言葉は「遊び」です。低学年での体育は「遊び」の中で、幼児期に培ってきた力と、系統性のある学校体育をつなげていきます。そして、その中でいろいろな力を獲得させていくことが大切です。教えてできるようにすることも確かに大切ですが、それ以上に友達のまねをさせながら、たくさん活動を行っていくことが大切です。

もちろん、上手下手はあります。しかし、この時期の体育は「習うより慣れろ」を念頭に置いて授業を組み立てることをお勧めします。

体を動かすのが好きになれば、その年度に上手にできるようにならなくても、いつかできるようになる「種」を蒔くことにつながります。そのために、教師の指示や指導はできるだけ少なくし、活動をたくさん行えるようにしましょう。

教師が説明しすぎることで、子どものテンションが下がってしまうことが多々あります。その結果、聞けない、並べない、騒ぐ。そのような子どもが多くなることも案外多いのです。

指示は短く少なく、ほめ言葉は多様に大量に。そして、具体的に。

多賀一郎先生

追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校で指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。

この記事の内容は、全てスライド形式でもご覧いただだけます。
フルスクリーン表示もできます。学年会で使ってみてください! 

この検定は、あくまでも一つの考え方であり、答えは一つではありません。

皆様の学校、学年で目指す、学習面、生活面でのゴール像から、このような検定スライドを作ってみませんか? 学年もテーマも不問です。

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 みんなの教育技術編集部kyoiku@shogakukan.co.jp

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イラスト/藤井昌子

『小一教育技術』2016年1月号より

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