教員不足②【わかる!教育ニュース#49】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第49回のテーマは「教員不足②」です。
目次
財政審が、教職調整額を一律に増やすことに「適当ではない」と異議
教員のなり手不足の打開に向けた、中央教育審議会(中教審)特別部会の提言案は、教員の処遇改善や働き方改革など、様々な観点の提案がありました。中でも注目されたのが、教員に残業代を出さない代わりに、月給の4%分を一律上乗せする教職調整額を10%以上にするという案。ところが、提言案が出て1週間ほどで、待ったがかかりました。
財務相の諮問機関「財政制度等審議会(財政審)」が、国の財政運営についてまとめた意見書で、教職調整額を一律に増やすことに「適当ではない」と異議を唱えました。主任手当の引き上げなど、仕事や責務の重さに応じ、メリハリを付けた給与体系にするべきだと主張しています。
財政審は「処遇改善」を掲げて教職調整額を増やす前に、留意するべきことがあると訴えています(参照データ)。
まず、教員採用試験の倍率が下がったのは、教職の人気低下が原因ではなく、近年の大量退職、大量採用に伴う現象だと説明。質の高い人材を確保したいなら、働き方改革やデジタル化、外部人材の有効活用などで業務の効率化を徹底し、マンパワーに頼らない環境に変える必要があると説きました。
教員の給与についても、民間の賃上げの影響で改善が進んでいると主張。一般の公務員と比べて高い上、教職調整額が本給として支給されているため、退職手当も優遇されていると見ています。
さらに教職調整額の引き上げには、安定財源の確保が欠かせないと指摘しました。その上で、まずは今の文部科学省全体の歳出歳入を根本から見直し、財源を捻出するよう求めました。
「教職の重要性を踏まえた処遇改善をする必要がある」
財政審の主張はデータや根拠が添えられているので、一見客観的です。ただ、国の財政を審議する立場で論じていることも、忘れてはいけません。教員の勤務実態を踏まえて処遇改善の必要性は認めているものの、財政赤字が膨らむことを危ぶんでいます。そんな財政審の主張に対し、盛山正仁文科相は5月24日の閣議後会見で「既定の給与予算の範囲にとらわれず、教職の重要性を踏まえた処遇改善をする必要がある」と反論しました。
とはいえ、仕事は規定の勤務時間内で終えるのが理想。教職調整額とは、残業を前提にしている制度と言えます。廃止を訴える声も根強く、中教審特別部会の提言案にも、給特法の実態を「定額働かせ放題」だと批判する教員たちが会見を開き、改めて廃止を求めました。
そもそも、教員のなり手不足は、給与を上げれば解決するのでしょうか。長時間労働は何年も前から問題視されているのに、解消されていません。うつなどの精神疾患で休職する教員も、減るどころか増えています。財務省・財政審と文科省・中教審の攻防は、「教員の処遇改善」から「お金」が軸になってしまった気がします。現場に横たわる問題の解決をしなければ、状況は変わらないのですが…。
【わかる! 教育ニュース】次回は、6月30日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子