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「いじめを管理職に報告したくない」教師の心理から見えてくるもの

2020/1/12

長年、いじめや不登校の問題に正面から向き合い続けて来た現役教師が、クラスでいじめの情報をキャッチした時に担任がすべき具体的なフローを提案。たくさんの事例と向き合ってきた著者だからこその、教師が犯しがちなミスや、陥りがちな心理状態への指摘は、ハッとさせられるものばかりです。

千葉孝司先生

執筆/北海道公立中学校教諭・千葉孝司

ちばこうじ●1970年、北海道生まれ。いじめ防止や不登校に関する啓発活動に取り組む。ピンクシャツデーとかち発起人代表。著書『いじめ 困った時の指導法40』『不登校指導入門』(以上明治図書)『空気マン』(なごみすと)他。

炎上NGワードを口にしない!

「いじめられたあなたにも悪いところはあるよね」はNGワード

あなたにも悪いところがあるよね。

これは絶対にNGです! いじめを訴える子どもに絶対に口にしてはいけません。もしも責任ある立場の人が、犯罪の被害にあった人に、「被害者側にも落ち度がある」と口にすれば、炎上し大問題になることでしょう。

たしかに戸締りをしていない家が、空き巣の被害に遭うこともあるでしょう。しかし鍵があいていたから空き巣に入ってもよいという話には絶対になりません。確かに、いじめを誘う性質というのは存在します。しかし、何があってもしてはいけないのがいじめなのです。

いじめの行為そのものは絶対に許容してはなりません。

実際にいじめは、まじめでおとなしい子どもがターゲットにされやすいものです。なぜなら反撃されるリスクが低いからです。

「それはつらいね」
「気が付かなくて悪かったね」
「絶対に守るからね」

いじめを訴える子どもにはこんな言葉をかけ、安心させる必要があります。

では、仮に自己中心的な言動が、いじめを誘発していると思われる場合はどうでしょうか。対応は同じです。被害者側の気になる点、改善すべき点への指導には、いじめが解決してから取り組むべきなのです。

あの時はつらい思いをしたけど大丈夫?二度とあんな思いをしないために、何か自分で工夫できることはあるかな。

こう振り返らせ、教訓をつかませます。間違っても、いじめの渦中で「あなたにも原因があるだろう」と口にしないようにしましょう。

被害者側の気になる点への指導は、いじめ解決後に

【関連記事】保護者から「うちの子がいじめにあっているらしい」と相談を受けたら、この記事もチェック → いじめ・仲間はずれの解決は学校チームで!「保護者あるある」

いじめの可能性をキャッチ! 最初にすることは?

いじめ情報をキャッチした担任が最初にすべきことは?
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いじめの情報をキャッチした時に、担任が最初にすることは何でしょうか。情報収集でしょうか。家庭への連絡でしょうか。被害者へのケアでしょうか。

答えは、管理職への報告です。

「ただの悪ふざけかもしれないし、何だか言いにくいなあ」という思いを抱くこともあるでしょう。言いたくないという気持ちがあると、言わなくてもよい口実が次々と浮かんでくるものです。言いにくいという気持ちの奥には、どんな思いがあるでしょうか。

「こんなことが起きてしまって、何だか恥ずかしい」
「自分の学級経営にダメ出しをされるんじゃないだろうか」
「ダメな担任だと思われるんじゃないだろうか」
「がっかりされるんじゃないだろうか」

そんな思いに対して、その一つ一つにきちんと反駁してください。きちんと向き合うことが大事です。なぜなら担任が、いじめを管理職に報告したくないなあと思う心理は、被害者が担任に打ち明けにくいなあと思う心理に似ているからです。被害者の場合は、さらに加害者からの報復を恐れる心理も働きます。

「いじめ防止対策推進法」が施行されてからも、重大な案件は起き続けています。せっかく学校、地域が一体となって取り組むシステムがあっても、機能しない場合も多くあります。その理由は、担任がその事案をいじめだと感じていないことと、自分で何とかしようと考えることにあります。

いじめを訴えても、教師にいじめだと認めてもらえない児童生徒がたくさんいます。それはいじめに対する感度に差があるからです。いじめに対して敏感な教師も鈍感な教師もいます。だから担任一人の判断に委ねるべきではないのです。

周囲の教職員よりも、担任である自分が一番子どものことを知っているのに……。

そう思う人もいるかもしれません。知っているからこそ危険なのです。そこには「〇〇さんも、周りに同じくらいのことをやっているし、普段から平気な顔をしているし、大丈夫だ」といった判断や思い込みが生まれるからです。

いじめは、衆知を集めて、学校全体として対応すべき事案です。そのスタートラインは管理職への報告です。「こんな話を耳にしたのですが……」とその日のうちに伝えましょう。

関わりのルールで一点突破を

いじめを防止するためにできることは限りなくあります。しかし、広く薄い取り組みは効果が表れにくいものです。学級目標も「みんな仲良く団結して、けじめがあって全力で行事に取り組む学級」のようなものは、結局ないのと同じです。

いじめを防止するためには、具体的な関わりのルールを一つ、全員で共有することが効果的です。次のように話してみてはどうでしょうか。

先生は、このクラスの人に自分も他の人も大切にできる人になってもらいたいと思っています。なぜならクラスの一人一人に幸せな生活を送ってもらいたいからです。自分も相手も大切にするために、どうしたらよいか考えました。そしたら気付きました。

それは『やめてと言われたことは繰り返さない』ことです。

人間は失敗するのが当然なので、つい相手に嫌なことを言ってしまったり、気付かずに嫌な思いにさせたりすることもあります。このルールがあったら安心して過ごせる、うれしいなと思う人はどれくらいいますか? 先生もうっかり嫌なことを言わないように気を付けます。みんなで守っていきましょう。

やめてと言うのは、不快に思った人が言う言葉です。それは嫌なことをされた当事者や見ていた人、あるいは担任であってもかまいません。

やめてと言われた生徒を叱るのではなく、やめてと言われて実際にその行為をやめたことをほめることです。

子どもは失敗を重ねながら成長していく生き物です。一つの失敗を許さない学級風土にしてしまうと、その息苦しさがいじめという出口を求めることもあります。やめてと言われたことを繰り返すことが、相手を大切にしない行動であるということを教えていくことが大切です。

嫌だと自己主張できない子には、担任が代わりに言ってあげることも大切ですが、人のいないところで「やめて」と言う練習をさせることも大切です。このルールが機能すると「やめて」という言葉が魔法の呪文のように効果を発揮するはずです。

関わりのルールを全員で共有

ただし、この関わりルールで気を付けなければならない点があります。それはルールを守れない者へのフォローです。いじめの中には、いじめる側が教育的意義を感じているものもあります。きちんとやらないから、ちゃんとできないから攻撃したといった類のものです。 ルールを守れない者に対する攻撃にどう対処するかの備えが必要です。

基本的には、ちゃんとできない者に対して責めたくなる気持ちは受容しても、行為は許容しないことが大切です。

頑張っている人間の気持ちをきちんと受け止めないと不公平感が生まれ、ルールが破綻します。このルールは、自分も相手も大切にするという目的を達成するための手段であることを理解、納得させる必要があります。

いじめかいじめでないかといった不毛な議論や言い訳に巻き込まれずに、ルール違反という形でシンプルに対応することも大切なことです。

【関連記事】「いじめ予防につながるミニゲーム」なら → 心ほぐしミニゲーム【いじめ対策】

いじめと両立しないものを育む

「やめて」と言われた子を叱るのでなく、実際にやめたことをほめよう
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いじめは群れをつくる習性をもった動物の本能であると考える人もいます。いじめというネガティブなものを完全に取り除くことは困難です。むしろいじめと両立しないポジティブなものを子どもの中に育むことこそ、持続的で効果のあるいじめ対応になります。思いやりの気持ちにあふれながら人をいじめることは難しいからです。

あなたが同じことをされたら、先生はとても悲しいし、相手を許せない。それと同じであなたが誰かに、いじめをすることも先生は許さない。いじめはしている人だって、結局はつらい思いをするんだよ。あなたを大切に思っているよ。だから、いじめはやめなさい。

いじめがあった時はこんな風に温かく諭す必要があります。さらに、「あなたの中にどんなことが増えていけば、同じことをしなくなるんだろうね」と思考を促します。

ここで本人によく考えさせ、話させることがポイントです。悪いことをした子どもにガミガミと説教をし続ける教師がいます。子どもが理解の容量を超え、ポカンとなっていると「聞いているのか!」と一喝し、最後に「分かったか!」と念押しをします。言われた子どもは、ようやく解放されるという安堵感から素直に「分かりました」と口にします。

こういったシーンを目にすることもあるでしょう。試しに解放された子どもに廊下で「これからどうしたらよいか分かったかい?」と聞けば「分かりません」と答えが返ってくるものです。

いじめでこんな指導をしてしまうと、被害者側に対して逆恨みしてしまうこともあります。怒りに任せての指導では、いじめと両立しないものを育むことは難しいものです。

いじめた本人によく考えさせ、話をさせることが大切

加害者側のみを悪者にするのではなく、教師自身も自らを振り返り、反省する姿を見せながら指導することが大切です。

イラスト/大橋明子

『教育技術 小一小二』2019年12月号より

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