小2国語科「話そう、二年生のわたし」板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小2国語科「話そう、二年生のわたし」(東京書籍)の板書例、発問、想定される子供の発言、1人1台端末の活用例等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/熊本大学大学院教育学研究科准教授・北川雅浩
執筆/熊本県熊本市立楡木小学校・都田雅美
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、2年生になってからこれまでで心に残った出来事をみんなの前で話す活動を行います。
自分の心に残っている出来事をみんなに伝えるために、大事なところが伝わるような話し方を工夫することができるようにしていきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、子供たちが2年生になってからの出来事を思い出し、大事なところが伝わるように話す活動を設定していきます。
話すことを決める前に、伝えたい相手を決め、意識して取り組んでいくことで、より伝えたい思いを膨らませることができます。学校で経験した出来事を思い出し、自分や友達との対話を通して選んだ出来事は、より思い入れのあるものとなるでしょう。
メモを書く過程で、伝えたい大事なところをはっきりさせ、声の大きさ、話す速さなどを考えてめあてを設定し、話す活動に取り組むことで、この学習で育成すべき力が身に付いていくようにします。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 伝えたい相手を決め、楽しみながら話す出来事を決める
子供たちが興味や関心をもって取り組むことができるようにするために、まず、伝えたい相手を決めるようにします。そうすることで、子供たちは伝えたい思いを膨らませて学習に取り組むことができます。今回は、2年生になって2か月を共に過ごしたクラスのみんなに伝えることにします。
また、2年生になって経験した出来事を想起し、その中から自分が話したいことを取捨選択し、最終的に一つに決めます。
単元に入る前に掲示板に行事などの写真を掲示しておいて、単元冒頭で「なんの時でしょうクイズ」をすると、子供たちは楽しみながら2年生になってからの出来事を思い出すことができることでしょう。その後、ウェビングや写真を用いるなどして、出来事を具体的に思い出し、可視化していく活動を通して、クラスのみんなに伝えたい出来事を一つに絞っていきます。
〈対話的な学び〉 伝えたい内容や伝え方について話し合う
この単元では、2年生の子供たちが学校で経験したことを中心に伝える内容を決めることにしています。それは、子供たちが同じ経験をした土台のもとで対話することが有効であると考えるからです。
例えば、クラス替えを例にすれば、ドキドキする子供もいれば、ワクワクする子供もいますよね。このように同じ出来事でも、感じ方は人それぞれ。同じ出来事について対話し合うことで、自分と友達の考えの違いに気付き、自分の伝えたいことが明確になります。
また、出来事の写真を見ながら友達と対話する中で、その時の出来事をより鮮明に思い出し、伝えたいことが膨らむようにします。
〈深い学び〉 二つの例を見比べて、より伝わる工夫を考える
子供たちが話す練習に入る前に、二つの例を提示します。一つは、教師が演じるうまく伝わらない例、もう一つは教科書に載っている動画(よい例)です。
子供たちにこれらを見せ、二つの違いを比較することで、大事なことを伝えるために必要なことは何かについて、学びを深めていくことができるようにします。子供たちは比較や対話を通して1年生で学んだ声の大きさを思い出したり、話す速さや口形などが大切であることに気付いたりすることでしょう。
練習する際には、自分のめあてを立てて取り組みます。友達と見合ったり、タブレット端末を活用して録画したりすることで、自分の話す様子を客観的に振り返り、よりよい話し方の工夫について深く考えることにつながります。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)タブレット端末を活用することで、2年生になってからの出来事を思い出したり、伝えたい内容を膨らませたりする
話す題材を決める際には、ウェビングを使うと考えを広げることができます。真ん中に「2年生になってからのできごと」と書き、学校で経験したことを書いていきます。「歓迎遠足」や「1年生との学校探検」などの行事名から、その子の心に残っている出来事の部分は、どんどん書き込みが増えることでしょう。
また、行事の写真やイラストなどを使うことも効果的です。それらをタブレット端末に送り、したことや、どんな気持ちだったか、どんなことを話していたかなど書き込んでいくと、より具体的にその時の様子を思い出すことができます。
伝えたい出来事が決まったら、デジタルのシート上で「どんな出来事か」「その時のくわしい様子」「そのときの気持ち」の三つの部屋に分けて書き込みます(シンキングツールのPMIシート)。
三つの部屋の色分けをしておくことで、子供たちが何を書けばよいかが分かりやすくなります。
また、いちばん伝えたい内容の言葉や文章に赤のサイドラインを引いておくことで、その部分を意識して話すことができます。
話す練習の際には、撮影した動画(音声だけでもよい)を活用して、自分の話し方を客観的に振り返ることができます。その際、撮り直す前と後を比較することで、自分の成長にも気付くことができるようになります。
(2)振り返りの際に、色を活用して自分の学びを実感する
それぞれの活動において振り返りを行う際に、タブレット端末を使ってカードに書き込むことにしています。めあての達成度は◎・〇・△のどれかを丸で囲み、振り返りを言葉に表します。
子供たちによって振り返りを書く量は違いますが、すべて1枚のカードに収まります。また、自分が書いた振り返りを見直し、色を付けることにしています。
黄色は「今日のわかった!」、緑色は「友だちのなるほど!」、桃色は「こうやってできたよ!」、青色は「もっとしりたい がんばりたい!」のように項目ごとに色を分けることで、子供たちはどの視点で振り返りを書いたのかを客観的に知ることができます。
また、毎時間の振り返りカードは、一覧で見ることができる(下のシート例参照)ので、自分の学びを実感し、成長を感じることにもつながります。そこに教師が価値付ける言葉を加えることで、子供たちは、学ぶ喜びを得たり、自信をもったりすることができるようになり、次の活動への意欲につながっていきます。
6. 単元の展開(5時間扱い)
単元名: 話そう、二年生のわたし
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① みんなの前で話した経験を想起し、2年生になってからの出来事をみんなの前で話すという学習課題を確認し、学習の見通しを持つ。2年生になってからの出来事を思い出す。〈 端末活用(1)〉
・第二次(2時、3時、4時)
② 2年生になってからの出来事の中から、心に残っている出来事を一つ選ぶ。選んだ出来事について話したいことをメモに書き出す。〈 端末活用(1)〉
③ 書き出したメモの中からいちばん伝えたい大事なところを考える。動画を見て、大事なところが伝わる工夫について話し合う。大事なところが聞き手に伝わるように話す練習をする。〈 端末活用(1)〉
④ 大事なところが伝わるように立てためあてを意識して、みんなの前で話す。友達の話し方でよいところを見つける。
・第三次(5時)
⑤ 単元全体の学習を振り返る。めあての達成度、できるようになったこと、友達のいいところなど各活動の振り返りシートを見て全体を振り返り、学びを実感する。〈 端末活用(2)〉
板書例と全時間の指導アイデア
1年生の単元「すきなきょうかをはなそう」のことばの力のページを見せ、みんなの前で話すときのポイントを思い出すことができるようにします。2年生では、さらにレベルアップした「だいじなところがつたわるように話す」力を付けていくことを伝えます。
教科書の動画を見せ、これからの学びをイメージすることができるようにします。
そこから話す題材(2年生になってからの出来事)を、タブレット端末のシンキングツールのウェビング機能を使って思い出します。このように前学年で学んだことを想起し、学びをつなげ、具体的に示していくことで、子供たちは単元の見通しをもつことができるようになります。
この時間は、子供たちは個人でウェビングの活動に取り組み、その後全体で共有し、対話を通して自分が伝えたい出来事「話すこと」を少しずつ絞っていくようにします。
イラスト/横井智美