小6特別活動「情報通信端末の使い方を見直そう」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
6月特別活動バナー

6月のこの時期は、運動会などの学校行事が終わるなど、学校生活での目標が見付けられずに子供のやる気や集中力が持続しづらくなる時期です。大型連休などで生活リズムが乱れ、ゲームやYouTubeといった情報通信端末(スマートフォン、ICT端末など)を使用した遊びに時間を費やしていた子供もいることでしょう。そこで、本題材「⑵ウ『情報端末の使い方を見直そう』」の実践では、子供たちが情報機器の使い方を見直し、健康の面から適正な使い方を考え、目標を決めることで、これからの自分の生活の改善に生かしていくことをねらいとしていきます。

執筆/熊本県公立小学校教諭・迫洋輔
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
 尚絅大学教授・平野 修

年間執筆計画

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4月 学級活動⑴ 6年生スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 情報通信端末の使い方を見直そう
7・8月 学級活動⑶ ウ よりよい自主学習
9月 学級活動⑵ イ 友達のよい相談相手になろう
10月 学級活動⑴ 係活動発表会をしよう
11月 学級活動⑴ 学級世界記録をつくろう
12月 学級活動⑴ 卒業文集を作ろう
1月 学級活動⑶ ア 中学校に向けて
2月 学級活動⑴ お世話になった方々へ感謝の気持ちを表そう

学級活動⑵ウの指導について

本題材である「情報通信端末の使い方を見直そう」は、学級活動⑵ウ「心身ともに健康で安全な生活態度の形成」に関わるものです。この題材では、心身の機能や発達、心の健康について理解を深め、生涯にわたって積極的に健康の保持増進を目指していきます。情報通信端末の使い方について自らの課題をつかみ、課題の原因について探り、解決方法を学級で話し合うことで、よりよく情報通信端末を使うための意思決定を行い、実践に結び付ける活動にしましょう。

養護教諭との連携について

現在及び生涯にわたって心身の健康を自分のものとして保持増進し、健康で安全な生活を送ることができるようにするためには、健康に必要な情報を子供たちが自ら収集し、よりよく判断し行動する力を育むことが重要です。そこで、養護教諭の専門性を生かし、連携して指導を行うことがとても大切になります。
今回の授業では、養護教諭の役割として【さぐる】の段階で「情報通信端末が与える健康被害について」の話を行い、【見つける】の段階では、解決方法を考えている子供に対して個別に助言を行うことを位置付けています。

本題材のねらい

本題材は、日常生活を振り返り、自分の情報通信端末(スマートフォン、ICT端末など)の使い方についての課題をつかみ、科学的な根拠をもとに正しい情報通信端末の使い方を理解し、自分自身の課題解決を図っていくことをねらいとしています。情報通信端末の使い方で経験の差が見られ、情報通信端末の使い方に関しての課題をつかむことが難しい子供がいる場合、情報通信端末だけでなく、ゲームなどの正しい使い方や、今後使用する時の使い方について考えることで自分事として本時の課題に向き合うようにしていきます。

事前の指導

① 情報通信端末の使用状況についてのアンケート調査をする

情報通信端末の利用状況に関するアンケート調査を行い、子供たちの実態を把握するとともに、題材についての子供たちの意識を高めます。教師は子供たちの実態や経験から課題を把握し、養護教諭との打合せを行い、授業を組み立てていきます。

【アンケート質問例】
Q あなたは情報通信端末(スマートフォン、ICT端末など)を利用していますか。
Q あなたは情報通信端末(スマートフォン、ICT端末など)を1日にどのくらい利用しますか。
Q 情報通信端末(スマートフォン、ICT端末など)を使用する時間帯はいつですか。

② 養護教諭と打合せを行う

事前の打合せでは、本時のねらいや活動内容について共通理解を図り、本時での役割分担と指導内容を明確にしておきましょう。例えば、学級の実態を把握している学級担任が授業の進行を担当し、専門的な内容の指導・支援を養護教諭が担当し、机間指導は2人で行うなど、役割分担を明確にしておくことでより効果的に授業を展開できます。また、子供の実態や発達の段階に合わせて、指導内容を絞り込むようにします。

本時の指導

① 課題を実感できるようにする(つかむ)

授業の導入では、本時の題材を自分事として捉えることができるようにします。
そこで、事前に調査しておいた情報通信端末やゲームの利用に関するアンケート結果を見て、気が付いたことを話し合います。ここでは、1日の使用時間と利用時間帯についてのアンケートを子供たちに提示します。そのアンケート結果から、自分と学級の友達との情報通信端末などの使い方を比べ、自分の問題点に気付けるようにします。「このままではいけない」という課題意識をもたせ、課題解決の必要性を感じ、解決に向けての意欲を高めるようにします。

今日は「情報通信端末の使い方」について、アンケート結果などをもとに考えてみたいと思います。アンケートの結果を見てどのようなことに気が付きますか。

長い時間スマートフォンやゲームを使っています。友達と自分を比べても少し多いことに気付きました。

わたしはみんなよりも夜遅い時間に使ってしまっています。

休みの日の使用時間が長くなっています。

② 課題の原因について考える(さぐる)

どうして、そういう状況になってしまうのかな。

1日2時間って決めていてもついつい、やり続けてしまうんだよ。

わたしは使う時間をちゃんと決めていないからかも。

動画は続きが気になって途中でやめられないんだよ。

長時間使用したり、夜遅くに利用したりすると何か問題がありますか。

ずっとスマートフォンを使うと視力が低下するんじゃないかな。

夜遅くに使用すると、睡眠不足になって、授業中に眠くなってしまいそうです。

情報通信端末やゲームを使い過ぎると健康に影響が出そうだね。今日は自分の情報通信端末の使い方を見直してみましょう。

※6年生の家庭科の授業で、生活時間を見つめ直す単元があります。その単元との関連性を教師が意識し、学習を想起するような発言をすると、子供自身が、自由に使える時間の中で情報通信端末をどれくらい利用しているかに着目し、課題に気付きやすくなります。

③ 情報通信端末の使用と健康との関係について知る

養護教諭から情報通信端末と健康への影響について専門的な話をしてもらいます。子供たちは、養護教諭の話から情報通信端末を正しく使わなければならない理由を探っていきます。養護教諭からの話については、例えば、以下の3点の中から実態に応じて話してもらうとよいでしょう。

<養護教諭からの話の例>
A 睡眠への影響について
(例)寝る前にブルーライトを浴びると、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が阻害され、寝つきが悪くなったり、朝起きるのがつらかったりする。
B 視力への影響について
(例)近距離でスマートフォンなどを使用し続けると視力低下の原因になるおそれがある。また、長時間使用することで、眼軸長が伸びるリスクがある。
C 依存症について
(例)情報通信端末やゲームにのめりこみ、歩きながらや布団の中でも手放せない人が多くなっている。

④ 情報通信端末やゲームを使うときに気を付けることを考える(見つける)

養護教諭の話を踏まえ、情報通信端末やゲームを使うときに気を付けることなどについて考えます。まず、ペアやグループで情報通信端末やゲームを正しく使うためにはどうしたらよいのか、互いにアドバイスをし合うようにします。さらに学級全体で話し合って、多様な方法や工夫を出し合うことで、よりよい意思決定につなげることができるようにします。

情報通信端末やゲームを使用することで、みなさんの健康に影響があることが分かりましたね。情報通信端末を正しく使うためには、これからどうしたらよいと思いますか? まず、グループで話し合ってみましょう。

ぼくは、9時30分に寝るので、その1時間前には情報通信端末やゲームを使うのをやめてブルーライトを浴びないようにしようと思います。でも、寝る前に動画をついつい見てしまうんです。

寝る前に見ないようにするために、寝室にスマートフォンを持って行かないようにすればいいんじゃない?

わたしは長時間情報通信端末を使用していたので、30分に1回は休けいしようと思います。

これまで食事中にスマートフォンをさわっていたので、「ながらスマホ」をやめようと思う。

班で話し合っている子供たち

⑤ グループで話し合って出てきた解決方法を発表し合う

グループで話し合ったことを学級全体に出し合うことで、「ほかにどのような場面が考えられるかな」「このときに気を付けたほうがいいことは何かな」など、解決策をより具体的にしていくことが大切です。養護教諭は、子供たちから出された方法や内容について、よい点を認めたり、必要に応じて補足説明したりします。子供たちから出なかった方法や内容があれば「みんなからは出なかったけれど、こういうことに気を付けることも大切だよ」などというように、伝えることも大切です。

⑥ 個人の目標を意思決定する(決める)

学級で話し合ったことを生かして、一人一人が自分の課題に合った具体的な目標を意思決定できるようにします。自分の課題解決のために「何を」「どのように」という視点で書いたり、具体的な数字を入れたりすることで事後の実践が振り返りやすくなります。また、目標の修正もしやすくなります。現在、情報端末通信をあまり使用しておらず、課題の見いだせなかった子供には、今後、使用する際にどのようなことに気を付けて使用していくかという視点から目標を設定していくようにします。

(意思決定の内容の例)
スマートフォンを、寝る1時間前から使用しないようにする。
動画視聴やゲームを使用する時は、30分に1回は画面から目を離して休憩して、遠くを20秒以上見る。
食事中にスマートフォンを使わないようにする。
使う時間は2時間までにする。
決めた約束を紙に書いて机の前に貼り、いつでも意識できるようにする。

ワークシート 情報たん末の使い方を見直そう

板書例

板書例

事後指導

① 決めたことを実践し、振り返る

自分が意思決定したことを実践します。自分の意思決定したことをどれくらいがんばっているかを毎日確かめます。振り返りについては、振り返りカードを活用して、朝の会などで全員が振り返ることができる時間を設けるようにしましょう。また、達成状況を踏まえ、必要に応じて新たな目標を設定したり、目標を修正したりします。

※1週間程度、取組状況を振り返った後に、目標達成に向けての手立てを再度考える機会を設けることで、習慣化につながることも期待できます。

掲示された振り返りカードを見る子供たち

② 取組や子供の努力について、家庭へ情報を発信したり、協力を求めたりする

意思決定した目標を実践するのは、ほとんどが家庭で過ごす時間になります。授業参観で今回の授業を行ったり、保護者に本題材の授業のねらいや子供の様子を知らせたりすることで実践への協力を求めると、より子供たちの意欲の向上や成長につながるでしょう。具体的には、学級通信や学年だより、保護者会などで子供の決定した目標や努力している様子を伝えることや、振り返りカードに「家の人から」の欄を設け、保護者から子供の取組や努力を認め、励ましてもらえることなどが考えられます。 家庭環境等により難しい場合は、コメントは「先生から」だけにして、学級担任が努力やがんばりを認め、今後の実践意欲の継続化を図りましょう。

構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝


安部恭子

監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


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