小1国語科「どうぶつの赤ちゃん」板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「どうぶつの赤ちゃん」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属竹早小学校・曽根朋之
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、「文章の中の重要な語や文を考えて選び出すこと」を資質・能力の中心として身に付けられるようにします。
本教材は、ライオンとしまうまという対照的な動物を事例として挙げています。これにより、動物の赤ちゃんには大きな違いがあるということがよく分かる説明文となっています。
また、「もっと読もう」のカンガルーの赤ちゃんの事例も合わせて読むことで、「他の動物の赤ちゃんはどうなのだろう」と児童の興味も広がっていきます。様々な動物の赤ちゃんの様子を比べるために、自分が必要な語や文を文章の中から見つけられるようにしていきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では「他の動物の赤ちゃんを調べる」という言語活動を第三次で設定します。
『どうぶつの赤ちゃん』で、ライオンとしまうまの赤ちゃんを比較することにより、動物の赤ちゃんはそれぞれ大きく異なることがよく分かります。しかし、二つの事例だけでは、大きな違いがあると結論づけるには少ないはずです。
そこで、「もっと読もう」のカンガルーの赤ちゃんの事例を読んだり、他の動物の赤ちゃんについて調べたりする活動へとつなげていきます。クラスでなるべく多くの動物の赤ちゃんを調べ、記録したことを共有することで、様々な動物の赤ちゃんの違いに気付いていきます。
このように、目的をもって調べながら、自分が必要な語や文を文章の中から見つけるという資質・能力を養っていきます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 単元前半で学んだことを、自分が選んだ本で生かす
第三次の活動を、単元の前半で行った活動と似た活動にすることで、活動の見通しをもって粘り強く取り組めるようにします。
また、ライオンとしまうまの赤ちゃんの後にカンガルーの赤ちゃんについて知ると、「他の動物の赤ちゃんとはどうなのだろう。」と疑問をもち始める児童が出てくることが予想されます。その疑問を全体で取り上げ、後半の活動への動機付けとしていきます。
〈対話的な学び〉 他者と調べたことを共有することで、視野を広げる
他の動物の赤ちゃんについて調べる際に、友達が調べたものを見られる環境設定を行います。
第7時では、教室を動きながら友達が書いた内容を見られるようにすることで、困ったときや行き詰まったときにヒントとします。
第8時では、前時までに調べたものを1人1台端末で全員が見られるようにすることで、調べる余地が他にもあることに気付かせます。教室環境を整えたり、1人1台端末を活用したりすることで子供たちの視野を広げられるようにしましょう。
〈深い学び〉 実態に応じて全体で調べ方を確認したり、適した本を提示したりする
第三次では、自分が調べたい動物の赤ちゃんの「生まれたばかりのようす」と「大きくなっていくようす」について調べます。
第一・二次で学んだことを発揮し、深い学びへと近づけるために手立てを講じます。個人で調べる前に、第6時では共通の教材を使って調べ方を確認する時間をとります。
また、『どうぶつの赤ちゃん』に関連するシリーズの本を選定しておき、必要に応じて教師側から提示してもよいでしょう。
教科書通りの情報の書かれ方がされていない文章から、共通の情報(重要な語や文)を選び出すのはややハードルが高いものです。実態に応じて全体で調べ方を確認したり、適した本を提示したりしましょう。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
① 初発の感想や調べたことを共有する
第2時では感想を読み比べる活動を、第8時では調べたことを読み合うという活動を入れています。
その際に、クラスの友達の調べたことを自由に手軽に見られるよう、1人1台端末を活用します。
第2時の目的は、感想の共通点から学習の見通しをもつことです。
第8時の目的は、より多くの情報を手に入れることです。
活動の目的に合わせて、共通点や知らなかったことなどに印をつけながら読む指導をしておくとよいでしょう。また、明らかに書けていない児童がいる場合には配慮する必要もあります。個人が特定されないような配慮も必要に応じて行いましょう。
② 調べ学習での電子書籍の活用
自分で動物の赤ちゃんを調べる活動をする際に、図書館で調べるよさもありますが、読みたい本が子供同士で重複してしまう可能性も考えられます。そこで、図書館で調べることと並行して、1人1台端末も活用していくとよいでしょう。
インターネット検索も一つの方法として考えられますが、『総合百科事典ポプラディア第三版』(ポプラ社)のコンテンツをデジタル化している「Sagasokka!」(ポプラ社)などの電子書籍の活用も有効です。低学年の児童にも分かりやすい解説や、項目に紐づく画像・資料、テーマ分類、おすすめサイト等、デジタルならではの独自の情報も利用することができます。
子供たちが読みたい本が重複することなく、読みたい人が読みたいものを読めるという特徴を生かすと、活動をスムーズに進めることができます。
6. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: じぶんで しらべて くらべて よもう
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時)
① 題名から文章内容を予想する。『どうぶつの赤ちゃん』を読み、問いを確認し感想を書く。
② 感想を1人1台端末を使って読み合う。学習の見通しをもつ。
・第二次(3時、4時、5時)
③ ライオンとしまうまの赤ちゃんの「生まれたばかりの様子」を比べながら読む。
④ ライオンとしまうまの赤ちゃんの「大きくなっていく様子」を比べながら読む。
⑤「カンガルーの赤ちゃん」をライオンとしまうまの赤ちゃんと比べながら読む。
・第三次(6時、7時、8時)
⑥ 他の動物を調べる活動の見通しをもつ。
⑦ 他の動物を調べてカードにまとめる。
⑧ 調べたものをクラスの友達と読み合う。
発展課題:なぜ、作者のますいみつこさんは、『どうぶつの赤ちゃん』にライオンとしまうまの赤ちゃんを選んだのかを考える。
全時間の板書例と指導アイデア
●「主体的な学び」のために
これまでの説明文で「問い」と「答え」を見つけながら読むという経験をしています。
本単元でも、この説明文の「問い」を捉えることから始めます。「問い」を捉える際に、最初にヒントとなるのは題名です。『どうぶつの赤ちゃん』という題名からどうぶつの赤ちゃんのどのようなことを説明するのかを予想することから始めます。
最初の読み聞かせは、教室のテレビなどを使って全体で同じペースで読み進めるとよいでしょう。
問いに注目しながら全体で読み進めると、最初の二文が「問い」であることを全体で確認できます。
その後、続きを読んで「ライオンとしまうまの『生まれたばかりの様子」』と『大きくなっていく様子』を聞いて、驚いたことや、不思議だなあと思ったことを書く」という活動を行います。
ライオンとしまうま、どちらか片方についての感想や、ライオンとしまうまの赤ちゃんを比べた感想も出せるように、板書例のように書き出しを提示してもよいでしょう。
『どうぶつの赤ちゃん』という題名を見て、どのようなことを説明する文章だと思いますか。
どうぶつの赤ちゃんについて詳しく書かれていると思います。
例えば、どんなことが詳しく書かれていそうですか。
見た目とか、大きさとかかな…。
これから読み聞かせますが、動物の赤ちゃんの何について説明しているかを考えながら聞きましょう。どのようなことが説明されるかを知るために、まずは「問い」を見つけるとよいですね。
( 最初の二文だけを読み聞かせる )
「~でしょう。」って最初の二つの文に書いてあるよ。だから、これが「問い」だよ。
この問いから、何について説明しているか分かりますか。
「生まれたばかりのようす」です。
付け足しで、「大きくなっていくようす」についてです。
よく見つけられましたね。素晴らしいですね。では続きを読んでみますよ。
( 続きを読み聞かせる )
ライオンとしまうまの「生まれたばかりのようす」と「大きくなっていくようす」を読んで、「えー!」っていう驚く声も聞こえました。驚いたことや、不思議だなあと思ったことをノートに書いてみましょう。ライオンの赤ちゃんについて、しまうまの赤ちゃんについて、ライオンとしまうまの赤ちゃんを比べて思ったことでもいいです。
イラスト/横井智美