いじめ【わかる!教育ニュース#47】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第47回のテーマは「いじめ」です。

中学生が学校に「つながり」を強く感じていれば、いじめの経験がない

自分がいる場所や組織を大事に思い、自分はそのメンバーの1人だという意識があれば、周りの人を傷付ける振る舞いはしないでしょう。それは学校という場所でも、当てはまるのではないでしょうか。
中学生が学校に対して、愛着や所属意識など「つながり」を強く感じていればいるほど、いじめをした経験がない。そんな傾向が、国立教育政策研究所の分析で浮き彫りになりました(参照データ)。これは、ある2つの市の中学校計40校で、2020年度と21年度に2回ずつ計4回、生徒や教員などに行った調査を基にした検証です。生徒の学校に対する「つながり意識」に着目し、生徒指導上の課題とどう関係するかを調べました。
いじめについては、「仲間外れ、無視、陰口」「軽くぶつかる、たたく」「お金や物を取り上げる」「パソコンやスマートフォンを使った嫌がらせ」など、8つの加害行為を取り上げて、生徒の意識との関連を分析しました。すると、学校とのつながり意識が強いほど、どの加害行為も経験がないという傾向が見えてきたのです。
通っている学校を大切な場所だと思っているなら、同級生をいじめることはない。一見当たり前ですが、誰もが自分の学校に愛着を抱くとは限りません。ならば、学校への愛着や所属意識をいかに育てるかが、いじめを防ぐ鍵になります。

着眼点は「生徒と教員の関係」「教職員という集団」

でも、つながり意識はどうしたら育めるのでしょうか。調査は教職員の在り方に踏み込んで検証しています。
着眼点の一つは、生徒と教員の関係です。まず、先生は自分のことを気にかけてくれる、話をよく聞いてくれる、決まりを守らない人を注意するなど、生徒が教員に温かみや信頼感を抱いていると、良好な学級環境になることを検証。それが生徒自身の責任感や他人を尊重する態度の素地になり、所属意識や愛着の育成に結び付くと考察しました。
もう一つは、教職員という集団。つながり意識を育むことができている学校は、授業改善や生徒の話をよく聞くなどの「生徒への支援」の充実感が教員にある、という前提を基に分析されています。
生徒への支援が充実した学校には、どんな組織文化があるのでしょうか。まず、教職員の間で学級運営や保護者対応などについての「学び合い」があると、仕事への意欲や人間関係に良い影響を及ぼすことを確認しました。それが、生徒に関する情報共有、学校の方針や問題点を巡る共通理解を促すと指摘。生徒と向き合える環境がつくられ、「生徒への支援」が充実するーという構図を見いだしました。その上で、教職員の学び合いを活性化することが重要だと訴えています。
文部科学省によると、2022年度に把握されたいじめは、68万1948件。この数の分だけ、苦しんでいる子がいます。今回の分析は、そういう子たちを少しでも減らすため、新しい視点で対策を考える手がかりになりそうです。

【わかる! 教育ニュース】次回は、5月30日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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