自分の能力はどのように評価される?人事評価制度の実施~シリーズ「実践教育法規」~
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- シリーズ「実践教育法規」
教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第13回は「人事評価制度の実施」について。公立学校教職員の人事評価は、能力評価と業務評価によって行われます。そのほかの規定についてもおさえておきましょう。
執筆/大野 裕己(兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)
【連載】実践教育法規#13
目次
新たな人事評価制度
教員には他職種と異なる職務特性が指摘されるものの、公立学校教職員は地方公務員としての身分を有し、基本的には他の一般職地方公務員と同様に地方公務員法に基づく人事管理制度が適用されます。
かつて地方公務員法のもとでは、任命権者が職員の勤務成績を評定し、記録する(これをもとに適正な人事管理を図る)勤務評定制度が実施されました。勤務評定は公立学校教職員等にも実施されましたが、評定結果が公表されず教職員の処遇・指導育成等に活かし難いなど、その機能が課題視されました。
このような課題意識から、2000年を前後して公務員制度全般の改革として勤務評定の見直しが検討され、2007年国家公務員法改正及び2014年地方公務員法改正を通じて、主体的な能力開発の重視を主軸とする新たな人事評価制度が導入されました。公立学校教職員の人事評価・人事管理の改革も学校教育の文脈を加味する形で同様に進められ、2000年代半ば以降を中心に、多くの都道府県教育委員会において新たな人事評価制度が試行・実施されました。
現行の地方公務員法第6条では、人事評価は「職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」と定義されます。この定義に沿って、人事評価制度では、職員が職務遂行に当たり発揮した能力の実証・評価(能力評価)、職務遂行で挙げた業績の実証・評価(業績評価)が行われることになります。
そして同法は、任命権者が、評価の基準・方法等を定めたうえで定期的に職員の人事評価を行わなければならないこと(第23条の2第1・2項)、そして人事評価を任用、給与、分限その他の人事管理の基礎として活用すること(第23条2項)等について規定しています。
さらに人事評価の実施と関わっては、任命権者に職種・職制上の段階の標準的な職の職務遂行にかかる「標準職務遂行能力」(第15条の2第1項第5号)策定を求めるとともに、人事評価制度の一連の過程を通じて職員の主体的・効果的な能力開発につながるように努めること等の留意点が示されています(2014年8月15日総務省自治行政局長通知)。人事評価制度において、能力本位かつ人材養成の要素が重視されていることがわかります。
なお、市(任命権者である政令指定都市を除く)町村立小・中学校等の教職員の大半を占める県費負担教職員の任命権者は都道府県教育委員会ですが、これら県費負担教職員の人事評価については、都道府県教育委員会の計画のもと、市町村教育委員会が行うことになっています(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第44条)。
目標管理制度の導入も
教員人事評価制度の具体的内容は各都道府県等で多様性を帯びますが、枠組みにおいては共通する点もみられます。
例えば、教諭等の「評価者」としての所属校の管理職等の指定、評価者による「授業観察」及び定期的「評価者面談」の実施、評価結果開示・苦情相談の手続きは、大半の都道府県等で設定されています(文部科学省「平成28年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」2017年12月)。
また、特に業績評価については、各教諭等が所属校の目標・方針等を踏まえた自己目標を予め設定・申告し、自己評価及び評価者による評価を行う「目標管理制度」を導入する都道府県等が多くなっています。この場合、評価者との面談機会が定期的に設定され、自己目標シートを媒介した指導助言が行われます。
評価結果の活用状況は、文部科学省「『令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査について』 4-1人事評価システムの取組状況」のとおりであり、活用しない都道府県等はみられません。活用幅については地域間での多様性が推察されますが、研修や人材育成、そして2014年地方公務員法改正以後大きく伸びた昇給・勤勉手当への反映は共通化しつつあると言えます。
『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正