あの先輩の立場はどれ?主幹教諭・主任教諭・指導教諭の職務~シリーズ「実践教育法規」~

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シリーズ「実践教育法規」
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田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第6回は「主幹教諭・主任教諭・指導教諭の職務」について。これらのちがいについて、きちんと説明できますか?

執筆/藤原 寿幸(横浜国立大学教職大学院准教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#6

学校におけるミドルリーダー

主幹教諭は、学校教育法第37条9項で、「校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の教育をつかさどる」と定められています。

指導教諭については、同条10項で「児童の教育をつかさどり、並びに教諭その他の職員に対して、教育指導の改善及び充実のために必要な指導及び助言を行う」と定められています。2008年4月より、副校長とともに「置くことができる」ようになりました。

【主幹教諭】
管理職を助け、他の教員に指示をすることもできるミドルリーダーです。

2019年1月に公表された中央教育審議会答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」では、目指すべき学校の組織運営体制の在り方の視点から、「経験豊富で専門性の高いミドルリーダーとしての主幹教諭の役割は大きく、主幹教諭の負担軽減措置を講じることにより、教師の適切な役割分担と連携の中で主幹教諭がその役割を十分に果たすことのできる環境整備が重要である」とし、「文部科学省は、主幹教諭の配置により副校長・教頭を含めた教師の業務負担が軽減された好事例・成果を収集・横展開し、主幹教諭の活用を促進していくべきである」と、主幹教諭に負担が集中しないための工夫についても言及しています。

学校組織体制の整備、管理職養成の両面から主幹教諭の配置のさらなる促進が期待されます。

【主任教諭と主任】
主任教諭は東京都教育委員会独自の「職」であり、「校務分掌などにおける学校運営上の重要な役割、指導・監督層である主幹教諭の補佐、同僚や若手職員への助言・支援などの役割を職務内容とする教員」です。

教務主任や学年主任などのいわゆる主任制度における「主任」は、教諭をもって充てることができるため「職」ではありません。

【指導教諭】
児童生徒の教育活動を実施しつつ、他の教員の教育指導の改善のために必要な指導、助言を行う教育活動のリーダーです。

2015年12月に公表された中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」では、配置の成果として「教職員の指導力の向上」、「指導体制、研究体制の充実」、「OJT、校内研修の活性化や質の向上」が挙げられています。課題については「指導教諭の通常の授業時数が多く、期待される校務を処理できない」、「指導教諭の役割等について校内の理解が進んでいない」とする指摘が多いことが挙げられています。

また、今後、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた不断の授業方法の見直しによる授業改善を進める上で大きな役割を果たすことが期待され、「学習指導や生徒指導等に優れた資質・能力を有している教員のキャリアパスとしても重要な意義があることから、指導教諭の配置を促進していくことが重要」とされています。

主幹教諭と指導教諭
文部科学省「学校教育法等の一部を改正する法律について(通知)」(2007年)をもとに作成

重要性と期待が高まる

中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」(2021年)には、「連携・分担による学校マネジメントを実現する」という視点から「主幹教諭、指導教諭をはじめ、経験豊富で専門性の高いミドルリーダーとなる教師がリーダーシップを発揮できるような組織運営を促進することを通じて、教師が子供としっかりと向き合い、教師本来の業務に専門性を発揮できるようにする」とあります。主幹教諭・指導教諭の重要性とその期待が指摘されています。

文部科学省「『令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査について』 5-1校長等人数」によると、国公私立の小・中・義務教育学校合わせて、主幹教諭は2万1009人、指導教諭は2709人が配置されています。配置開始から10年以上経過した現在も、特に指導教諭はその配置は十分とはいえません。

参考文献
勝野正章・窪田眞二・今野健一・中嶋哲彦・野村武司『教育小六法2023 年版』(学陽書房)
窪田眞二・澤田千秋『学校の法律がこれ1冊でわかる 教育法規便覧 令和5年版』(学陽書房)
坂田仰・黒川雅子・河内祥子・山田知代『新訂第4版 図解・表解教育法規』(教育開発研究所)

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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