「副校長」と「教頭」はどうちがう?-校長・副校長・教頭の資格と職務~シリーズ「実践教育法規」~

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田中博之

『規範意識』という言葉があります。それは単に法律や制度に則って行動する、というだけでなく、法律を支える道徳的原理に基づいて行動する、ということです。国の法のもとで運営されている学校機関に勤めるすべての先生にとって、規範意識は教育活動の下支えとなる大切な素養。もちろん、管理職の職務遂行時にはもちろん、昇進試験で問われる大切な知識でもあります。
本連載は、教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、そんな「教育法規」をわかりやすく解説していきます。第5回は「校長・副校長・教頭の資格と職務」について。校長・副校長・教頭それぞれの職務について、詳しく見ていきましょう。

執筆/藤原 寿幸(横浜国立大学教職大学院准教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#5

学校教育法で定められた職務

校長は、「教育職員免許法による教諭の専修免許状又は一種免許状(高等学校及び中等教育学校の校長にあつては、専修免許状)を有し」なおかつ「『教育に関する職』に5年以上あつたこと」、あるいは「教育に関する職に10年以上あつたこと」と定められています(学校教育法施行規則第20条1号、2号)。

また、地域や学校の実態に応じて、「学校の運営上特に必要」な際は教員免許状を有していなくても、「教育に関する職」の経験がなくとも、任命権者の判断により校長として任命・採用することができます(同施行規則第22条)。これは、2000年から登用可となったいわゆる「民間人校長」のことです。これらの校長の資格規定は、教頭(2006年から)・副校長(2008年から)にも準用されています(同施行規則第23条)。

民間人校長のイラスト
 民間企業などから転職した「民間人校長」は、2023年4月1日時点で125人だった。

校長・副校長・教頭のそれぞれの職務とそれに関する法的根拠は以下のとおりです。

【校長】
「校務をつかさどり、所属職員を監督する」(学校教育法第37条4項)

【副校長】
「校長を助け、命を受けて校務をつかさどる(学校教育法第37条5項)」こと(校長の補佐)と、「校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行う(同法同条6項)」こと(校長の職務代理・代行)の2点。また「この場合において、副校長が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、その職務を代理し、又は行う」と定められています(同法同条6項)。

副校長は、2007年の学校教育法の改正により「置くことができる」ようになった新しい職位であり、校長とは異なり必置の職ではありません。その有無は学校設置者の意思に委ねられています。また、「児童の教育をつかさどる」ことが職務に入っていないことが、教頭とは異なります。

【教頭】
「校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる」(学校教育法第37条7項)。そして、校長・副校長職務の代理・代行に関し、「教頭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)に事故があるときは校長の職務を代理し、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)が欠けたときは校長の職務を行う。この場合において、教頭が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、校長の職務を代理し、又は行う」と定められており(同法同条8項)」、ただし、小・中学校においては、「副校長を置くときその他特別の事情のあるときは」、教頭は置かないことができるとされています(同法同条3項)。

副校長との関係性では、「校長の補佐」「校長の職務代理・代行」という点では共通していますが、副校長は教頭が補佐すべき対象となっているという意味で、教頭の上司になることに留意が必要です。

副校長と教頭の職務の差異
文部科学省「学校教育法等の一部を改正する法律について(通知)」(2007年)をもとに作成

女性管理職の配置割合は低い

日本は女性活躍を謳っていますが、女性の管理職(校長・副校長・教頭)の配置状況に着目すると(文部科学省「『令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査について』 5-5校長・副校長・教頭の年齢別登用状況の推移」)、1万5914人で前年比811人増加しているものの、割合でみると23.7%にとどまっており、依然として女性管理職の配置割合は低い状態となっています。さらに全校種副校長・教頭(26.3%)、全校種校長(20.7%)となっており、全体的に副校長・教頭よりも校長がさらに低い割合となっています。

また、小学校校長(26.7%)に比べ、中学校・義務教育学校校長(11.2%)、高等学校・中等教育学校校長(10.6%)となっており、学校種の発達段階が高くなるほど女性管理職の割合が低くなるという傾向も顕著となっています。

参考文献
勝野正章・窪田眞二・今野健一・中嶋哲彦・野村武司『教育小六法2023 年版』(学陽書房)
窪田眞二・澤田千秋『学校の法律がこれ1冊でわかる 教育法規便覧 令和5年版』(学陽書房)
坂田仰・黒川雅子・河内祥子・山田知代『新訂第4版 図解・表解教育法規』(教育開発研究所)

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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