小数と分数を同じと見るときには2つの見方【「系統」を見通し、学年ごとに押さえる! つまずきなしの「分数」指導法 #10】

前回まで新潟市立上所小学校の志田倫明教諭に、5学年の分数指導について説明をしていただきました。今回はその中で、「6学年の指導にも通じる部分があるため、6学年の内容と続けて考えたい」ということで残しておいた、「小数を分数の形に直したり、分数を小数で表したりする」内容から説明をしていただきます。
目次
学習してきたことの意味を問い直す

前回までの5学年の分数指導で、触れずに残しておいた内容があります。それが、「整数及び小数を分数の形に直したり,分数を小数で表したりすること」(学習指導要領、第5学年、2内容A数と計算⑷ア(ア))です。これは、整数や小数(特に小数)と分数を同じ(有理数の一つの表現形態)と見ることであり、それについて改めて学び直すということです。ちなみに分数の意味という点では、5学年までの内容でほぼ完結しています。ですから6学年では、5学年までに学習してきたことを活用して、問題解決を図ることが中心なのですが、その過程で改めて学習してきたことの意味を問い直すことが大切であるため、この5学年の学習内容と一緒に考えていきたいと思います。
さて、小数と分数を同じ数と見るときには、2つの見方があります。言うまでもなく、分数から小数という見方と小数から分数という見方です。これは同じことをやっているように思われますが、分数の学習という観点からすると、実は異なる用い方をしているということを考えていきたいのです。
例えば、「[MATH]\(\frac{9}{4}\)[/MATH]という分数を小数に直すときは、どのように考える?」と投げかけるとしましょう。そのとき、子供たちは9÷4というわり算を行い、その結果として2.25という小数に置き換えます。これは、わり算の結果としての分数[MATH]\(\frac{9}{4}\)[/MATH]を考えるわけですから、[MATH]\(\frac{A}{B}\)[/MATH]=A÷Bという、商としての分数(商分数)の用い方をしているわけです。そのとき、子供たちが着目しているのは、分数をどのようなわり算の式として見るかということになります。
そのように考えていくと、いろいろな分数が小数に置き換えられるわけですが、[MATH]\(\frac{9}{7}\)[/MATH]のような分数だと、9÷7となり、1.285714…というような、ずっと続く小数になります(資料1参照)。このような数に出合うことによって、小数では表すことのできない場合もあるということで、改めて分数の良さを理解することもできるわけです。
(資料1)

一方、小数から分数にするときに、どのように考えているのでしょうか。例えば、0.3を分数に直すときには、わり算をするのではなく0.3を0.1の3つ分と見て、それを[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]が3つと置き換えて、[MATH]\(\frac{3}{10}\)[/MATH]と考えています。これは、[MATH]\(\frac{1}{□}\)[/MATH]という単位分数のいくつ分と見る用い方です。小数点以下第2位までの小数になった場合も同様に考え、例えば0.47なら0.01の47つ(個)分と見て、[MATH]\(\frac{47}{100}\)[/MATH]となります(資料2参照)。
(資料2)

いずれも、小数と分数が同じ有理数を表しているということの理解ではあるのですが、どちらからどちらを見るかということによって、分数の用い方が変わるわけです。このような学習をするときに、ただ単に分数から小数へ、小数から分数へ置き換えができるようになるだけで終わってしまうのは少しもったいないと思います。その際に先のような発問などによって、分数をどのように用いているのか、子供と一緒に押さえておくのは先々の学習をしていく上で、とても価値のあることだと思います。