2年では、もとの大きさと部分の大きさを常に意識しながら指導 【「系統」を見通し、学年ごとに押さえる! つまずきなしの「分数」指導法 #2】

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「系統」を見通し、学年ごとに押さえる! つまずきなしの「分数」指導法

今回は、前回(ここをクリック)の分数指導のむずかしさの原因を踏まえ、2年生の指導内容について具体的にどのような授業づくりをしていけば、すべての子供たちが将来にわたって分数を活用していけるような理解ができるのか、新潟市立上所小学校の志田倫明先生に具体的に説明をしていただきます。

2年生の分数の学習は3学年以降の学習の素地をつくる

志田倫明教諭
新潟市立上所小学校の志田倫明教諭。

前回(ここをクリック)、各学年の指導内容について概説した通り、今回、説明していく2年生の分数の学習は3学年以降の学習の素地をつくるということで、学習指導要領には「[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]や[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]など簡単な分数について知ること」と記されています。なぜ簡単な分数にとどめているかというと、学習指導要領解説(p106)に「[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]のように、具体物を操作することによって得られる大きさを表した、分母が1桁程度の単位分数のことである」とあるように、具体物の操作を通して分数を知ることが大きなねらいだからです。

さらに学習指導要領解説では、現行から12個のおはじきが示され、除法と乗法の素地についても触れていくことが示されています(資料1参照)。

【資料1】学習指導要領算数編解説(p107より抜粋)
学習指導要領算数編解説(p107より抜粋)

この解説からも分かる通り、2学年の指導のポイントは子供の具体的な活動を通して簡単な分数を知ることにあります。例えば、後で紹介するような折り紙を等分するような活動がそれに当たります。このような活動によって、「折り紙を半分にしたときの1つ分を[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]」のように、分数を用いる場面を通して分数を知ることができるようになります。このとき、「折り紙を半分にする操作を[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]」と「操作」に注目した用い方が操作分数であり、「折り紙を半分にしたときの1つ分を[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]」のように等分し終わった「結果」に注目した用い方を分割分数と言います。

さらに、この解説の記述の最後にもある通り、2学年の指導のポイントとなるのは、もとの大きさの1が変わると同じ[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]でも大きさが変わるということの理解です。つまりもとの大きさと部分の大きさを常に意識しながら指導をしていくことが重要になります。

そもそも分数は(前回ご説明したように)有理数の表現形式の一つであり、子供たちにとっては「数」です。では分数の学習に入るまで、子供たちが数をどのように学んできたかというと、1年生の教科書を見ると分かる通り、クマも切り株もブロックもすべて1つあれば1です。大きさや物や色や形を捨象して、「1匹、2匹、3匹…」「1個、2個、3個…」と数詞で数えていくことに対応して数を学んできました。ですから、アリも1匹ですし、ゾウも1頭であり、2ついればアリも2匹、ゾウも2頭となります。これが操作による理解で、子供は操作を通して1、2という量として判断して数を学んできているのです。

もとになる「1」が同じであれば、分け方は違っても「[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]」は同じ大きさ

さて、具体的な2学年の分数指導の内容に入っていくことにしましょう。
分数の学習では折り紙を使って学ぶことが多いと思います。折り紙を半分に折ってピッタリ重なって半分になったものを[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]だと学んでいくわけですが、このときに、本当に子供が[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]を量として捉えているのかというところがむずかしいところです。もしかしたら、形としてしか捉えていないかもしれません。縦に折ってできた2つの長方形は重ねればピッタリ重なりますし、斜めに折ってできた直角二等辺三角形もピッタリ重ね合わせることができますから、同じ量で[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]と授業でも確認することができるでしょう(資料2参照)。

【資料2】

2学年分数 資料2

しかし、この長方形と直角二等辺三角形はそれぞれ形が同じだから(重なるから)、同じ量で[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]と捉えている子供もいるかもしれません。それについて子供たちに問いかけ、一緒に考えてみることが大切です。「折り紙を縦に折ったAさんと斜めに折ったBさんは同じ大きさと言っていいのかな?」と問うと、実際に「形が違うから同じではない」「重ならないから同じではない」といった意見が出てくるかもしれません。しかし、対話を通しながら、異なる図形の一部分を切って変形などして説明し、最終的には「もとになる同じ大きさの折り紙を2つに分けた1つ分だから(長方形も直角二等辺三角形も)どちらも同じ大きさだよ」ということが理解できるはずです(資料3参照)。

【資料3】

2学年分数 資料3

それが理解できたら、もとの大きさの異なる大小の正方形、円や長方形など形の異なる図形を使って学習していけば、いろいろな形や大きさの1から[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]ができることを体験し、さらに同じ[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]でも、もとになる大きさが異なれば「量」として異なることを感じ始めていくことでしょう(資料4参照)。

【資料4】

2学年分数 資料4

もとになる「1」の大きさが変わると、同じ「[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]」でも数(=量)が変わる

ここから、「イチゴが12個のっているケーキを同じ大きさに切る」というような学習をしていきます。これは、先に紹介をした学習指導要領解説にある除法と乗法の素地指導につながっていくものです(資料1の図参照)。しかし、このときすぐに[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]に切り分ける学習に入っていくのではなく、意図的にもとになる大きさが異なり、18個のイチゴがのっている大きなケーキを設定し、それぞれを2つに切るような学習を入れてみるとよいでしょう。そうすることによって、もとになる「1」の大きさが変わると、同じ「[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]」でも数(=量)が変わる、という気付きがより確かな理解になっていくはずです。

その上で12を2等分、3等分、4等分していく学習を進め、12を2等分すれば6と6に分けられ、12を3等分すると4と4と4、12を4等分すると3と3と3と3ということを操作を通しながら、すでに学習した「かけ算に似ている」ということを実感していく、除法や乗法の素地指導を行っていくとよいでしょう。

12個のマス目からなる長方形をもとにした問題に取り組む

これまで説明してきたような学習を通して、もとの大きさの1が変わると、同じ[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH](や[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH])でも大きさが変わるということ、もとの大きさが同じであれば[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH](や[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH])も同じで、形などに左右されないということがしっかり理解できれば、子供たちにとって楽しい発展的な学習をしていくことも可能になります。

これは実際に私のクラスで行った授業ですが、12個のマス目からなる長方形をもとにして、「どんな[MATH]\(\frac{1}{□}\)[/MATH]があるかな」という問題に取り組みました。子供たちはすでに形に捉われずに考えられるようになっているので、例えば[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]も、異なるテトリスのブロックのようなものを使って考えていきます(画像参照)。やがて、マス目を斜めに切って変形する子供も出てくるなど、本当に楽しい学習ができました。

やはり、2学年の分数の学習では、もとになるものは何か、もとになるものが変われば部分(等分したもの)の大きさが変わるということを子供たちが意識して学習していくようにすることが大事です。それができていれば、もとが2mになったら[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]は何mか(前回紹介した全国学力調査の問題)といった、3学年以降の内容にもスムーズに入っていくことができると思います。

授業の板書
志田教諭が行った「どんな[MATH]\(\frac{1}{□}\)[/MATH]があるかな」を考える授業の板書。
子供達の授業風景1
子供達の授業風景2
形を捨象し、[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]の量を捉えることができるようになった子供たち。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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