低学年から始める安全で楽しい <運動会 新時代の組体操>

埼玉県公立小学校教頭

戸田克
新時代の組体操ポップンフラワーの写真

春の運動会の季節がやってきました。運動会で、組体操を披露する小学校も増えているのではないでしょうか。「新時代の組体操」は、2段(着地している人の上に1段乗っている。見かけ上の3段も含む)までの広がりのある技ばかり。安全に留意し子供の実態に合わせて、組体操の技を選んだり、子供たち自身が自分たちでできる技を選択したりして演技を組み立ててはいかがでしょう。低学年から始める「新時代の組体操」を埼玉県組体操協会・戸田克先生に紹介していただきます。

監修/埼玉県組体操協会・戸田 克、菅野智也

低・中学年向け

1人技編

1 基本的な技の流れ
直立(気を付け)→前方バランス→水平バランス→カエル倒立→V字バランス→片手バランス→ブリッジ→肩倒立→起き上がりの順に演技します。

↓<1を紹介します>

2人技編

2 高床式倉庫
互いに足を支え合うことでバランスを保ちます。腕が屋根、飛び出した足が “ねずみ返し” を表しています。
①体の前後で互いの足を順に持つ。
②手を合わせて高く上げる。
3 ツインピークス
互いに足裏で押し合いながら肩倒立の姿勢になり、足を高く上げて山を表現します。
①手をつなぎ足裏を合わせて仰向けになる。
②足を伸ばす。
③足裏を押し合いながら足を高く上げる。
4 座サボテン(またぐスタイル)
座位でのサボテンです。高さはありませんが、前後に開くバランスの美しさを表すことができます。
①座位の人の膝をまたいで立つ。
②膝の上を持つ。
③土台が後ろに傾き、立位の人が前に反り出す。
5 あやとり
2人が向かい合わせで手をつないだままV字バランスを行い、つないだ手の外側や内側に足を移動します。
①手をつないで足裏を合わせて高く上げる。
②両足同時、片足ずつなど足を腕の外に出したり入れたりする。
6 ダブルブリッジ
2人がブリッジをし、足裏を合わせて足を高く上げます。
①間隔を調節してブリッジをする。
②片方の足裏を合わせて高く上げる。
7 参考技 補助倒立
補助者が倒立者の足を受け止め、倒立をします。
①間隔を空ける。
②補助者は先に上がってきた足を受け止める。
③補助者は両足を持ち、ひじを伸ばす。

↓<2~7までを順に紹介します>

3人技編

8 デルタ~開脚デルタ
3人が中心向きに手をつなぎ、足裏を合わせて高く上げます。さらに、つないだ手の外側に足を移動します。3人の気持ちがそろう気持ちのよい技です。
①手をつないで体育座りになる。
②足裏を合わせて高く上げる。
③足を腕の外に出す。
9 カブト~スーパーカブト
中央の馬に左右から片手バランスを行い、「かぶと」を表します。さらに、中央が床から手を離して無重力感を表します。
①馬の腰に手を当てて片手バランスをする。
②馬が手を離す。
10 逆さマンモス
中央がマンモスの顔、ブリッジした2人が牙を表した技です。
①中央の肩にブリッジした2人の足を乗せる。
②中央が手を上げる。
11 3人扇
3人で手をつないで扇の形になり、瞬時に開いたり閉じたりします。最後は前方に倒れます。
①手をつないでしゃがむ。
②合図に合わせて瞬時に立つ。
③片手バランスになる。

↓<8~11までを順に紹介します>

5人で演技編

12 チェーン~回転
同じ腕の動きをしながら、最後に5人の手がチェーンのようにつながります。みんながつながったら足踏みをしながら、列全体が回転します。
【チェーン】左手→右手→両手を上下→ぐるっと回して隣とつながる。
【回転】足踏みをしながら、8呼間で180度回転する。

↓<12を紹介します>

13 ポップンフラワー
5人で円になり、リズムに合わせて1人技を同時に行ったり時間差で行ったりして自分たちで考えた花を表現します。
16呼間を1セットとして、8呼間で花が開く、8呼間で花が閉じる様子を1人技を使って表現する。

↓<13を紹介します>

高学年向け

1人技編

h-1 基本的な技の流れ
直立(気を付け)→前方バランス→水平バランス→カエル倒立→V字バランス→片手バランス→ブリッジ→肩倒立→起き上がりの順に演技します。

h-1+ 発展的な技を追加した流れ
実態に応じて、発展技(太字の技)をいくつか追加してみましょう。
前方バランス→水平バランス→カエル倒立→開脚カエル倒立→V字バランス→開脚V字バランス→片手バランス→ワンサイド→ブリッジ→脚上げブリッジ→肩倒立→スロープ→起き上がりの順に演技します。

※映像は「h-1+発展的な技を追加した流れ」を紹介しています。実際に取り組む際は技を適宜選択してください。

↓<h-1+を紹介します>

2人技編

<同体格>

h-2 高床式倉庫
互いに足を支え合うことでバランスを保ちます。腕が屋根、飛び出した足が“ねずみ返し”を表しています。
①体の前後で互いの足を順に持つ。
②手を合わせて高く上げる。
h-3 ツインピークス~開脚
互いに足裏で押し合いながら肩倒立の姿勢になり、足を高く上げて山を表現します。開脚することで連山を表します。
①手をつなぎ、足裏を合わせて仰向けになる。
②足を伸ばす。
③足裏を押し合いながら足を高く上げる。
④開脚する。
h-4 ダブルブリッジ
2人がブリッジをし、足裏を合わせて足を高く上げます。
①間隔を調節してブリッジをする。
②片方の足裏を合わせて高く上げる。
h-5 補助倒立
補助者が倒立者の足を受け止め、倒立をします。
①間隔を空ける。
②補助者は先に上がってきた足を受け止める。
③補助者は両足を持ち、ひじを伸ばす。

↓<h-2~h-5までを順に紹介します>

<体格差>
※体格差があったほうが行いやすい技です。技のポイントを知ることで体格差が小さくても行えるものもあります。

h-6 しゃちほこ
上段の人が腕立て姿勢になり、足を下段の人に持ち上げられることで反りが美しいしゃちほこを表します。
①長座の人の足首あたりに手を付き、足を肩に乗せる。
②膝の上あたりを持って高く上げる。
h-7 おむすび
長座と立位で手を合わせてバランスを取り合っておむすび形をつくります。
①長座の人は前に体を倒すように腕を伸ばす。
②手を合わせてバランスをとる。
h-8 バベル
あおむけ馬を2段重ねた塔をつくります。指先の向きが外側に向くように気を付けます。
①下段があおむけの馬姿勢になる(指先は外側を向く)。
②上段が手→手→足→足の順に乗る。

↓<h-6~h-8までを順に紹介します>

3人技編

h-9 デルタ~開脚デルタ
3人が中心向きに手をつなぎ、足裏を合わせて高く上げます。さらに、つないだ手の外側に足を移動します。腕や脚など体の部位を使ってたくさんの三角形ができる、図形的に美しい技です。
①手をつないで体育座りになる。
②足裏を合わせて高く上げる。
③足を腕の外に出す。
h-10  カブト~スーパーカブト
中央の馬に左右から片手バランスを行い、「かぶと」を表します。さらに、中央が床から手を離して無重力感を表します。
①馬の腰に手を当てて片手バランスをする。
②馬が手を離す。
h-11  逆さマンモス(中央が立膝)
中央がマンモスの顔、ブリッジした2人が牙を表した技です。
①中央の肩にブリッジ者の足を乗せる。
②中央が手を上げる。
h-12  よろいかぶと
倒立と2人の片足立ちでよろいかぶとを表します。
①両脇が補助をして中央が倒立をする。
②両脇が中央の足を持ち、片足でバランスをとる。

↓<h-9~h-12までを順に紹介します>

4人技編

h-13  おむすび背中合わせ
長座の人が背中合わせとなっておむすびをつくります。長座の人が互いにバランスを保つことができるので、立位の人が長座の人と手を合わせます。
①中心で長座の人が背中合わせに座る。
②手を合わせてバランスをとる。
h-14  アルペンホルン
腕立て、肩倒立などを組み合わせ、4人で大きなアルペンホルンを表現します。
①馬の上にあおむけになる。
②立位の人があおむけの人の足を持つ。
③馬の前で腕立て姿勢になり、足を馬の肩に乗せる。
h-15  4人扇
外側の2人が前に倒れるのを背中合わせの2人がバランスをとって絶妙な扇を表します。
①中央の人が背中合わせになり、背面に腕を伸ばす。
②外側の人は中央の人と手をつなぎ、バランスを取りながら前に傾く。
h-16  ギガンティックスライド
ブリッジ、力比べを組み合わせて、巨人のすべり台を表します。
①力比べの上の人の足を立位の人が持つ。
②ブリッジの人は力比べの下の人の肩に足をかける。

↓<h-13~h-16までを順に紹介します>

演技編

h-17  千手観音
同じ動きを時間差で表現します。両手を前の人から順に時間差で上げていき、前から見ると千手観音のように手が伸びます。全員が2呼間ずつずらす演技、4人ずつ同じ動きをする演技などがあります。実態に合わせて行いましょう。動画は指導の様子も見られます。
①8呼間で腕を上げる・8呼間で腕を下げるを繰り返す。
②1つ後ろの人は2拍ずらして行う。

↓<h-17を紹介します>

h-18  ポップンフラワー
5人で円になり、リズムに合わせて1人技を同時に行ったり時間差で行ったりして自分たちで考えた花を表現します。
16呼間を1セットとして、8呼間で花が開く、8呼間で花が閉じる様子を1人技を使って表現する。

↓<h-18を紹介します>

h-19  ポップアップピラミッド~ウイングピラミッド
伏せた状態から瞬時に起き上がるピラミッドは、見る人の驚きと感動を呼び起こします。さらに、1段目の両端が抜けて翼が広がったウイングピラミッド、中央が抜けて天空にそびえるスカイピラミッドの完成です。
【ポップアップピラミッド】
①伏せて待つ。
②合図に合わせて起き上がる。
③合図に合わせて伏せる。
ウイングピラミッド
④1段目の両脇が横に抜ける。
スカイピラミッド
⑤1段目の中央が前に抜ける。

↓<h-19を紹介します>

運動会の演技(例)

入場
1人技
2人技
3人技
ポップンフラワー
ポップアップピラミッド~ウイングピラミッド
退場
※千手観音やウェーブと入れ替えたり、隊形を変えて同じ技を行ったりするなど、実態に応じて構成しましょう。

子供の実態に合わせた安全な技を

埼玉県組体操協会・戸田 克

組体操は、器械運動、体力を高める運動、体ほぐし、表現的要素を含む、体育の総合的な学習とも言えます。新時代の組体操は、2段(着地している人の上に1段乗っている。見かけ上の3段も含む)を越えない、安全で広がりのある技になります。学校によって実態が大きく異なりますので、子供たちに負担がかかりすぎないように技を選択するのが新時代の組体操の考え方の1つです。
組体操の基礎基本を理解すると、子供たちが技の練習を行い、仲間とともに安全に留意して取り組みます。そして、子供たちは身に付けた技を自信をもって行い、主体的にいろいろな技をつくり出す姿が見られます。
運動会で新時代の組体操を演技するときには、運動会直前になって技の練習を始めるのではなく、年間を通してブリッジや壁倒立・補助倒立などに取り組んで逆さ感覚や腕支持感覚、柔軟性などの諸感覚を高め、器械運動や体力を高める運動などを通して経験豊かにしておくことが大切です。

取材・文・構成/浅原孝子 撮影/北村瑞斗

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!

学校行事の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました