離任式、着任式 話し方の極意
新年度の最初、離任式や着任式の季節がきました。離任式や着任式でどのように話すと印象深いものになるのでしょうか。様々な場面で話すことの多い元埼玉県公立小学校校長・藤川英子先生に、離任式、着任式でのあいさつの極意を教えていただきました。
監修/元埼玉県公立小学校校長・藤川英子
目次
離任式編
離任式は、お別れのあいさつをする場です。子供たちの未来に向けて話し、感謝の心を伝えます。各小学校によって離任式の方法は多彩になっています。例えば、対面が多かった時代から、特にコロナ禍を経て、オンラインや動画メッセージ、音声など多岐にわたる方法で行われるようになっています。
前もって、ご自身の小学校がどのような方法の離任式をされるのかを知ることが大切です。
ここでは、主に対面での離任式について紹介しましょう。
離任式でのあいさつ 一番伝えたいことを
●話す時間
離任式に出席する先生の人数によって、1人が話すもち時間が異なることが多いようです。人数が多いと短くなり、人数が少ないと長くなるという傾向になります。短いときには、ひと言ずつという場合もあります。しかし、長くても3分間程度までにとどめておくことをおすすめします。「1人のあいさつの時間はどれくらいありますか?」とあらかじめ聞いておくと話をまとめやすいでしょう。
●話す内容
話す内容は形式にとらわれず、それぞれの先生が表現できる最大のことを伝えるようにします。子供たちとのお別れの場なので、子供たちとの思い出となるキーワードを1つ入れると話の核ができます。話のメインとなるエピソードは端的に表現します。最後は、お世話になった先生や地域、保護者への感謝の言葉で締めくくるとよいでしょう。
●離任式での留意点
離任した先生のために学級でお別れ会を開く場合があります。お別れ会では、離任の先生が主役になることと思います。その場の触れ合いを大切にしましょう。名残惜しいとは思いますが、先生方は仕事がある中で離任式やお別れ会を設定しているので、迷惑にならないよう、退出時間はきちんと守るようにします。
また、お別れ会などで盛り上がり、先生の個人情報を聞いてくる子供がいるかもしれません。しかし、個人情報を知らせるのはNGです。その点、十分気を付けましょう。
着任式編
着任式は、新しい出会いの場。第一印象が大切です。子供たちに話しやすい先生だと思われるように希望のある出会いにしましょう。
着任式でのあいさつ 明るい印象に
●話す時間
話す時間は学校によって異なります。着任する先生の人数によって異なることが多いようです。1人何分間の設定なのかをあらかじめ聞いておくとよいでしょう。離任式よりもずっと短く考えておくとよいでしょう。
●話す内容
例えば、「子供たちのあいさつがさわやかですてきですね」「子供たちの目が輝いています」「校歌の歌声に感動しました」など、先生が着任しての印象を端的に伝えるとよいでしょう。子供たちはほめられることで、認めてくれていると感じてぐっと話に引き込まれます。自己紹介をして、先生の子供たちへの思いを伝え、「いっしょにがんばりましょう」などと子供たちを巻き込みます。インパクトのある言葉、笑顔と明るいトーンで、親しみやすく意欲あふれる先生という第一印象を大切にしましょう。
藤川先生の「話すときの心がけ」
相手が自分事として捉える話を
話すときに、私が一番心がけていることは、相手をよく知るということです。だれに対して話をするか、子供たちや保護者、先生方に向けてなど対象者によって話し方や内容を変えているからです。例えば、低学年の子供に向けて話すとすると、内容や言葉をその子供たちに分かるようにやさしくします。ときには、私が話すのではなく、学校のキャラクターが話しているというふうにすると、子供たちは興味深く聴いてくれます。
話をするだけではなく、写真やイラスト、動画などの画像もよく活用します。ビジュアルが入るので、視覚的に分かりやすく、伝えたいことが伝わりやすくなります。
私は雛形はできるだけ見ないようにしています。なぜなら自分の言葉で相手の目を見て伝えたいからです。話すことに慣れないうちは、生成AIを活用したり、話型を検索したりして参考にすることもよいかもしれません。しかし、活用はしても、最終的には自分自身の言葉で話す、心から相手に伝えることが大事です。
要は、伝えたいことが伝わり、どのように話すと相手に自分事として聴いてもらえるか、「光る言葉」とともに話の組み立てが重要です。聴いている人たちが自分事として捉えられるように、何をどのように伝えるか、自分ならではの演出や伝え方を考え、声のトーンや抑揚を工夫して、自信をもって伝えると話すことが楽しくなってくると思います。
取材・文・構成・撮影/浅原孝子 イラスト/セキ・ウサコ