年度末・学期末の掃除指導のひと工夫

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松下隼司の笑って!!エヴリディ
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大阪府公立小学校教諭

松下隼司

年度末は、教室や廊下、階段、トイレなどの大掃除に力が入るかと思います。次年度になって、新しい学年の子どもたちや先生が教室に入ったときに「わぁ~、きれいな教室! うれしいなぁ」と思ってもらえるように、しっかり掃除をしておきたいものですね。そこで今回は、掃除嫌いの子どものやる気も爆上がり間違いなしの、年度末や学期末の大掃除の指導の工夫を紹介します

【連載】松下隼司の笑って!!エヴリディ

雑巾での拭き掃除の難点

私は小学校教師になって、今年で21年目です。その間ず~~~っと、拭き掃除は、雑巾を子どもたちに使わせてきました。理由は特になく、ただ、普段の机拭きなどでは、雑巾を使うことが当たり前だと思っていたからです。

でも、雑巾での拭き掃除には、次のような難点がありました。

①雑巾を水に濡らして、しぼらないといけない

から拭きだったら、雑巾を水で濡らす必要はありません。しかし、机、ロッカーの中、靴箱の中、床や壁などの拭き掃除は、雑巾を水で濡らして使います。

そこで、

雑巾を水で濡らしたら、しっかり絞って使おうね。
拭き掃除が終わって、雑巾を水道場で洗ったら、雑巾をしっかり絞ろうね。

などと事前指導をします。

しかし、この「しっかり絞ろうね」の「しっかり」感がどのくらいなのかを、子どもたちが分かっていないことがあります。

だから、「雑巾をしっかり絞るとは、どのくらいなのか」を、教師や腕力のある子どもが見本を見せてきました。

それでも、絞りきれていなくて、ぽたぽたと水滴が垂れている雑巾があります。それどころか、使い終わった雑巾を洗っていなくて汚れがついたままの雑巾もあります。

そのような雑巾を見つけると、私はイライラしてしまい、

ちゃんと洗ってや!
ちゃんと絞ってや!

と感情的に指導してしまうこともありました。

②水道場が混む

30人の学級の場合、30人が一斉に雑巾での拭き掃除を始められません。水道場が混むからです。蛇口の数は、30人全員が一度に使えるほど多くありません。もし、一斉に雑巾での拭き掃除を始めたら、水道場が混雑して、待ち時間に私語が大きくなり、騒然となってしまいます。ケンカなどの揉め事が起こる可能性もあります。

だから私は、雑巾での拭き掃除を子どもたちにさせるときは、時間差をつけていました。

例えば、隣の席同士でペアになって、2人のうち1人ずつ、拭き掃除をするのです。1人が雑巾での拭き掃除をして、もう1人はお道具箱の片づけや、読書などの自学をします。この時間調整の工夫で、水道場の混雑を防ぐことができるのはいいのですが、時間が2倍かかることになってしまいます。

③ロッカーの中の隅の汚れがとれにくい

子どもたちがランドセルなどを入れるロッカーで、汚れが溜まっているところは、隅っこです。特に、1番下の段にあるロッカーは、床のほこりが舞い込み、汚れています。

このロッカーの中の角の拭き掃除は、雑巾では難しいのです。雑巾は分厚いので汚れに雑巾が届かなくて、拭きとれないからです。同じように、窓やドアのレール部分も、雑巾での掃除は難しくなります。

④雑巾が汚れても洗わず、そのまま拭き続けてしまう

子どもたちに拭き掃除をさせたら、一度も雑巾を水で洗わずに拭き続ける子どもがいます。

いくら事前に教師が、

雑巾で拭き掃除をしていて、真っ黒になってきたら、1回、水で洗って、雑巾をきれいにしてから拭き掃除を再開してね。汚い雑巾で拭いたら、余計に汚れがついてしまうからね。

と言っても、面倒くさがる子どもがいるものです。

そこで私は、雑巾の代わりに、ウェットシートで拭き掃除をさせることにしました。

下の画像は、ウェットシートでロッカーの中を拭いている子どもたちの様子です。

ウェットシートでの拭き掃除 3つの良さ

ウェットシートでの拭き掃除には、次のような良さがありました。

①雑巾のように水で洗う必要がない

ウェットシートを1枚、手にとったら、すぐに拭き掃除を始められます。これが子どもたちに大好評でした。

3月は、まだまだ水を冷たく感じる時期です。今は、昔と違って、温かい水が出る水道が増えました。普段、寒い季節は温水で手洗いなどをすることに慣れている子どもたちにとって、冷たい水を触ることは「地獄」だと感じるそうです。(昭和生まれの私は、何とも思わないのですが……。冬の水は、冷たくて当たり前だと思うのですが・笑)

冷たい水で雑巾を洗う必要がなくなって、子どもたちはとても嬉しそうでした♪ それだけで、拭き掃除のモチベーションがものすごく高まったようです。

また、汚くなった雑巾を触るのを嫌がる子どもたちにとっても、使い捨てのウェットシートは大好評でした。

最近は、テーブルなどを拭く際も、雑巾ではなく、ウェットシートを使う家庭が増えています。雑巾を使うことを当たり前だと感じる昭和生まれの私でも、雑巾って汚れがついていて不衛生かも? と思って、ウェットシートを使うことが増えました。

②雑巾では届かないところまで汚れが落ちる

ウェットシートは、雑巾に比べてとても薄いです。その分、雑巾の厚さでは届かない部分の汚れを拭きとることができます。

特に、ランドセルなどを入れるロッカーの中の隅、窓やドアのレール部分、1人1台端末を入れるロッカーの中を拭くのに役立ちました。

雑巾よりも薄いウェットシートは、指先の力が伝わりやすく、汚れもとれやすくなります。その結果、ウェットシートで拭くと、雑巾を使ったときよりも、真っ黒になりました。目で見て分かりやすいので、掃除をした達成感、充実感を得られやすくなります。

③「先生、ありがとうございます!」と感謝される

100円均一でウェットシートを買って、教室に持って行きました。私が購入したものは、1袋に25枚も入っていました。

みんなのために、掃除アイテムを買ってきましたー!

と言って、子どもたち一人一人に1枚ずつウェットシートをとってもらいます。

雑巾で拭き掃除をしてきた子どもたちにとって、ウェットシートでの拭き掃除は嬉しく感じるようで、想像以上に喜んでもらえました。力を入れて拭き掃除に取り組んでくれました。

普段の掃除には金銭的にも環境的にもよろしくないかもしれませんが、大掃除では、使い捨てのウェットシートを使ってみるのも、アリだと思います!


松下隼司先生

松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。

イラスト/したらみ 横井智美

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