小学校理科での「実験結果の見通し」の必要性 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
理科の壺 小学校理科での「実験結果の見通し」の必要性

「実験結果の見通し」という言葉があります。これは、実験方法が決まった後に自分の予想通りになるとすれば、実際の実験ではどのような結果になるか予想することです。普段「予想」と聞くと、問題を見いだした後に「なぜだと思う?」と聞かれたときに考えることを指しますが、もう一つの予想の場面といえます。
今回は、その「実験結果の予想」についての説明です。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/神奈川県公立小学校教諭・山口俊貴
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

はじめに

小学校の理科における問題解決学習において、子どもたちが実験を行う前に予想に合わせて実験結果を見通すことは、学びを明確にします。結果の見通しを行うことで、科学的な概念や原理を抽象的でなく具体的に理解することにつながります。

1.どうして結果の見通しが大切なのか?  

結果の見通しとは、問題解決の過程で自らの予想や仮説を基に実験計画を立案し、実験を行う前に予想が確かめられた場合に得られる実験結果をあらかじめ考えることです。全国学力・学習状況調査の中でも平成27年度、平成30年度実施調査における課題として、予想が確かめられた場合に得られる結果を見通して実験を構想することには課題があるとされています。

理科の学習の中で実験とは、問題に対する自らの予想や仮説を検証するために行います。しかし、子どもたちは往々にして結果と予想を関連付けて考えられないことがあります。
また、自らがイメージしている検証方法と異なる方法を行った場合、結果が何を意味するのかを捉えられないということが起こります。
さらに考察の場面では、複数の結果をもとに考察すると予想と結果を関連付けられず、一つ一つの結果から何が言えるのか正しく捉えられない場合があります。

これらのようなことが起りにくくするために、自らの予想を立て、実験計画を立案し、実験を行う前に、「この実験を行うと、私の予想は〇〇だから~になるはずだ」といったことを考える場面を設定していきたいというわけです。結果の見通しを行う活動を取り入れることで、結果から得られる考察を表現しやすくなることや、実験方法が妥当であるかを検討することにつながります。

問題解決の過程

2.結果を見通す活動の設定(例)

予想や仮説を基に実験計画を立案し、自分の予想が正しい場合の、実験結果の予想を表現させる場を設定します。

実験を行う前に、教師が「自分の予想が正しかったら、どんな結果になると思う?」「今回の実験では、みんなの予想が正しいとしたら、それぞれどんな結果になるか話し合ってみよう」といった声かけを行うことが考えられます。

実験前に予想する子供

例 第4学年「電気の働き」
問題:電流は回路の中をどのように流れているのだろうか

<予想>

Aさんの予想
Bさんの予想
Cさんの予想

実験前(結果を見通す活動)

結果の見通しを促す先生
結果を見通しながら予想するAさん
結果を見通しながら予想するBさん
結果を見通しながら予想するCさん

3.結果を見通す際のポイント

上記の実験のように、具体的な数値が出たとしても、自分の予想が正しかったのかどうかがわからなくなってしまう子どもがどうしても出てしまうことがあります。結果の見通しを行うことによって、その後の問題解決をスムーズに進めることや、結果に対する理解を深めることにつながります。

ここでは、結果を見通す活動を取り入れる際のポイントについて説明します。大きく分けて2つのポイントがあります。

ポイント①予想を行う際に言葉だけでなく図などにも表現しておくことです。結果を見通す活動は、予想の曖昧な状況から結果の予想として具体的にイメージする作業と言えます。自分の予想を表現する際に図なども用いて表現しておくことで、結果の見通しをスムーズに行うことにつながります。また、今回行おうとしている実験が自分の予想を確かめられるかどうかを再度検討することにもつながります。

ポイント②結果を見通す際に、自分が実験結果の予想をするだけではなく、自分と異なる他者の予想についても話し合う場を設定し、共有することです。必ずしも自分の予想が正しいとは限らないため、結果の見通しは自分の予想とは異なる予想を立てている他者の結果の見通しについても知っておくことで、妥当性のある考察につながると考えられます。

さいごに

問題や予想によっては、結果の見通しが必要ない場合もあります。問題や予想が極めて焦点化されており、具体的な場合です。子どもの実態や状況に応じて、ぜひ “結果の見通し” を行ってみてください。

イラスト/難波孝

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山口俊貴教諭

<執筆者プロフィール>
山口俊貴●やまぐち・としき 横浜市立戸部小学校教諭。総合的な学習の時間の研究校にいながら理科の実践研究も行っている。横浜市理科研究会会員。CST会員(神奈川県理科中核教員)。SSTA横浜支部会員。


寺本貴啓教授

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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