「育てていきたくなる3D学級目標」子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア#1

連載
子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア
特集
学級開き特集ー自己紹介・学級目標・保護者対応etc.ー

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
「子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア」バナー 執筆:鈴木優太

自ら考え、活動したり学習したりする子供たちの可能性は無限大。そうした子供の内に秘めている可能性を引き出すための「学級経営&授業アイデア」を紹介する連載です。『教室ギア56』(東洋館出版社)などの著書をもつ鈴木優太先生が、学級活動、教室環境、授業アイデアなどの中から、毎月1本厳選して解説します。第1回は、「3D学級目標」を取り上げます。

執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太

仲間と協力してインパクト絶大な巨大造形物を制作

「一人一人の自己実現(個人目標)を達成できる集団の道しるべ」がある学級は、多少のことではぐらつきません。この道しるべが、学級目標です。

学級経営の拠り所となる学級目標づくりのポイントはただ1つです。

願いをもって終業式まで「育てていく」ことです。

育てていきたくなるためのアイデアが、「3D学級目標」です。

友達と協力して「3D学級目標」を制作する2年生の子供たち。
友達と協力して「3D学級目標」を制作する2年生の子供たち。

巨大な造形物を仲間と共同制作する体験は、一生の中でそう多くはありません。これが最初で最後という子もいるでしょう。労力も時間もかかります。しかし、コストをかけるだけの価値がこの過程にあるのです。出来上がりの達成感も造形物のインパクトも絶大。教室という場所だから可能な、唯一無二の尊い体験をしないのはもったいないことです。

「3D学級目標」制作の手順

学級目標は4月に慌ただしくつくらないといけないものではありません。何月につくってもよいものです。知っていて損はない、「3D学級目標」の作り方を今回は紹介します。

1.デザインコンテストを開催する

学級目標を決める話合い活動には収束のコツがあります。「合言葉」というキラーフレーズを用いるなど、学級目標づくりの詳細な手順は、「『願いごと』と『合言葉』でインパクト大の3D学級目標【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】②」をご覧ください。

学級目標が決まったら、時を空けずにデザインコンテストをします。

たいやき」(のしく、きおいがあって、さしく、びしくもできる)と決めた2年生の学級目標を例に見ていきます。抽象的な願いをイラストを通して具現化する第一歩です。話合い活動の跡(話合いで使った短冊や板書の写真など)が目に入るようにしましょう。希望者だけがイラストを描いたこともありましたが、図工の授業や学活などの時間に、全員でデザインに取り組むことをおすすめします。

【3D学級目標 デザインコンテストの手順】
①真っ白な紙に1人1枚イラストを描く
②学級全員のイラストを黒板に貼り出す
③1人3票を投票する
④ベスト3となった3名がプロジェクトリーダーになる

3D学級目標のデザインコンテストのために、子供が描いたイラスト。一人一人の作品を黒板に貼り、投票を開始する。
3D学級目標のデザインコンテストのために、子供が描いたイラスト。一人一人の作品を黒板に貼り、投票を開始する。

私は、真っ白な紙を「かしこまらない紙」と呼んで、子供たちに配付しています。かしこまらずに、自由な発想で描いてほしいからです。

十人十色のデザイン案はどれもすてきです。「いいね!いいね!」と、みんなで称賛し合うだけでも学級目標に近付いた感じがします。

よりみんなのイメージに近いものへと練り上げるための投票です。付箋紙を貼って投票をする方法だと優劣を付けるようで抵抗がある場合は、Googleフォームなどを活用します。教師だけが結果を見られるようにして、投票数の多かったベスト3を発表しましょう。

ベスト3に選ばれた3人がプロジェクトリーダーとなって、下絵を再考します。

2.下絵を拡大機で拡大印刷する

3人のプロジェクトリーダーが協力して描いた下絵を写真撮影します。この写真を拡大機で拡大印刷します。このときに同じものを2セット印刷しておきます。理由は後述します。

拡大機がない学校は、模造紙などに手書きをしましょう。それもまた楽しいものです。

1枚でも十分な大きさですが、このときは2枚に分割印刷し、超巨大「3D学級目標」作りにチャレンジしました。

下絵を写真撮影し、それを拡大機で拡大印刷したもの。
下絵を写真撮影し、それを拡大機で拡大印刷したもの。

3.拡大印刷した用紙の裏面を布ガムテープで補強する

下絵の裏側を布ガムテープで補強する。写真は絵の具で彩色後のものだが、彩色前に布ガムテープを貼っておいたほうが作業効率がよい。
写真は絵の具で彩色後のものだが、彩色前に布ガムテープを貼っておいたほうが作業効率がよい。

下絵を拡大印刷した用紙の裏面を布ガムテープで補強します。4辺をぐるっと1周するとよいでしょう。紙の強度や3D化する箇所には、適宜、追い布ガムをします。

4.3D化したい部分に新聞紙を貼る

3D化したい部分にだけ、丸めた新聞紙をのりで貼って固定します。

3D化したい部分に丸めた新聞紙をのりで貼る。
3D化したい部分に丸めた新聞紙をのりで貼る。

あえて平らな部分を残したほうが、メリハリが付きます。また、掲示する際に、危険のない重さにすることも重要です。ここぞ!という場所だけを3D化します。

5.丸めた新聞紙を貼った部分をもう1枚の拡大用紙で覆う

2の工程で2セット印刷しておいた下絵の拡大用紙のもう1枚をここで使用します。

3D化したい(丸めた新聞紙を貼った)部分に合わせて、もう1枚の拡大用紙を「ひと回り大きく」切ります。新聞紙がもれ出ないように覆うためです。その上に画用紙を貼ったり、絵の具で彩色したりすることで、下絵を忠実に再現することができます。

3D化したい部分に合わせて、未使用の拡大用紙を「ひと回り大きく」切り、丸めた新聞紙を包み込むように貼り付ける。今回はその上に画用紙を貼った。
3D化したい部分に合わせて、未使用の拡大用紙を「ひと回り大きく」切り、丸めた新聞紙を包み込むように貼り付ける。今回はその上に画用紙を貼った。

パーツごとに分担した作業が完了したら、新聞紙を包み込むように貼り付けます。拡大用紙の使わなかった部分や画用紙の切れ端などは、新聞紙の足しにすると無駄になりません。新聞紙がはみ出てこないように、背景と同系色の布ガムテープで地の用紙に固定します。

6.「使い捨てペーパーパレット」を用いて彩色

絵の具での彩色には「使い捨てペーパーパレット」を用います。牛乳パックを洗って干しただけのものですが、教室を彩る共同制作のアイデアが広がる優れものです。

牛乳パックを洗って干しただけの「使い捨てペーパーパレット」
牛乳パックを洗って干しただけの「使い捨てペーパーパレット」

口をしめておくと数日間、絵の具や墨を保管できる耐水性が申し分ありません。ポスターカラーやニスなど、パレットに固着して取れなくなる心配がありません。何よりも片付けが超簡単。水道で軽くゆすいだら、そのまま燃えるゴミとして捨てるだけです。

掲示板に貼り、巨大壁画のように仕上げていきます。こんな一生ものの体験をしない手はありません。筆でしか表現できない味わいは、デジタルでは再現不能な魅力があります。仲間と知恵を出し合い、全身を使って作り上げる過程を通して、学級目標が愛着あるものになっていきます。

彩色は、一度に全員が行うことは難しい作業です。分担を決め、皆の作業量が同じくらいになるようにします。少しずつ塗り重ね、数日間かけて仕上げていきましょう。

7.天井掲示で3D度をアップ

裏面を布ガムテープで補強し、画鋲で固定した掲示物の耐荷重は驚異的です。画鋲を等間隔に打ちます。スタッズベルトの鋲のように、2列、3列にすると、かなりの重量まで支えることができます。

色彩も終わり完成した「3D学級目標」を、教室に掲示。上方部分を天井、下方部分を壁に掲示すると3D度がアップする。
彩色も終わり完成した「3D学級目標」を、教室に掲示。上方部分を天井、下方部分を壁に掲示すると3D度がアップする。

掲示場所は上方部分を天井、下方部分を壁に掲示します。傾斜をつけることで、飛び出してくる印象になります。

ただし、天井の素材が画鋲止めできない学校もあります。危険のない重さや素材や形の掲示物にするなどの安全配慮は欠かせません。

「3D」にすることで、学級のシンボルが華やかに印象付きます。自分たちの手で作り上げた「3D学級目標」は、終業式まで育てていくに値するものです。

学級目標をただの飾り物にしてはもったいないです。「たいやき」のうろこの部分は、一人一人の個人目標を記しました。ことあるごとに学級目標に立ち返り、一人一人の自己実現への願いを具現化していきましょう。「一人一人の自己実現(個人目標)を達成できる集団の道しるべ」が学級目標であると私は考えています。

このような教室環境のアイデアをまとめた新刊が発売になりました。拙著『教室ギア56 』(東洋館出版社)です。ぜひ、活用してください。

子供時代ならではの尊い体験がたくさんできる教室であることを願っています。


鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。

参照/鈴木優太『教室ギア56』(東洋館出版社)、鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、多賀一郎監修、鈴木優太編、チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク』(明治図書出版)

【鈴木優太先生 連載】
自治的な学級をつくる12か月のアイデア(全12回)
子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)

【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア56(東洋館出版社)
教室ギア55(東洋館出版社)
「日常アレンジ」大全(明治図書出版)
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク(明治図書出版)

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア
特集
学級開き特集ー自己紹介・学級目標・保護者対応etc.ー

学級経営の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました