人づきあいのコツが学べる! ロールプレイのシナリオ集 【ソーシャルスキル早わかり13】

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人づきあいのコツがわかる「ソーシャルスキル早わかり」記事まとめ
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対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」を学ぶソーシャルスキル学習。ここでは、ロールプレイのシナリオや場面設定の例と、授業協力者に知っておいてもらいたいことについてまとめた文書の例を示しました。

執筆/荒木秀一

友達に声をかけている子

ソーシャルスキル学習とは?

ソーシャルスキルとは、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」です。
かつては家庭や地域社会での集団の遊びなどの中で自然と身についたソーシャルスキルですが、現代では少子化や地域の教育力の低下といったさまざまな要因によって身につけることが難しくなりました。そこで近年では、集団生活を基本とする学校での学級単位のソーシャルスキル教育の重要性が強調されています。
ソーシャルスキル学習は、「インストラクション」「モデリング」「リハーサル」「フィードバック」「定着化」の5段階で展開されます。詳しくは下記のリンクからご確認ください。
ソーシャルスキル早わかり(1)基礎知識その1
ソーシャルスキル早わかり(2)基礎知識その2

インストラクションの劇シナリオ

上手な誘い方

5人:押しくらまんじゅうをしている。(廊下側のドア近く)
「押しくらまんじゅう!押されて泣くな!……」(楽しく元気よく)

:そこから少し離れたところに一人ポツンと立っている。いかにも入りたそうな顔をして寂しそうに……。

5人:誰も気づかず、夢中で遊んでいる。
「押しくらまんじゅう! 押されて泣くな!……」(楽しく元気よく)

:悲しそうな顔で……

ころ合いを見はからって、教師が入る。

教師:「A君の何が問題なのかな?」

Aの人だけが残り、あとの人は席に戻る。

上手な頼み方

教師:Aさんは、花と土の入った重いプランターを運ばないといけません。一人で運べないときは、どうすればよいのでしょう。Aさんのようすを見てみましょう。

:重くて運べなくて思案している。

:Bたちは少し離れたところで、Aとは反対方向を向いて、なにやら話に夢中になっている。

:……

教師:Aさんはどうしたらいいのかな? 誰か教えてくれますか?

プランターを一人で運ぼうとして重くて困っている子とそれに気づかない子

モデリングのロールプレイシナリオ

モデリングで示すロールプレイは、好ましくないスキルと好ましいスキルの2つを提示します。

ここでは「上手な断り方」を例にあげ、まず「よくない断り方」で問題点を示し、次に「上手な断り方」でポイントを整理します。モデリングのロールプレイはとくにシナリオが大切です。シナリオを書くことで内容がきちんと整理でき、演技もスムーズにできるはずです。

よくない断り方

教師:Aさんは、昼休みに友だちと遊ぶ約束をしていました。でも、計画委員会の話合いがあって遊べなくなりました。その時、Aさんはどうするのか、よく見ておきましょう。

:立っている。

:Bが来て、「Aさん、遊ぼう!」とやさしく声をかける。

:不満げな顔でぶっきらぼうに一言、「遊ばない!」と言う。

上手な断り方

教師:Aさんは、昼休みに友だちと遊ぶ約束をしていました。でも、計画委員会の話し合いがあって遊べなくなりました。その時、Aさんはどうするのか、よく見ておきましょう。

:立っている。

:Bが来て、「Aさん、遊ぼう!」とやさしく声をかける。

:「ごめん。」(と謝罪の言葉)
「今から計画委員会の話し合いがあって遊べないんだ。」(断る理由)
「明日、遊ぼうよ。」(代わりの意見)
「本当にごめんね。」(謝罪の言葉)

:「そうか、わかった! じゃあ明日ね。」

リハーサルの場面設定

リハーサルの場面設定は、モデリングのロールプレイで行った場面と同じものにします。頭では理解しているつもりでいることを実際に行動できるかどうかが、同じ場面をくり返すことでわかるからです。グループ全員がそれを終わったら、違った場面を設定して子どもたちにやらせます。ここに、それぞれのスキルの場面設定の例をいくつかあげておきます。

気持ちのよいあいさつ

A 朝、学校に行くときに友だちに会った場面

B 朝、校門で先生に会った場面

C 教室に入ってあいさつをする場面

D 朝のボランティア活動の時に校長先生に出会った場面

朝、学校に行くときに友だちに会った場面

上手な質問のしかた

A 歩道で郵便局への行き方をたずねる場面

B スーパーマーケットでお肉を売っている場所を聞く場面

C デパートでトイレの場所をたずねる場面

D 駅で駅員さんにどの電車に乗ればよいかたずねる場面

歩道で郵便局への行き方をたずねる場面

友達の誘い方

A 長縄跳びをしているのを一人で見ている友だちを誘う場面

B 図書室に本を借りに行くときに、友だちを誘う場面

C 休み時間、一人でさびしそうにしている友だちを誘う場面

D 転入してきた友だちを誘って、昼休みの読書会に行く場面

長縄跳びをしているのを一人で見ている友だちを誘う場面

仲間への入り方

A おにごっこをしているグループの仲間に入る場面

B 同じ方向に帰っていく友だちの仲間に入る場面

C 売店で文具を買おうとしている友だちの仲間に入る場面

D 運動場でリレーの練習をしている友だちの仲間に入る場面

おにごっこをしているグループの仲間に入る場面

あたたかい言葉かけ1(うれしそうな友達にかける言葉)

A 何度も練習して、上手に書けた習字を見ている友達に、あたたかい言葉かけをする場面

B 持久走大会で1等賞をもらって喜んでいる友達に、あたたかい言葉かけをする場面

C 時間をかけて完成した絵を大切そうに持っている友達に、あたたかい言葉かけをする場面

D 練習して二重とびができるようになった友達に、あたたかい言葉かけをする場面

うれしそうな友達にあたたかい言葉かけをしている場面

あたたかい言葉かけ2(困っている友達にかける言葉)

A 給食の配膳のとき、おかずをこぼしてしまった友達に、声をかける場面

B 帽子をなくして困っている友達に、声をかける場面

C 配ってもらったプリントがなくてさがしている友達に、声をかける場面

D 廊下で転んで、ひざを打って痛がっている友達に、声をかける場面

困り顔の子

あたたかい言葉かけ3( あたたかい言葉をかけられたときに返す言葉 )

A 置きわすれた帽子を友達が教室まで届けてくれる場面

B ふでばこを落として鉛筆が散らかったとき、それをいっしょにひろってくれる場面

C 重い机を運んでいるとき運ぶのを手伝ってくれる場面

D 給食着を持って帰るのを忘れていたとき、教えてくれる場面

笑顔の子

気持ちをわかってあげる

A サッカーの試合で勝って喜んでいる場面

B 買ったばかりのふでばこを落として壊してしまい、悲しんでいる場面

C 友達にいじわるをされて悩んでいる場面

D 友達とけんかをして怒っている場面

サッカーの試合で勝って喜んでいる場面

上手な頼み方

A 図書館で、探している本が見つからないので、友達に頼んでいっしょに探してもらう場面

B 職員室に落し物を探しに行くとき、友達に頼んでいっしょに行ってもらう場面

C 放送委員会の仕事で掃除に遅れるので、友達に掃除場所の班長に遅れることを知らせてほしいと頼む場面

D 給食当番なので、友達に勉強道具を教室まで運んでもらうことを頼む場面

図書館で、探している本が見つからないので、友達に頼んでいっしょに探してもらう場面

上手な断り方

A 自分が大切にしているボールペンを友達が貸してと言ってきた場面

B 先生から頼まれた仕事をしているとき、友達から遊びに誘われた場面

C 今日中にしなければならないない係活動をする予定でいた昼休みに、友達から勉強を教えてと頼まれた場面

D 友達と遊ぶ約束をしていたのに、家の用事で急に遊べなくなった場面

自分が大切にしているボールペンを友達が貸してと言ってきた場面

授業協力者の指導内容

リハーサルでは、全員がロールプレイングをしながら実際に体験することが重要です。リハーサルの際は授業協力者(トレーナー)が複数いると、それだけフィードバックもきちんとされるので、定着化に向けてより効果のある指導となります。

*授業協力者に配布する資料の例

30名のクラスなら、1グループ5~6名で編成すると、6~5グループできることになります。全体の指導後、子どもたちがグループに分かれてリハーサルをします。そこからが授業協力者の出番です。

「まず、二人組を決めます。あなたとあなた…」
最初はスキルのある子どもから決めていくとスムーズにいきます。
「二人でジャンケンをして、勝った人が先に『あたたかい言葉かけをする人』、負けた人が『言葉をかけられる人』です。」

「では、最初にこの二人からしていきましょう。」
「場面は、『廊下で転んで痛そうにしている友達にどんな言葉かけをすればいいかな?』ということです。」
「あたたかい言葉かけをする人は、さっきのポイントを考えながら、上手に言葉かけをします。」
「ほかの人は、言葉かけをしている人のどんなところがよかったのかを見て、あとでほめてあげてね。また、もっとこうしたら上手になるよというところがあったら気持ちよく教えてください。」


「先生の『用意、はじめ』で始めましょう。終わったらお互いに『ありがとうございました』と言いましょうね。」

《実際に役割演技を行う》その後

「さあ、どうだったかな?」「まわりで見ていたA君、上手だったところを言ってください。」「次、Cさん…」順次、指名していく。ほぼ聞き終わったら、「言葉をかけられた人に聞きますね。どんな気持ちでしたか?」

「交代してやってみましょう。次は、DさんとE君。」(④のくり返し)

《留意事項》
・ほめるときはどんなところがよかったのか、具体的にほめてください。
・子どもに発表させるときも「相手を見てやさしく励ましていたのでよかった」など、具体的に言わせるようにしてください。


イラスト/宮地明子

「COMPACT64 ソーシャルスキル 早わかり」より

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