友達の誘い方・仲間への入り方のスキルの身につけ方【ソーシャルスキル早わかり5】
対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」を学ぶソーシャルスキル学習を解説するシリーズ。今回は、よりよい人間関係を形成するために大切な「友達の誘い方」のスキル、そして友達関係を築くときに必要な「仲間への入り方」のスキルについてです。
執筆/荒木秀一
目次
ソーシャルスキル学習とは?
ソーシャルスキルとは、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」です。
かつては家庭や地域社会での集団の遊びなどの中で自然と身についたソーシャルスキルですが、現代では少子化や地域の教育力の低下といったさまざまな要因によって身につけることが難しくなりました。そこで近年では、集団生活を基本とする学校での学級単位のソーシャルスキル教育の重要性が強調されています。
ソーシャルスキル学習は、「インストラクション」「モデリング」「リハーサル」「フィードバック」「定着化」の5段階で展開されます。詳しくは下記のリンクからご確認ください。
ソーシャルスキル早わかり(1)基礎知識その1
ソーシャルスキル早わかり(2)基礎知識その2
友達の誘い方のスキル
子どもたちに「学校で一番気になることは?」と聞くと、「友達関係」と答えます。仲よしの友達がいることは、学校生活を楽しむうえでとても重要です。
いつもグループの輪の外にいたり、一人ぼっちで寂しそうにしている子はいませんか。そんな友達がいたらどんなふうに声をかけたらよいのか。「友達の誘い方のスキル」で相手の気持ちを考え、誘うときの具体的な言葉や行動を身につけます。そうすることで、よりよい人間関係が形成されるはずです。
授業の基本的な進め方
- 一人ぼっちの子の思いを知るため、悩み調査を実施する
- 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話合いでポイントを整理する
- 友達の誘い方の練習▶個人またはグループで
- 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く
授業の実際
①つかむ インストラクション
友達に誘われてうれしかったことを書いた子どもの日記や、教育相談で利用した「悩み調査」などから、一人でさびしく思っている友達がいることを知らせます。そして、その友達を「誘ってあげる」ことの大切さに気づかせることで、学習意欲を高めていきます。
授業の約束を確認します。
②気づく モデリング
「みんながドッジボールをしているのを、少し離れたところから、一人ポツンと見ている友達がいる」という場面を提示して、なにが問題なのか、感じたことや考えたことを話し合います。そして、自分なりに考えた友達の誘い方を、数名の子どもたちに実際に演じさせます。
【ロールプレイ】
ロールプレイの中から、よかった点をポイントとして板書します。
「一緒に遊ぼう」や「こっちにおいでよ」などの言葉も、黒板に掲示しておきます。
スキルのポイント
○相手に近づく
○相手の目を見る
○相手に聞こえる声で言う
○笑顔で言う
③やってみる リハーサル
①学習班(4〜6人)になる。
②二人組をつくり、誘う人、誘われる人に分かれて、実際の場面で練習する。
③まわりで見ている人は、どんなところがよかったか、感想を言い合う。
④ふり返る フィードバック
スキルのポイントを書いたふり返りカードに、感想も含めて書きます。その後、数名の子どもに前に出てもらい、もう一度「上手な友達の誘い方」をしてもらいます。よかった点(スキルのポイント)を確認しながら、教師は称賛をくり返します。
⑤生かす 定着化
学級活動で「みんなと遊ぶ日を決めよう」などの議題で話し合います。そして、それを昼休みに実践して、具体的に誘い合う場を設定するとよいでしょう。さらに、昼休みや休み時間に誘い合っている子どもをすかさずほめることが重要です。
チャレンジカードを作成し、学校や家で意欲的に取り組めるようにしましょう。
仲間への入り方のスキル
友達関係を築くときの大切なスキルです。どうしたら遊んでいる友達の中にスムーズに入れるかを考え、それを実際にやってみます。このスキルを身につけることで、自分の気持ちをうまく表現できるようになり、友達の気持ちにも気づくようになり、よりよい人間関係が築けるようになるでしょう。
授業の基本的な進め方
- 紙芝居やビデオ、劇を見せて学習の目的を知らせる
- 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話合いでポイントを整理する仲間への入り方の練習▶個人、グループ、全体で
- 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く
授業の実際
①つかむ インストラクション
楽しそうに長縄とびをしている友達に、どうやって声をかけたらいいかわからず、一人ぼっちでいる子どものようすを紙芝居やビデオ、実際の劇を見せて把握させます。
授業の約束を確認します。
②気づく モデリング
ロールプレイでは問題意識をもたせるため、日常的な場面を設定するといいでしょう。たとえば、友達がドッジボールをして遊んでいるのを、一人で離れてじっと見ている(遊んでいる友達はそれに気づいていない)場面です。
ロールプレイの最初の劇で何が問題かを考えさせ、次の劇でよかったところを考えさせるようにしましょう。
【ロールプレイ】
数名の子どもに自分なりに考えたやり方をみんなの前でやらせ、よかった点を黒板にポイントとして板書します。どんな意見も肯定的に認めます。
スキルのポイント
○相手に近づく
○相手をしっかり見る
○相手に聞こえる声で言う
○笑顔で言う(「入れて」「やっていい?」)
③やってみる リハーサル
●グループで
①学習班(4〜6人)になる。
②一人が声をかけて仲間に入る人、そのほかはドッジボールをしている人に分かれて実際の場面で練習する。
③ドッジボールをしていた人は、仲間に入ってきた人のどんなところがよかったかを伝える。
●となり同士で
①となり同士になる。
②一人が声をかけて仲間に入る人、もう一人は声をかけられる人(反対を向いている)になる。
③声をかけられた人は、仲間に入ってきた人のどんなところがよかったかを伝える。
先生や授業協力者が子どもを個別にくり返しほめることが、スキルの強化につながります。
④ふり返る フィードバック
上手にできていた子どもにロールプレイをしてもらい、スキルのポイントを確認しながら、教師はくり返しほめます。スキルのポイントを書いたふり返りカードに授業の感想も含めて書きます。
⑤生かす 定着化
一人ぼっちになりがちな子どもには、個別の指導(ポイントの復習)をします。昼休みや休み時間に、自分から進んで友達に声をかけるなどしたら必ずほめましょう。
イラスト/宮地明子
「COMPACT64 ソーシャルスキル 早わかり」より