小1 国語科「こえに出してよもう」全時間の板書例と指導アイデア

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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「こえに出してよもう」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:こえに出してよもう(光村図書・こくご 一下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属大泉小学校・今村 行

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、1年生の冬休み明け最初の単元として配置されています。
冬休み明け、新年への期待やドキドキした気持ちをもって登校した子供たちが「国語の授業で考えたり、みんなと学び合ったりするのってやっぱり楽しいな」と思えるような雰囲気で授業を進めたいものです。
「読むこと」の指導事項として、詩で描かれる場面や登場人物の様子を具体的に想像する力を伸ばしていきます。

本単元は第1時に「かたつむりのゆめ」と「はちみつのゆめ」という二つの詩を扱います。
それぞれ夢の話であることから、子供たちと初夢の話題から入ってもいいかもしれません。
また、工藤直子が動物を語り手として詩を創作する「のはらうた」の特徴を存分にいかして、生き物の様子、口調などを具体的に想像することができるでしょう。
その際の想像や、音読としての表現には、唯一の正解があるわけではありません。詩を声に出して読む学びの中で、想像しながら自分で読み方を工夫する楽しさと、自分とは違う仲間の工夫を聞く楽しさの両方を実感することを目指していきます。

第2時では、第1時の学びをいかして、それぞれの子供たちが自分のしたい表現をする、個別最適な学びを目指した活動を設定します。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

第1時は、「1.単元で身に付けたい資質・能力」でも述べたように、言語活動として想像しながら自分で読み方を工夫する活動と、自分とは違う仲間の工夫を聞く活動を設定します。
これら二つの活動は、別々のものではなく、結び付いたものとして扱っていけるといいでしょう。

本単元においては、すらすらと音読するということがめあてではありません。二つの詩を読み、想像を膨らませて表現することを目指します。
例えば、「かたつむりのゆめ」では、現実にはとてもゆっくり動いているかたつむりが、夢の中では「ひかりのように はやくはしる」というギャップに面白さがあります。そうすると、詩の前半の「あのね ぼく ゆめの なかでは ね」は、どのように読むといいでしょうか。
ある子は熱心に語りかけるように読むかもしれませんし、ほかの子は自慢げ、得意げに読むかもしれません。その表現に至った想像は、どちらも間違いではなく素晴らしいものです。教師が特定の読み方を押し付けるのではなく、子供たちが自分で想像して表現し、互いの表現の違いを称賛し合えるような活動にしたいものです。

第2時では、第1時の学びをいかして、個別最適な学びを目指して二つの言語活動を設定します。
一つは「のはらうた」の中からお気に入りの詩を選び、それを書き写して絵を添えたり、音読したりする活動。もう一つは、自分で動物になりきって「ゆめ」の詩を作る活動です。

実際に子供たちに問いかけたところ、「自分で作ってみたい!」という声がたくさんあがりました。
自分で書いてみたい動物を設定して、その動物がどんな夢を見たのか想像することは、そこまでの読む活動をいかしたものであると同時に、育みたい資質・能力が発揮される活動でもあります。
もちろん、いきなり書いてみるということをハードルに感じる子供たちもいると考えられるので、「のはらうた」の中から好きな詩を選び出し、その詩について想像を膨らませるという活動も選択肢として用意します。どちらの活動を選んでも、単元として目指す資質・能力は育むことができるでしょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 子供が自分で選択肢の中から決める機会をもつ

主体的な学びを考えていく上で、子供自身が「この学びの主導権は自分にある」と感じられることが大切だと考えます。前項でも述べたように、第2時では、二つの言語活動から自分がやってみたいものを選んで活動できるように単元を構成しました。

全ての単元で、子供に選択肢を与えることは難しいかもしれません。物語を扱った長い単元で、子供がバラバラの言語活動を選び、それぞれ学びを進めていくということも、すぐにできることではないでしょう。
今回は2時間扱いの短い単元で、子供が自分で選択肢の中から決める機会を設定することを提案します。

〈対話的な学び〉「少し違う」からこそ、興味をもつ

本単元では、第1時に「かたつむりのゆめ」、「はちみつのゆめ」を工夫して音読し、それを聞き合う活動を設定します。そこでは、同じ詩を音読していながらも、それぞれ想像し表現することが少しずつ異なります。その違いに注目することで「〇〇さんの読み方面白い!」と子供たちが感じられると考えます。

また、第2時では、二つの言語活動から一つを選びそれぞれに活動していきます。
共有の場面で、「のはらうた」から詩を選び工夫して音読した子と、自分で詩を創作し音読した子では、やっていることは違いますが、それぞれ動物が語り手になっている詩を音読しているという大きな共通点があるので、「なるほど!」「面白い!」という興味が湧きます。
共通点と、違うところのよい塩梅が、子供たちの対話的な学びを促進させるはずです。

〈深い学び〉 教室の中だけで学ばない

深い学びを考える際に、学んだこと同士が結び付き合ったり、関連付いたりすること、ネットワーク化することが大切な視点の一つだと考えます。本単元では、子供たちの日々の経験と国語の授業を繋げることで、深い学びを実現したいと考えています。

「のはらうた」は、工藤直子が動物を語り手として詩を創作しているという面白さがあります。
第1時で子供たちが二つの詩を読んだときに、これまでの生活経験で形成されたかたつむりやくまに対する自分なりのイメージと重ね合わせて「え、かたつむりが夢の中で光みたいに速く走るの!」と驚いたり、「やっぱりくまは夢の中でもはちみつ大好きなんだね」と納得したりします。

第2時では、「のはらうた」からお気に入りの詩を選び出すときには、自分の生活経験で形成された動物のイメージと照らし合わせながら、「これだ!」という詩を選び出すでしょう。
自分で詩を創作する際にも、自分の中の動物のイメージからギャップのある夢を考えたり、「やっぱりそうなるよね」という夢を考えたりすることでしょう。

このように、子供たちが授業を教室の中に閉じたものとしてではなく、教室の外のことも総動員して学ぶ場面を授業者が意図的に設定することが、深い学びにつながると考えます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

本単元においては、タブレット端末のカメラを用いて、音読の映像を記録し見返す活動をしたいと考えています。自分の音読しているところは、周りの人から見ることはできても、自分では見ることはできません。映像に残った自分の姿を見ることで、気付けることもたくさんあるでしょう。

実際、カメラを向けられただけで、張り切って音読する子供も多いです。カメラを向けられると緊張してしまうという子供も、「後で見返すことで、すごく学びになるよ」と伝えると、それならばと答えることが多い印象です。もちろん、無理強いする必要はないと思います。

1年生は、自分をメタ的に見つめることは、なかなかできません。音読を映像として残し、物理的に外側から自分を見るということをすると、少しずつメタ的な思考が促進されていくように感じます(実際に1年間続けてきましたが、そのような実感が深くなりました)。

6. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: そうぞうして、こえに出してよもう

【主な学習活動】
第1時(1時
「かたつむりのゆめ」、「はちみつのゆめ」に出合い、詩の場面や語り手の動物の様子を想像しながら工夫して音読する。

第2時(2時
①「のはらうた」の中からお気に入りの詩を選び、それを書き写して絵を添えたり、音読したりする活動
② 自分で動物になりきって「ゆめ」の詩を作る活動

どちらかの活動を自分で選ぶ。できたものを互いに共有する。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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