スライドアプリを理科の授業で使ってみよう 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

ギガスクールで子どもたちが持っている端末の種類や、使っている授業支援ソフトは自治体によって異なっています。自治体によって、使えるアプリには様々な差があるのではないかと思いますが、スライドを作成したり閲覧したりできるアプリは、すべての自治体において、何らかの形で授業に使っているのではないでしょうか。また、アプリの種類が異なっていても、大体同じような操作感であろうと思います。今回は、このスライドアプリを使って理科の授業を楽に進める授業紹介です。端末を使うことに高いハードルをお感じの方もいらっしゃるかもしれませんが、少しずつ使ってみるといいですね。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/滋賀県公立小学校教諭・堀 道雄
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

スライドアプリは多様な使い方ができる

スライドアプリ(パワーポイントやGoogleスライドなど)は、おおむねどの端末にも入っていると思います。スライドアプリは本来、プレゼンテーションや写真のスライドショー等に使うアプリですが、画像を多用した文書を作るのに、非常に向いています。搭載されている機能を使うと理科の色々な単元や学習に活用することができます。

※本稿ではGoogleスライド、Googleクラスルームを使った実践を紹介しています。

1.スライドアプリを使ったことがない場合は

スライドアプリを子どもたちが使ったことがないという場合は、別の時間を使ってスライドアプリを使う時間を作ることをおススメします。例えば、スライドアプリを使って係活動のポスターを作成したり、自己紹介をするための名刺作りをしたりして、テキストや図形の挿入の仕方、写真の取り込み方など、基本的な使い方をあらかじめ練習しておくとよいです。

2.ノート代わりにスライドアプリを使う

スライドアプリをノート代わりに使う実践を紹介します。
第6学年「水溶液の性質」の単元において、実験結果の整理、考察、結論までをGoogleスライドにまとめるという実践です。まずは、ノートのもとになるスライドを、Googleクラスルーム上で課題として配付します。配付するときは該当のファイルを添付後、「各生徒にコピーを配付」を選択し、子どもたちに「割り当て」をします。

この単元では、教師のほうであらかじめ結果を整理する表を挿入しておいたスライドをノートにするよう配付しました。子どもたちは結果を整理する場面で、行った実験の結果を自分のスライドに書き込みます。水溶液を蒸発皿で蒸発させたあとの様子は、写真が挿入できるように少し表の幅を大きくしてあります。

子どもたちに配付するスライドの中には、実験の手順や注意事項を入れるなど、子どもたちが常に意識できるような工夫もすることができます。

スライドに結果や考察を書き終わったら、Googleクラスルーム上で教師に「提出」をすると、教師は誰が入力し終わったか、どのようなことを書いているか確認し、コメント入力もすることができます(子どもたちが入力中も確認は可能です)。

このようにスライドアプリをノート代わりにすることで、紙のノートを集める手間を省くことができ、さらに子どもたちが書いている内容をすぐに確認でき、フィードバックをすることができます。

3.スライドの共同編集機能を使う

GoogleスライドやMicrosoftパワーポイントでは、スライドを複数の人が同時に共同編集できる機能があります。その機能を生かした3年生「ものと重さ」の単元の実践を紹介します。

「ものは形をかえると重さはかわるのだろうか」という問題を見いだした後、グループで粘土の形を変えて、重さが変わらないということを確かめていきます。その際、各グループに割り当てられたスライドに、ものの形を変える前と変えた後の重さを記入し、粘土の形を撮影した写真(画像)を挿入します。写真を挿入することで、ものの形を変えた様子を後に残すことができ、実験後の考察もしやすくなります。また、共同編集機能で他のスライドには他のグループが結果をまとめている様子も同時に見られるため、自分のグループの結果と見比べながら実験を進めることができます。

このように、共同編集機能を使うと結果の整理と共有が同時にできるため、非常に便利です。ただ、共同編集機能を使う際には、他のグループのテキストや写真を触ってしまう可能性もあるので、事前に指導が必要です。


その他にもスライドアプリのアニメーション機能やプレゼンテーション機能なども様々な場面で活用することができます。ぜひ、理科の授業にスライドアプリを取り入れてみてください。

イラスト/難波孝

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<執筆者プロフィール>
堀 道雄●ほり・みちお 滋賀県公立小学校教諭 滋賀県小学校理科部会の研究推進委員として、県内の小学校理科の指導力向上に携わっている。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員などを経験し、教員をしながら博士号(学校教育学)を取得。共著『よくわかるSTEAM教育の基礎と実例』(講談社)などの書籍も執筆している。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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