生活科からつながる、「自然事象への興味・関心」を高める理科学習の手立て 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

理科の学習では自然の事象と出合い、それをじっくり観察する力が大切ですが、これと生活科の学習は地続きです。生活科では「気づきの質を高める」ことが重視されているからです。そして気づきの質を高めるには、実際に自然事象に対する興味・関心を高める工夫が必要だと言えるでしょう。
では、その手立てはどのようにすればよいのでしょうか。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/神奈川県公立小学校教諭・藤原梨花
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

はじめに

理科の学習では、チョウやメダカの成長など生き物をじっくり観察する力が大切になります。その力をつけるためには、生活科で生き物と触れ合ったり観察したりして、愛着をもつ時間が大切になってきます。今回は私が担任をしている、個別支援学級の生活科の学習の手立てから、生き物への愛着をもち、細かく観察したりする力を育む手立てを紹介したいと思います。一般級での学習にも生かせることがあると思います。

1.生き物を身近に感じるICT活用

個別支援学級の生活科「いきものと なかよし」の学習では、ダンゴムシを育て、その成長の変化や世話の仕方を考える学習を行いました。
ダンゴムシのような小さな生き物は、細部まで肉眼で見ることが難しく、集中して観察するのが難しいと感じる子どもも多いのではないかと思います。
そこで活用できるのが、タブレットにつけて使うマクロレンズです。100円ショップなどで手に入れることができます。

(※編集部注 100円ショップなどで売られているスマホ・タブレット用のレンズには、望遠レンズなど近くのものを拡大できないものもあります。「マクロレンズ」または「顕微鏡レンズ」などと書かれている商品を選びましょう)

これをタブレットのカメラ部分につけると、これまでは見えづらかったダンゴムシが食事をする様子など、小さな虫の生き生きとした活動の様子をリアルタイムに細かく観察することができました。「口はここにあるんだね」「手を使ってごはんを食べているよ」など、体の様子にも気付く姿が見られました。さらに、こうした虫の様子を録画することで、振り返りの場面でも、クラスで共有することができました。見えなかったものが見えるようになったことで、観察への意欲が高まりました。

2.継続して材と関わり、材への愛着を高める

①毎朝の観察時間
生き物の観察をするためには、まず愛着を高めることが必要です。そのためには、材に継続して関わることが大切です。子どもたちの目の届くところに虫かごを置き、毎朝観察する時間をとりました。毎日の関わりによって、「今日はどこに隠れているのかな。ごはんを食べているかな」と、ダンゴムシのその日の様子への関心が高まっていました。観察するときに1枚ずつ写真を撮り、気付いたことや気になったところに、タブレットのペイント機能を使って「◯」印をつけました。また、その写真を印刷し、観察カードとしてクラスで共有することができるようにしました。さらに、ダンゴムシの模型を置き、手に取って体のつくりを見ることができるようにしました。

②読み聞かせを行う
朝の時間や読書の時間を使い、ダンゴムシが主人公の本の読み聞かせを行いました。ダンゴムシが冒険をする話や、ダンゴムシの親子の話などです。
ダンゴムシへの親近感が高まり、より身近に感じるきっかけになりました。読み聞かせをした本は、教室の窓際にブックスタンドに立てかけて置いておきました。休み時間などに子どもたちが本を手に取り、再度読んだり、友達と一緒に見たりする姿が見られました。

③「ダンゴムシたいそう」をおどる
毎回、授業の始まりに「ダンゴムシたいそう」というダンスを踊りました。ダンスを踊ることで、ダンゴムシになりきり、丸くなったり、もそもそ動いたり、体を動かすことで、学習に向かうための気持ちのスイッチが入り、座って活動する学習も、落ち着いて取り組む様子が見られました。
また、手をくるくる回すことで丸まったダンゴムシの回転を表現する、などのダンス表現を学ぶことで、言葉で自分の考えを伝えることが難しい児童にとっては、新しい自己表現の方法を獲得するきっかけになりました。

このように、材と様々な形で関わり、材に対する愛着をもつことで、新しい学習への意欲が高まってくると思います。材がどのようなものであるかによって、手立ての工夫は変わってくると思いますが、まずは教師本人が材への愛着をもち、その材の魅力や良さを自分自身で考えてみることが大切なのではないかと思います。
新しい学びに意欲をもてる授業づくりを、みなさんも工夫してみてください。

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
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<執筆者プロフィール>
藤原梨花●ふじわら・りか 神奈川県公立小学校教諭。生活科を中心に日々実践研究を行う。あそびを通して学びが広がる授業を目指し活動を行っている。現在は、個別支援学級における生活科の研究を行っている。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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