グループ分け、どうしてる? 小学校の遠足や校外学習などでの、じょうずなグループ分け法!
行事における「グループ分け」は、頭を悩ます先生方も多いかもしれませんね。子どもの希望通りにしたら、仲の良い子同士が集まった排他的なグループになるかもしれず、かといって教師が勝手に決めると、学級の雰囲気が悪くなってしまうかも……。そこで今回は、どの子も納得の、クラスがまとまるグループ分けにするポイントを紹介します!
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
目次
子どもの思いと教師の思い
遠足や社会科見学、宿泊学習は、多くの子どもたちが楽しみにしています。4~5人ほどに分かれてのグループ学習があれば、子どもたちには次のようなワクワクと不安が起きます。
好きな友達と同じグループになれるかな?
グループはどんな決め方をするんだろう?
先生が決めるのかな?
自分たちで決められるのかな?
女の子の方が、こういったグループ分けで「好きな友達と一緒になりたい」と強く願う子どもが多いように感じます。仲が良いのは結構なことですが、一方で教師としては、次のような不安や心配があるかと思います。
教師の不安・心配
- 自分たちで決めさせたら、どのグループにも入らない子どもが出るのではないか。
- どこにも属さない子どもが出たら、まわりの子どもたちはうまくフォローできるか。声をかけられるか。放ったらかしにしないか。
- 決められた人数よりも多いグループができてしまったとき、規定の人数へとわだかまりなく分かれられるか。
- 一人の子どもを、複数のグループの間で奪い合うようなことは起きないか。
- グループ分けが決まった後で、文句を言う子どもが出ないか。
- グループ分けが上手くいかず、泣いたり怒ったりする子どもが出ないか。
- グループ分けに納得できない子どもが保護者に不満を言い、クレームに繋がらないか。
- グループ分けが理由で行事を欠席する子どもが出ないか。
子どもの「話合い」って?
私が若手教師だった頃のことです。子どもたちからグループ分けについて、「自分たちの話合いで決めたい」と意見が出ましたので、任せてみることにしました。一見、話合いでスムーズに決まったと思われ、安心していたのですが、実は我慢している子どもがいたのだと後に分かりました。
周りの友達が次々とグループを組んでいく中、自分の気持ちをしっかり言えずに、流されるままにグループが決まってしまったのです。入ったグループの友達が嫌でなかったので、そのまま受け入れましたが、自分が一緒になりたいと思う友達とは同じグループにはなれませんでした。その子は、自分がここで意見を言ったら、全体に迷惑をかけてしまうと思っていたのです。
もちろん、希望通りにはならなかったとして、実際に一緒になったメンバーと楽しく過ごすことができれば、むしろ素敵なことと言えるでしょう。でも、自分の意志や希望をアピールできない子どもが、納得することなく決定されてしまう状況を見過ごすと、後のトラブルに繋がるとも言えます。
そのときのやりとりは、このようなものでした。
グループ分けは、自分たちで話し合って決めたいです
との提案が出ました。
私が、
話合いって、具体的にどうやって進めるの?
と聞くと、
まず、男女で分かれて、男子は男子だけで話し合って男子だけのグループ分けをして、女子は女子だけでそうして、後で男子と女子のグループをくっつけたらいいと思います
と発言力のある子どもが言いました。
そこで私は念のために、
男の子のグループと女の子のグループが一緒になるのは、どうやって決めるの?
と聞くと、
それも話合いで決めます
と、返ってきました。
私は、子どもたちの言葉を受け入れて、その様子を見ていました。男女がそれぞれ分かれて、男子は男子で、女子は女子で、グループ決めが始まりました。
すると、男子も女子も、
「とりあえず、なりたい人同士で組んでみよう」
と、主張の強い子が主導するグループが即座に組まれました。そして、そうした主張の強い子たちからの同調圧力に押されるようにして、大人しい子たちは、大人しい子同士のグループになっているようでした。
その様子を見ていた私は、
こんなの全然、話合いじゃないやん……
と思ってしまいました。
大人や教師の考える「話合い」は民主主義によって進められますが、子どもが考えるそれは、子どもの持つ影響力や自己主張の強さによって進められるのだと、このとき理解しました。
遊びではなく、学習
こうした経験から、私はまずグループ決めをする前に、子どもたちに一言伝えます。
それは、
遊びで行くのではありません。学校の学習で行きます
ということです。
このことが意識から抜け落ちてしまっている子どもがいます。特に、宿泊学習や遠足などの校外学習の場合です。「校外学習は、学校の中でないから勉強じゃなくて遊び」と思っている子どもがいるのです(小学生の私の息子が実際にそう言っていました……)。
次に、
好きなお友達とどうしても一緒のグループになりたい人?
と聞きます。すると、多くの子どもたちが手を挙げます。
そこで、
うん、その気持ちはとても分かるよ
と共感したうえで、
好きなお友達とどうしても一緒のグループになりたいということは、好きではない友達がいるということですか?
と聞きます。
すると、子どもたちは、
そんなことは言っていません!
と食い下がります(当然です)。
この押さえは大切です。自分の希望がかなわず、泣いたり怒ったりするのを防ぐことになります。自分の希望が叶わずふてくされる子がいては、同じグループになったメンバーにとっても気分のいいものではありませんから。
さらに、
どうしても「この人と一緒じゃなきゃ嫌だ」って思う人は、お休みの日にプライベートで行ってね
と話すと、子どもたちから笑いが起きます!
そりゃ、そうや~
と頷く子どももいます。
学校の学習としての集団行動と、家族や友達同士でのお出かけは違うのだということを確認しておくのは、とても大切です。
そして、さらに、
席替えをする理由は?
と聞きます。すると、子どもたちの中から、
いろんな友達と仲良くなるため
という意見が出るので、ほめて、
そうだよね。クラスにいるいろいろな友達とお互いのことを知って、いろんな友達と協力するためだよね
と話します。
教師から一方的はNG
グループ分けについて、「先生が決めます」「公平にくじで決めます」と一方的に子どもたちに話すのはリスクが生じる場合があります。
教師から提案する場合は、それを子どもたちが素直に受け入れられるだけの、教師への信頼感が必要です。「この先生に任せたら、大丈夫! 安心!」という信頼感があってこそなのです。
また、くじで決める場合は、子ども同士の関係性を十分に配慮する必要があります。人間だから相性があって当然です。くじは公平なものとはいえ、相性が悪い子ども同士が同じグループになってしまうこともあります。クラスの人間関係に問題が見られない場合のみ、くじを採用するようにした方がいいと思います。
以前、6年生を担任したとき、子どもたちに、
どんなグループ分けの方法が、一番クラスのためになると思う? グループ分けの方法を話し合って
と投げかけました。話合いでグループに分かれるのではなく、グループ分けの方法を話し合ってもらったのです。
いろいろな決め方が出され、30分ほど話し合った末、「先生が決める」になりました。
ここで大切なのは、「クラスのためになる」というグループ分けのポイントを先に示すことです。このポイントを示さないと、安易に「話し合ってグループに分かれる」となってしまいます。そして結局、話し合うことはなく、「早い者勝ち」のようなグループ分けになってしまいます。
ロールプレイをする
「クラスのためのグループ分け」を話し合う前に、予めグループ分けにおいて起こりうる問題をシミュレーションしておくのもよいでしょう。例えば、次のようなケースを想定し、事前にロールプレイします。
- まわりに遠慮してすぐに組むことができない友達への配慮は?
- すぐに動いて組むことができた人が気をつけることは?
- まわりに遠慮してしまう優しい人が、一緒になりたい友達をはっきり示すことのできる方法は?
(⇒ 例:事前にアンケートで書いてもらう) - もしも、どのグループにも属さない人がいたらどうする?
- どのグループにも入ってない人がいるとしたら、「こっちおいで、入れたるわ~」と声をかけるのは良いこと? 悪いこと?
(⇒ 上から目線になる。本人がそのグループに入りたいかを確認していない) - 自分だったら、ひとりぼっちで耐えられる時間は何秒?
( ⇒ 1人の人に早く声をかけられるようになる) - グループの定員は4人で、5人になっているグループが4つあったとする。他の班は4人になっている。良くない決め方は?
(⇒ 5人組のところから1人ずつ出して、寄せ集めでグループをつくるのはダメ。4人組になっているところが確定してしまっているのが良くない)
☆下の写真のように、黒板を使いながら視覚的に分かりやすいようにする。 - 男子グループと女子グループの合わせ方で良くない方法は?
(⇒ 「とりあえず一緒になりたいところ同士くっついてみよう」は良くない。残ったグループ同士が仕方なしに組むことになるから) - もし、大人気の人がいて、複数のグループから「一緒のグループになろう」と誘われたらどうする?
3つの工夫
上のような事前の段階を踏むことで、子供たちがグループ分けをクラスの問題として捉えることができるようになれば、教師がグループ分けを決めることになっても、子どもたち主体で教師が見守る決め方になっても、グループ分けは円滑に行われるようになります。
そしてさらに、学級や学年の実態に応じて、次のような工夫も考えられます。
1.クラスを超えた、学年でのグループ分けを検討
学級に1人でいることを好むような子どもがいる場合、違うクラスに仲良しの友達がいることも考えられます。クラス替えの後などに多い事例ではないかと思います。こういったとき、学年全体でのグループ分けを検討するのも、子どもたちの心の安定を図る上で有効だと考えられます。
2.初めに男女で2人組をつくる
まず男女で2人組をつくる方法だと、1人になってしまう子どもを出さなくて済みます。男女2人組になったら、ペア同士で4人組(男子2人・女子2人)になります。男女別でグループ分けをしてから男子グループと女子グループを合わせる方法だと揉めることがありますが、このやり方だと回避できます。
3.定員や男女比を決めない
人数や男女比は決めずに、完全に自由にグループ分けをすることも考えられます。男女を分けずにクラス全員で「とりあえず、一緒のグループになりたい人と組んでみて」と言うのです。グループの構成人数がバラバラだと、指導の上で何かと面倒なことがあるかもしれませんが、子どもの自主性を重んじつつ、出来上がったグループにバランスの悪さやいびつさがあれば、そこから集団活動について考えさせ、学ばせていくきっかけになると思います。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ