主体的・対話的で深い学びにつなげる!理科のICT活用アイディア
電子黒板やプロジェクター、タブレットなどを活用して新学習指導要領に沿った中学年の授業を分かりやすく、楽しくつくるための具体的な方法をご紹介します。理科の授業では、見えない&繰り返し観察が難しい事象を動画撮影で可視化。より深い考察を促します。
監修/神奈川県公立小学校教諭・後藤大二郎
目次
影が動く様子を 「タイムラプス」で撮影
3年生の「影と太陽の動き」の単元では、太陽とともにその反対側にできる影の動きを観察します。影は一日かけてゆっくり動くため、観察するには動画の活用が有効。
しかし、通常のビデオ撮影だと容量も重くなり、再生時間も長くなるので「タイムラプス撮影」がおすすめです。
「タイムラプス」は、「低速度撮影」「微速度撮影」と呼ばれ、数秒(ときには数分)に1コマずつ撮影したものをつなげて再生することで、コマ送り動画のように見える撮影方法。長時間撮影されたものを短い動画にして再生できます。植物の発芽の様子や雲の動きの観察などにも活用できます。
上の画像は、教室から影の動きを観察した動画の一コマです。最近のスマホには、「タイムラプス」が標準搭載されているものも多いです。iPadなどのタブレット端末やスマホのカメラで「タイムラプス」を選択し、撮影ボタンを押すだけでOK。手振れしないよう、ミニ三脚を使うとよいでしょう。
昆虫の画像に直接ペンで体のつくりをかき込んで共有
「昆虫の体のつくりとはたらき」では、さまざまな虫の体のつくりを比較して、昆虫の体が三つの部分でできていることや、胸の部分に脚が6本付いていることなどを学習します。
自分たちが育てたモンシロチョウは、全員が虫かごで観察することができますが、子供が捕まえた昆虫では数が足りないので、テレビに映してみんなで観察することがあります。
iPhoneやiPadには画像データに直接書き込みをする「マークアップ」機能が搭載されています。虫の画像は、体の部位ごとに色分けして写真にかき込むと、体のつくりをより分かりやすく示すことができます。子供と一緒に確認しながらかき込むのもよいでしょう。
上の画像はトンボの体のつくりを描画ツール「マークアップ」を使って色分けしたもの。写真に限らず、子供が描いたイメージ図やグラフを撮影し、マークやテキストをかき込んで共有することもできるので、どんな場面でも使えて便利です。
動画で「モノのあたたまり方」を撮影し、クラスみんなで結果を共有する
水のあたたまり方を調べるときに、絵の具やお茶の葉などを使って、水が動きながらあたたまる様子を確かめたり、サーモインクで水が上のほうからあたたまることを確かめたりします。
グループ実験をすることが多いと思いますが、班によって結果の解釈が違っていると考察がうまくいかないことがあります。
そこで、実験結果を動画で撮影すると、繰り返し確認することができ、実験中に見逃していた動きなどに気付くこともできます。
撮影した動画は、グループで見返すことはもちろん、テレビに映して学級全体で確認することで、グループごとに調べるものや調べ方が違っていても、同じ結果になることを確認できます。そうすることで、より確かな結果の解釈と考察につながるのです。
上の画像は、対流の様子をサーモインクを使った人工イクラで実験し動画で撮影したもの。
※人工イクラは、アルギン酸ナトリウム水溶液に示温インクを混ぜ、塩化カルシウムに滴下して作成。イクラが上昇するときは温度が高く、下降するときは低くなっていることが観察できる。水には砂糖を溶かして比重を調整。
AI図鑑アプリ「リンネレンズ」で生き物を識別&観察
4年生は年間を通じて生き物の様子を観察します。校庭に出て、さまざまな生き物を探し、その様子を記録するのですが、子供たちが偶然発見した生き物の名前が分からず困ることがあります。
そのときに使うのが、AI図鑑アプリの「リンネレンズ」(LINNÉ LENS)。カメラをかざすだけで生き物を認識し、名前と基本情報を教えてくれます。生き物の動きが速かったり、完全に見えていなかったりすると認識することが難しいので、昆虫など小さいものの場合は、虫かごなどに捕まえて撮影することをおすすめします。
※LINNÉ LENSは「かざすAI図鑑」をコンセプトにしたスマートフォンアプリです。スマホを生き物にかざすだけで瞬時に識別。ダウンロード無料。1日10種まで無料。開発運営:Linne株式会社
取材・文/出浦文絵
『教育技術 小三小四』2019年11月号より