子供に厳しく接するとは?【伸びる教師 伸びない教師 第35回】
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豊富な経験によって培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載。今回のテーマは、「子供に厳しく接するとは?」です。厳しさの裏には何があるのか、子供はそのことをよく見抜いているというお話です。
執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)
栃木県公立小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を務める。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。
目次
うわべだけをまねた厳しい指導
ある講演会で聞いた話です。
講師の先生は、ある若い教師から「自分は、これから厳しい教師になるか優しい教師になるか悩んでいます」と相談を受けたことがあったそうです。
講師の先生は、「どちらかということではなく、教師にはその両方が必要です」と、その若い教師に伝えたとのことでした。
この話を聞いて、自分が教師になった頃を思い出しました。初めて高学年の担任となり張り切っていた時期でした。
しかし、夏休みを過ぎたあたりから、学級に小さな事件が起こりはじめました。
掃除のときに遊んでいる、宿題忘れが増える、他の教師が担当している音楽の時間にふざけるなど、いくつかの事件が重なりました。
今でこそ、「子供だからそんなこともするよね」と受け止められますが、その当時は学級最大の危機だと感じ、自分の指導方法に何か問題があったのではないかと真剣に悩みました。また、他の教師に「若いから指導力がない」と思われているのではないかと疑心暗鬼にもなりました。
そんな時、「自分は子供たちに甘く見られているのではないか」という思いが頭をよぎりました。
当時、先輩のベテラン教師が子供たちを厳しく指導している姿をよく目にしました。その教師の学級では大きな問題が起こりませんでした。
ですから、私は自分が若く威厳がないから、子供たちは好き勝手なことをするのだと思い込んでしまいました。
それからと言うもの、先輩の教師の真似をして子供たちに対して厳しい態度をとる自分がいました。子供たちが悪いことをしたときだけでなく、普段も厳しい態度で接しました。今考えると厳しいと言うより冷たい態度だったと思います。
また、子供たちに板書の字の間違いを指摘されたときには反抗されたと勘違いし、「ちょっと間違えただけなのにいちいちそんなことを指摘するんじゃない」と、理不尽な態度をとることもありました。
こうして自分が厳しく指導することで、学級の問題は少なくなるだろうと思っていました。
しかし、それは大きな間違いでした。
厳しくすればするほど子供たちの気持ちは私から離れていき、その後も小さな事件は続きました。
