いじめ 【わかる!教育ニュース#33】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第33回のテーマは「いじめ」です。

こども家庭庁が「いじめ調査アドバイザー」制度を設ける

いじめの定義を示し、国や自治体、学校などがするべきことを定めた「いじめ防止対策推進法」ができて、10年経ちました。自殺の恐れや長期欠席など被害が深刻な「重大事態」には、学校設置者や学校などが、事実関係を調べる組織を設けることも義務付けています。と言っても、スムーズに対応できているものでしょうか。

こども家庭庁が「いじめ調査アドバイザー」という制度を設け、大学教員、弁護士、日本医師会や日本社会福祉士会の関係者など8人に委嘱しました。役割は、自治体や学校が重大事態の調査組織を立ち上げる際、委員の人選や中立で公平な調査の方法を第三者の立場で助言すること。アドバイザーが直接、調査に携わるわけではありません。

調査組織をつくろうにも、どう進めればよいのか悩む自治体もあるでしょう。一方で、組織づくりに手間取って調査にとりかかるのが遅れると、事実関係を確認するのがむずかしくなり、被害者の苦しみも増します。アドバイザー制度は、余分な時間をかけずに組織を立ち上げ、偏りのない調査ができるようにするのが狙いです。

小倉将信こども政策担当相(当時)も委嘱に当たって「調査の経験がなくて何をしたらよいか分からない、委員決定に時間がかかる、被害者側の納得が得られないといった課題が指摘されている」と問題意識を語り、アドバイザーが関わることで、調査につながる意義を説明しました。

こども家庭庁が担うのは、学校の外からできる対策

4月に発足したこども家庭庁は、子供を巡る政策や取組を社会の中心に据える「こどもまんなか社会」を唱えています。これまで、主に文科省が取り組んできたいじめ対策に関わるのも、いじめが、被害を受けた子供の人権や命を脅かすものだからです。

文科省の対策は教育委員会や学校向けが中心ですが、こども家庭庁が担うのは、学校の外からできる対策。アドバイザー制度も、その一環です。両省庁が連携して、学校の内と外からいじめ防止に臨む構図です。

文科省も7月、重大事態が疑われる場合の基本的な対応をまとめたチェックリストを作り、各教育委員会などに配ったほか、省のホームページでも公開しました。「発生から調査開始」「調査の実施」「結果の説明・報告」「結果の公表検討」の4段階に分けて対応するべきことを挙げ、いざというときに手順を踏みながら調査を進められる形にしています。

文科省によると、2021年度の重大事態は過去最も多い705件。小学校だけで314件(44.5%)を占めます。いじめの把握件数も61万5351件に上り、今の調査になった8年前の3.3倍。見逃さない意識の表われでもありますが、いじめがはびこっているのは事実です。

いじめが解消されても、いじめられた記憶にさいなまれ続ける子もいます。その痛みを思えば、事実をしっかり調べる組織を、できるだけ早く設けることが肝心です。

【わかる! 教育ニュース】次回は、10月15日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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