対応が難しい児童に出会ったときは…
教室で対応が難しい児童が問題を起こしたとき、どんなアクションをしていますか? 当たり前のことですが、まず、自力で何とかしようとしますよね。それで一件落着となればよいのですが、解決したという確信がもてなかったとき…隣席の同僚に相談したり、あるいは事例を報告したりすることで、何となく解決した気になってしまう。そんなこと、ありませんか?
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
1 変わる学校観・授業観の中で
現代の学校をとりまく環境は、大きく変わりつつあります。児童全員を一括して指導する従来型の概念から、児童個々人の個性を尊重する概念へと転換が行われてきており、社会全般の考え方もそのような方向に変わってきています。心理学や精神医学の進歩は急速で、これまでは「落ち着きがない」とか「乱暴な傾向がある」といった問題行動について、より具体的な分析と対策ができるケースが増えてきました。最新の知見を知り、例えば医教連携のような具体的な手段を講じる必要が増してきたと言えます。
また、SNSなど、個人が情報を入手したり発信したりすることの自由度が格段に高まっていることも見逃せません。個人尊重の社会風潮を背景に、保護者がわが子のために声を上げやすくなっており、何か問題が起こったときに対応を誤ると、こじれやすくなっています。実際、考え方の違いやボタンの掛け違いが修復できず、空振りしてばかりの保護者対応も多くなってきています。
2 SOSは早めに広く
こうした状況から、現代の学校では、児童の問題に対して、教員一人で問題を解決まで結びつけたり、状況を改善させたりするということが難しくなってきています。そこで、最低限以下の2つのことは、やっていくべきです。
① 問題を共有化する
経験年数に関わらず、遠慮することなく悩みがあったら即座に、周囲に相談することが大切です。校内の担当者、特別支援コーディネーター、教育相談担当者などへ報告しアドバイスを受けることもいいことです。また同時に管理職にも報告し、学校全体の課題として共有化していきたいです。こうした環境がない、という皆さんは、ぜひ勇気をもってファーストペンギンになってください。問題の共有化が進み環境が整えば、学校というリソースをフル活用することができるようになってきます。
② 専門家からの意見を聴く
自校担当のスクールカウンセラー、教育委員会所属の特別支援教育の専門家、児童の指導に強い一般的なカウンセラー、医療につながっている場合は小児精神科のドクター、こういった方などに教室での当該児童の行動などを伝えながら、最新の知見を示してもらい意見を聴くということも必要です。
この2つを計画的に進め実施することで、一気に改善することがあります。SOSは早めに、そして広く発信していきたいです。
3 自分自身の対応力を磨く
また、先述した通り、心理学や精神医学は日進月歩です。児童の「個性」を把握し、見極め、適切な対処へつなげていくために最新の知見を学ぶことは極めて重要なことです。
現場や身近な事例から、経験として積み上げていく方法も素晴らしいのですが、それにはやはり限界があると言わざるを得ません。また、先生たちには児童個々人への対応以外にも、やるべき仕事が山積しています。
そこで、野口悠紀雄氏が提唱する『ヘリコプター勉強法』を取り入れてみてはいかがでしょうか?
麓から地道に山道を登るのではなく、ヘリコプターで一気に頂上を目指し、そこから周りの世界を見渡すこと…つまり最新の研究の成果を得て、自分の指導に生かすわけです。
① 民間研究団体の研修やオンラインセミナーを受講する
重要なポイントを指導者や講師より効率的に学ぶことができます。独学で基礎、応用、演習などを時間をかけて学んでいくより効果的です。すぐ教室実践に活用することができます。
② 大学や研究機関の研究者の論文にアクセスする
最近は極めて簡単に最新の知見の一端にふれることができます。まず、キーワードで検索していきます。生成AIなどを利用することもいいですね。もちろん、課題に関する答えを用意してくれていそうな著者の書籍などを読み込むこともいいでしょう。
4 自分の指導をメタ認知しよう
また、自分をメタ認知することも大切です。自分の児童への接し方、授業のし方、困った児童への対応法、保護者さんとの協力関係構築法など、第三者に様々な観点から見てもらい、客観的な意見をもらうことで、自分自身では気付かなかった問題点を見いだすことが必要です。
経験年数が多いから、良い先生だというわけでも、うまく対応できるというわけでもありません。
むしろ、助言や批判を素直に受け入れて、自分を改善していける人こそ、経験年数によらず優れたせんせいと言えます。
◆
現代の学校は課題が山積みで学ぶことが多いです。以前のようにゆったりと経験しながら学んでいくということでは対応できないです。どんどんヘリコプター勉強をしていくべきです。専門家に相対して直接教えを乞うのが一番いいですが、セミナーなど間接的でも、確実な学びを得ることができます。
また、セミナーを受講する際、講師の著作物などは事前に読んでおくようにしたいです。講師が主張する実践哲学や問題意識をとらえておくと、セミナーの内容もすっと入ってきます。
さて、最後にもう一度言います! 何か困ったことが起きたら、まずはSOSを出すことです。話すことで自分の学級経営のリフレクションが自然とできます。そして、同僚の経験知やもっている知識でいい方向にアドバイスがもらえることが多いです。
正しく頼る ことが大切です!
自分に合ったスタイルで自分の悩みやSOS事項の解決にあたってみてください!
【参考図書】
超「超」勉強法――潜在力を引き出すプリンキピア 野口悠紀雄/プレジデント社
編集部が主催する、教師・保育者向け研修講座も、ぜひチェックしてみてくださいね!
https://kyoiku.sho.jp/senseiseminar/
イラスト/したらみ フジコ
こんな問題を抱えているよ、こんな悩みがあるよ、と言う方のメッセージをお待ちしています!
その他にも、マスターヨーダに是非聞いてみたい質問やアドバイス、応援メッセージも大募集しています! マスターはすべての書き込みに目を通してますよ!
マスターヨーダの喫茶室は土曜日更新です。
山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。